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聖なる夜に、ネオンの星を… |
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P | 「では、これからもよろしくお願いします」 |
担当 | 「おう、外寒いし気いつけて帰れよ!」 |
P | 「はい、お気遣いありがとうございます」 |
担当 | 「事務所のみんなにもよろしくな、良いお年を!」 |
P | 「こちらこそ、良いお年をお迎えください」 |
俺はとあるレコード会社の玄関で、担当者に別れの挨拶を受けた。 |
P | 「さて、帰るにはまだ早すぎるか」 |
時は年の瀬、来週はいわゆる大晦日というクリスマスイブである。 |
P | 「少しだけ、歩いてみるかな」 |
こんな日は街を歩いて、浮世に身を任せるのも悪くはないだろう。 |
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P | 「寒いな…」 |
カップルが幸せそうに寄り添い、家族が楽しそうな笑顔を見せている街を俺は一人歩いていた。 |
どこに行くわけでもない。ただ一人の家には帰りたくなかった、それだけである。 |
P | 「そろそろ…か」 |
ふと通りの大時計を見る、その時計の針は午後の7時を迎えたことを示していた。 |
街のネオンの光は、独り身のこんな俺をも貫いていく。 |
P | 「いや、もう今の俺には関係無いんだよな…」 |
一人の女の子をトップアイドルとして育て上げた俺は今、1ヶ月ほどを充電期間としてもらっている。 |
充電期間とは言え、関係各所に挨拶に回ったり新人の発掘にと色々と忙しい。忙しいこと自体は苦ではない、その間はそのことを忘れていられるから。 |
P | 「元気にやっていてくれれば…俺の手が無くても大丈夫だよな」 |
その子はもう俺の手を離れ…いや、俺はあえて手を離したのだ。 |
P | 「春香…」 |
口をついて出てしまったその子の名前。最近まで俺の一番近くに居た女の子。 |
頭の中にはいつも、一緒に居た頃のことが浮かんでは消えている。 |
P | 「やっぱり少し…寂しいな」 |
つい出てしまった、これがやはり本音なのだろう。 |
P | 「いいや、帰ろう」 |
そうして進路を変えた俺の目の先には大型ビジョンがあった。 |
そこには、笑顔の春香が出ているCMが写っている。 |
P | 「いい笑顔だな、あの頃と表情は変わってない…」 |
しばらく時が過ぎるのも忘れて、そのCMを見つめていた。 |
P | 「でも、本当に成長したな…春香」 |
俺の手を離れた後、他の人に春香のプロデュースを任せている。 |
春香はそれでもトップアイドルとして成長し続けている。それに引き替え俺は… |
P | 「何やってるんだろうな…俺」 |
不意に溢れ出した涙。止めようとしても、それは止まることは無かった。 |
P | 「春香は成長しているというのに、俺ってヤツは…」 |
『俺は…俺は成長できているのか?』 |
心に居るもう一人の俺に問い質す。答えは分かっていたはずなのに。 |
P | 「そうだよな…今の俺に春香は似合わないな」 |
そして俺は心にもう一つ問い質した。 |
『俺はあれから、成長する努力をしていたか?』 |
こんな想いは今まで考えたことは無かった。いや、考えることに目を背けていたのだろう。 |
でも…何かが弾け飛んだ気がした。 |
P | 「何だよ…こんな簡単なことに、俺は気付けてなかったのか…」 |
今の今まで心の中に深く差し込まれていた楔が崩れ去った気がした。 |
P | 「春香が自分を高めようと頑張ってるのに、俺は何をためらってるんだよ」 |
自嘲的に笑ってみせた。だけど、ようやく確かな何かを見つけられたんだと思う。 |
P | 「先に進むのを怖がってたらダメだよな…ありがとう春香。やるよ、俺…やってみせるさ!」 |
俺が俺であるために、もう決意は揺るがない。俺は空に向かって、こう呟いた… |
P | 「春香、あの時の心に変わりが無いなら、もう少しだけ俺を待っていてくれないか」 |
そして… |
P | 「春香にも聖夜の祝福が訪れますように…メリークリスマス」 |
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翌日、俺は765プロの社長室に来ていた。 |
社長 | 「ほう…またプロデュース業を再開するのだね」 |
P | 「はい。ぜひやらせてもらえませんでしょうか」 |
社長 | 「もちろんだ。我が社でトップアイドルを育てた君を、誰が拒否すると思っているかね」 |
P | 「そこまで言われると逆に恥ずかしいのですが…」 |
社長 | 「まあいい。ところでプロデュースする子は決めたのかね?」 |
P | 「それなんですが…」 |
俺の新たなプロデューサーとしての仕事が今、始まろうとしている… |