とある日の事務所でのこと… |
P | 「ど、どうしたんだ?春香、そんな思いつめた顔して」 |
春香 | 「プロデューサーさん、私どうしたらいいのか分からないんです」 |
P | 「…えっ?何か大変なことでもあったのか?」 |
春香 | 「違うんです、どうやったらみんなみたいに個性が出るのか分からなくって」 |
P | 「でもなあ…それは一朝一夕で何とかなるわけでもないしさ」 |
春香 | 「でも、普通普通って言われるのが嫌なんです」 |
P | 「それで衝動に駆られて俺のところに来たってことか?」 |
春香 | 「こんなこと相談できるのはプロデューサーさんくらいしか居ないじゃないですか」 |
P | 「それもそうか、まあそっちの椅子に座って。ゆっくり話し合おうか」 |
春香 | 「はい。あ、その前にコーヒーとか淹れてきちゃいますね」 |
P | 「え?俺がやるからいいってば」 |
春香 | 「そんなこ…ふわあっ!」 |
どんがらがっしゃーん |
振り返った瞬間に盛大にこける春香。 |
P | 「だ、大丈夫か?春香」 |
春香 | 「痛た…だ、大丈夫です…ってあっ!プロデューサーさん見ました…ね?」 |
こけたスカートから見える別の布地… |
P | 「見てないって。そんな男の欲求に素直なわけないだろ?」 |
春香 | 「本当ですか?胸を触ってくるプロデューサーさんに信用は…」 |
P | 「そ、それは事故だって…」 |
春香 | 「むー、何だかなあ…」 |
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春香も落ち着きを取り戻して、飲み物で一息ついて… |
P | 「でも、そういうことを考えていたのか」 |
春香 | 「はい。没個性って言われ続けるのも悲しくって…」 |
P | 「みんな強烈な個性を持っているアイドルが揃ってるからなあ…」 |
春香 | 「握手会とかだと、私より千早ちゃんや雪歩ちゃんを目的に来ている人が多いじゃないですか」 |
P | 「そうだよな、二人ともそういうタイプが好きな人がよく来るんだよ」 |
春香 | 「一緒のユニットなのにそれがちょっと心苦しいんです」 |
P | 「そういえばそうだな、グッズの売り上げにもちょっと響いちゃってるし」 |
春香 | 「もうどうしたらいいのか分からなくなっちゃって…」 |
P | 「よし、そこまで言われたら俺も動かざるを得ないな」 |
春香 | 「ありがとうございます、プロデューサーさん」 |
P | 「でも難しいぞ。今までの自分を消すことも考えないとダメだからさ」 |
春香 | 「そ、そんなことまでしなくちゃ…ダメなんですか?」 |
P | 「だってそうだろ?変わるくらいならこれくらいはしなくちゃダメだろ」 |
春香 | 「でも…」 |
P | 「何だ?熱望してたのは春香の方じゃないか」 |
春香 | 「ですけど…私じゃなくなるのも何だか怖くって」 |
P | 「こんなところで怖気づいてるのか?」 |
春香 | 「自分が無くなるっていうのがちょっと…」 |
P | 「無くなるというのは少し違うけどな。生まれ変わるには消えるくらいの信念でいかないと」 |
春香 | 「そうですよね、うーん…」 |
P | 「ま、そこらへんは本当に春香の意思次第だぞ」 |
春香 | 「そうなったら、昔からのファンの人は着いてきてくれないですよね?」 |
P | 「どうだろう?分からないけど…まあ難しいだろうな」 |
春香 | 「そうですよね、こんな私でも良いって言ってくれてる人たちですもんね」 |
P | 「だから変えるってことはこの辺の人たちを切り捨てることに繋がるんだぞ」 |
春香 | 「うう、それはちょっと厳しいかも…」 |
P | 「やっぱりやめるのか?」 |
春香 | 「ちょっと悔しいですけど、やっぱり私は私のままでいいです」 |
P | 「まだまだやる気なんだろ?アイドルは」 |
春香 | 「それはもちろんそうですよ」 |
P | 「それならもう少し長い目で見ても良いんじゃないかと思うぞ」 |
春香 | 「そうですね、行動に移すのはもう少し後でもいいですね」 |
P | 「俺もしっかりサポートしてやるからさ」 |
春香 | 「はい、それまでよろしくお願いします」 |
P | 「よし、それじゃあ…ってそういえば今日は何しに来たんだ?」 |
春香 | 「え?今日ってお仕事入ってませんでしたっけ?」 |
P | 「ちょっと待ってくれ…今確かめるから」 |
ブワンっ |
と、パソコンを起動するプロデューサー。 |
P | 「あれ?あ、もしかして来週のと勘違いしてないか?」 |
春香 | 「…あーっ!曜日だけしか聞いてなかったから…」 |
P | 「だろ?今日はプラハはオフにしてたはずだったしさ」 |
春香 | 「うう、どうして私ってこんなドジなんだろう」 |
P | 「そんなに自分を卑下するなって」 |
春香 | 「でも…」 |
P | 「ほら、ちょっとこっちに来てみな」 |
ぎゅっ |
春香 | 「えっ!?」 |
ぽふっ |
春香 | 「プ、プロデューサーさんっ!?」 |
腕を引っ張られた刹那、慣性の法則通りにプロデューサーの胸に収まる春香。 |
P | 「こういうことができるだろ?こうしてドジなおかげでさ」 |
春香 | 「そう…ですね…」 |
P | 「誰かが居たらこんなことできないぞ」 |
春香 | 「こんなに幸せなこと…私だけしてもらっちゃっていいんですか?」 |
P | 「…何だか大袈裟な言い方だな、でもそう言ってもらえると嬉しいかな」 |
春香 | 「でも、本当にいい匂いで…落ち着いちゃいます」 |
P | 「………」 |
春香 | 「大人の男の人の香りって、こんな感じなんですね」 |
P | 「あんまり良い物じゃないだろ?」 |
春香 | 「そんなことないですよ、少なくとも私は大好きです」 |
P | 「そう言われると照れるな」 |
春香 | 「心音もまるで法則性があるみたいに、規則正しくて気持ち良いです」 |
P | 「でも、春香がこうしてくっ付いてるから、結果的に速くはなってると思うぞ」 |
春香 | 「あ、本当ですね。でもそれも何だか嬉しいかも」 |
P | 「えっ?」 |
春香 | 「だって、私のことを思ってそうなってくれてるんですから」 |
P | 「それもそうだな」 |
春香 | 「私のこと、女性として思ってくれてるんですね」 |
P | 「当然だろ?春香ほど女の子なアイドルは居ないさ」 |
春香 | 「嬉しいです、何だか…」 |
チュッ |
突然上を向いてプロデューサーの唇へと吸い付く春香 |
春香 | 「悩みも全部、吹き飛んじゃいました」 |
P | 「…春香…」 |
プロデューサーは春香を抱きしめ続けながら、今日のことを回想していた… |