千早 | 「カバーアルバムですか?」 |
ここはある日の事務所。千早はプロデューサーの言葉にそう答えた。 |
P | 「ああ。コンピレーションアルバムだけどな」 |
千早 | 「と言うことは色々な方が歌うということですね」 |
P | 「そういうことだな。そのうち3曲にうちと876プロの子のデュエットを使いたいということだ」 |
千早 | 「私でいいんですか?」 |
P | 「ああ。あと他には律子と雪歩だな」 |
千早 | 「それで私は誰と…」 |
P | 「曲の配分からして日高さんだな。分かるか?あの元気な子」 |
千早 | 「日高さんですね?はい…」 |
P | 「どうだ?やれそうか?」 |
千早 | 「たぶん大丈夫かと。あの子ってどことなく誰かに似てるんで」 |
P | 「似てる?」 |
千早 | 「いえ、日高さんって春香に似てるって思いません?」 |
P | 「あーそうか、分かる気がする。春香が876を紹介したくらいだからな」 |
千早 | 「だから大丈夫ではないかと」 |
P | 「よし、じゃあよろしくな千早」 |
千早 | 「それで私が歌う曲は?」 |
P | 「ああ、これが歌詞と楽譜だ」 |
プロデューサーは千早へと書類を渡した。 |
千早 | 「Sweet…blue…days、聞いたことはありませんが」 |
P | 「ああ、今から流すから」 |
Pi♪ |
プロデューサーはプレイヤーのスイッチを入れた。 |
♪〜 |
千早 | 「プロデューサー、一つ聞きたいのですがいいですか?」 |
P | 「何だ?」 |
千早 | 「今回のアルバムって、どんな中身なのですか?」 |
P | 「友情をテーマにしたアニメソングだぞ」 |
千早 | 「なるほど…だから聞いたことが無かったのですね」 |
P | 「どうした?やっぱりやめるか?千早ってそういうの好きそうじゃないしさ」 |
千早 | 「いえ…せっかく戴いたので務めさせてもらいます」 |
P | 「分かった。とりあえずこのデータは持ち帰っていいから。後で形式とか媒体とか言ってくれ」 |
千早 | 「分かりました、ありがとうございます」 |
……… |
そして収録前日… |
愛 | 「おはようございまーす!」 |
千早 | 「おはよう、日高さん」 |
愛 | 「おはようございます、千早さん」 |
今日は765プロの練習場で876プロの三人との歌合わせをすることになった。 |
愛 | 「今日はよろしくお願いしますっ」 |
千早 | 「フフフ、やっぱり似てるわ」 |
愛 | 「えっ?」 |
千早 | 「そういう前に勢いよく進もうとしている感じ、春香にそっくりね」 |
愛 | 「たぶんそうかもです。この世界に入れたのも春香さんのおかげですから」 |
千早 | 「でも今日はそれは関係無いわね」 |
愛 | 「エヘヘ、そうですね」 |
千早 | 「じゃあさっそくやりましょう。私たちはあの防音室借りているから」 |
愛 | 「はいっ」 |
|
千早 | 「大丈夫ね。きちんと音も取れているし」 |
愛 | 「千早さんにそう言われると嬉しいです」 |
千早 | 「でもこの短い期間で大丈夫だったの?」 |
愛 | 「はいっ、そこはママが猛特訓してくれましたから」 |
千早 | 「貴方のママって…日高舞さんよね?」 |
愛 | 「そうです。やっぱり知ってるんですね」 |
千早 | 「知っているも何も有名な方じゃないかしら」 |
愛 | 「そう…ですよねやっぱり」 |
千早 | 「え?どうしたの?日高さん」 |
愛 | 「あんまりママのこと言われたくないんです」 |
千早 | 「どうして?」 |
愛 | 「あたし、ママの力でこの世界に入ったわけじゃないですからっ」 |
千早 | 「分かったわ、そういうことね」 |
愛 | 「だから今はまだ少し威光に頼っているかもしれないですけど、将来は自分の力だけでやっていきたいんです」 |
千早 | 「そうね。でもあのお母さんの娘なら、大丈夫じゃないかしら」 |
愛 | 「そうですか?」 |
千早 | 「才能は少なくとも受け継がれているはずよ」 |
愛 | 「あたしもあんな風になれますか?」 |
千早 | 「それはこれから磨くあなた自身の努力かしら」 |
愛 | 「分かりました。やってみせます!」 |
千早 | 「じゃあもう少しやりましょう」 |
愛 | 「はいっ。あのっ、さっき言ったのってここですよね?」 |
千早 | 「そうね。その辺りでもう少し声が通るようにね」 |
愛 | 「はーい」 |
……… |
スチャッ |
二人が休憩しているところに… |
P | 「二人ともおつかれ。どうだ?明日は大丈夫そうか?」 |
プロデューサーがドアを開けて入ってきた。 |
千早 | 「はい。明日の収録は大丈夫そうです」 |
愛 | 「あたしも千早さんのおかげでさらに上達しましたっ」 |
P | 「それなら良かった。千早も指導ありがとうな」 |
千早 | 「そんな…私なんか力になれたなんて思っていませんが…」 |
愛 | 「千早さんのおかげでもっとこの曲が分かった気がします」 |
P | 「まったく…千早は自分をそんな謙遜しなくていいぞ」 |
ぽんぽん |
プロデューサーは千早の頭を優しく撫でた。 |
千早 | 「プロデューサー…」 |
P | 「ありがとな、千早」 |
千早 | 「…はい…」 |
愛 | 「あ、あのっ…」 |
P | 「ああゴメンな、そうだった。日高さん、岡本さんがちょっと来てくれって」 |
愛 | 「まなみさんですか?分かりました。千早さん、ちょっと行ってきますね」 |
千早 | 「どうぞ、行ってらっしゃい日高さん」 |
カチャッ |
愛はまなみの許へと向かっていった。 |
P | 「千早ももう少し積極的になれるようにな」 |
千早 | 「フフフ、プロデューサーの前でなら…できるかもしれません」 |
P | 「…しょうがないアイドルだな」 |
戻ってきた愛が見たのは、優しそうな顔をした千早の姿であったという… |