とある土曜日…事務所にはプロデューサーも小鳥もいなかった。 |
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それは1週前の週の中頃、こんなやりとりから始まった… |
小鳥 | 「えっ…え?!ええーっ!?」 |
P | 「ちょ、ちょっと小鳥さん、そんな大声出さないでください」 |
小鳥 | 「で、でもですよ。私、一介の事務員でしかない人なんですよ?」 |
P | 「それがですね…番組スポンサーの企業の社長がとある地方の方でして…」 |
小鳥 | 「………」 |
P | 「その方の住んでいる地方だけ行かないとなってから、何とかしないとスポンサー降りるという話で…」 |
小鳥 | 「そ、それならどうして…行く場所決める前にちゃんと分けなかったんですか?」 |
P | 「千早もやよいもスケジュールの都合がどうしても付かなかったんですって」 |
小鳥 | 「その二人はその地方に行く可能性があったと」 |
P | 「そうですね、色的にはその二人だけですから」 |
小鳥 | 「むう…でも私はアイドルじゃないんですからね」 |
P | 「それは重々承知してますよ…」 |
小鳥 | 「この後の3人の調整でも無理なんですか?」 |
P | 「響も美希も雪歩も無理なんですよ」 |
小鳥 | 「真ちゃんも無理しましたし、雪歩ちゃんもそうなんですよね。サブカラーまで手を広げてやっとでしたから」 |
P | 「それに今月だけ番組やらない事にテレビ局側が難色を示してまして」 |
小鳥 | 「月1回以上という約束でしたっけ?」 |
P | 「いえ、違うんですけど…率が良いということで、9月もどうしてもという話で」 |
小鳥 | 「なるほど…こうどうしてうちの事務所は9月だけ誕生日の子がいないんでしょうね?」 |
P | 「確かに…5月は亜美と真美含めて3人もいるのに不思議ですよ」 |
小鳥 | 「本当に5月から1人分けてほしいくらいです」 |
P | 「それで…どうです?」 |
小鳥 | 「その代わり、向こうではちゃんと…」 |
P | 「分かってますよ。それなりのことはちゃんとしますから」 |
小鳥 | 「それなら…仕方ないですね。私も表舞台に出ていないというわけではありませんから」 |
P | 「今までいろいろスミマセン…」 |
小鳥 | 「プロデューサーさんに頼まれて色々なところに出させられましたし…」 |
P | 「それは何と言っていいか…」 |
小鳥 | 「雑誌とはいえ水着姿まで出しちゃったこともありますよね」 |
P | 「う…」 |
小鳥 | 「もう…そこまでさせといて、いまさら何です?これくらいのこと」 |
P | 「でもさっきは…」 |
小鳥 | 「さっきは驚いていただけ。それで私はどこに行くことになってるの?」 |
P | 「地方だけは決まっているので、あとは選んでください。どの県でも910プロと844プロにはアイドルを1人は出してもらえる手筈はできてるので」 |
小鳥 | 「移動費はどうなってるの?」 |
P | 「あ、それは制作側持ちなのでどこでも構わないとのことです」 |
小鳥 | 「それなら…ここにしましょ。温泉も捨てがたかったんだけど、たまには都会の喧騒はお休みしてみたいわ」 |
P | 「そうなると…910プロダクションの方に電話してもらえますか?」 |
小鳥 | 「910プロダクションですね?分かりました」 |
P | 「俺は844プロダクションの方に連絡入れますので、お願いします」 |
小鳥 | 「あの、時間とかは…」 |
P | 「えっと…そこの資料は…あ、これです。これで確認してもらえますか?」 |
小鳥 | 「はい…」 |
PiPiPi♪… |
小鳥は910プロへと電話をかけ始めた。 |
Trrrrrr…Trrrrrr… |
小鳥 | 「もしもし、765プロダクション事務の音無です……はい……では来週の土曜日に羽田空港第1ターミナル前に9時30分でよろしくお願いします」 |
カチャンッ |
小鳥は受話器を戻した。 |
P | 「次は…っと、テレビ局の方に連絡入れて打ち合わせしないと…」 |
プロデューサーは忙しく各所へと電話を入れ始めた… |
……… |
出発当日の羽田空港第1ターミナル… |
小鳥 | 「今井さんですね、私は765プロ事務の音無です」 |
加奈 | 「910プロダクションの今井加奈ですっ」 |
そこには黒髪をツインテールにした女の子が一人、小鳥の到着を待っていた。 |
加奈 | 「あれ…何か…」 |
小鳥 | 「どうしたのかしら?今井さん」 |
加奈 | 「江上さんとか涼宮さんとかに、緑の髪の人と一緒の人と一緒に行くって聞いてたんです」 |
小鳥 | 「そういうことね、ごめんなさい」 |
加奈 | 「えっ、ごめんなさいって…」 |
小鳥 | 「あ…一緒に行く人がいないとかそういうのじゃなくて、今回は私自身が一緒に行く人なの」 |
加奈 | 「ええーっ!?」 |
小鳥 | 「えっと…何も聞かされなかったの?」 |
加奈 | 「内容は聞いていたんですけど、誰と行くかは集合場所に着いてからのお楽しみで、毎回みんな聞かされていないって言ってました」 |
小鳥 | 「そうだったのね…」 |
加奈 | 「でも分かりましたっ、今日からよろしくお願いしますっ!」 |
小鳥 | 「こちらこそよろしくお願いします、今井さん…あ、加奈さんの方がいいかしら?」 |
加奈 | 「はいっ♪音無さんの呼び易い呼び方でお願いします」 |
小鳥 | 「それなら…加奈ちゃんでもいいかしら?」 |
加奈 | 「それでも大丈夫です。あの音無さんは音無さんでいいですか?」 |
小鳥 | 「そうね…呼ばれ慣れてる方がいいかしら…小鳥とどっちにする?加奈ちゃん」 |
加奈 | 「小鳥さん…音無さん…それなら小鳥さんにします♪」 |
小鳥 | 「よしっ、それじゃあ手続き行きましょ加奈ちゃん」 |
加奈 | 「はい、小鳥さん」 |
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飛行機の中、二人は隣同士で座っていた… |
加奈 | 「こんなシートで移動なんて夢みたいです」 |
小鳥 | 「アイドルのためにいい席取ってもらうようにお願いして替えてもらったの」 |
加奈 | 「そんな…私なんかのために…」 |
小鳥 | 「加奈ちゃん、こういう時なんだから、ちょっとわがまま言ってみるのもアイドルの特権よ」 |
加奈 | 「特権ですか?」 |
小鳥 | 「ええ。あんまり大それたことすると変な目で見られちゃうけど、少しくらいなら…ね」 |
加奈 | 「なるほどなるほど…」 |
加奈はメモを取り出して書き込み始めた。 |
小鳥 | 「あら?それは…」 |
加奈 | 「あ、これは…今までプロデューサーとか他のアイドルの皆さんに教えてもらったこととかをメモしてあって…」 |
小鳥 | 「そうやって勉強していくのは大事なことね。でも…」 |
加奈 | 「でも…?」 |
小鳥 | 「メモだけじゃなくてもっと実際に見て感じて学ぶこと、これから増えると思うわ」 |
加奈 | 「………」 |
小鳥 | 「他の人から学んで、その中で自分に合ったものをちゃんと見つけるのが大事なの」 |
加奈 | 「まだそこまで自信がないかもしれないです」 |
小鳥 | 「さっきはわがままって言っちゃったけど、自分のやって欲しいことはちゃんと言うのは大事になるわよ」 |
加奈 | 「でもそれをどうやって伝えたらいいですか?」 |
小鳥 | 「加奈ちゃんにはちゃんと武器があるじゃない」 |
加奈 | 「えっ…?」 |
小鳥 | 「その妹っぽい可愛さ、それでお願いしたらきっと大丈夫よ」 |
加奈 | 「うぅ…そう言われるとちょっと恥ずかしいですっ」 |
小鳥 | 「まだきっと自分の武器になる物は加奈ちゃんの中に眠っているわ。妹っぽいところだけじゃなくて、他の面も見付けられたらいいわね」 |
加奈 | 「はいっ♪」 |
その加奈の満面の笑顔に、思わず小鳥は倒れそうになったとかならないとか… |
HAPPY BIRTHDAY!! Kotori OTONASHI.