Tender Shoulder Tapping(優しい肩たたき)

「なあ、真美」
真美「何?兄ちゃん」
亜美をスタジオへと見送って、控え室へと戻ったプロデューサー。
「ちょっと一つあるんだけど、いいか?」
真美「難しいこと?」
「いや、簡単なことに…なるかな」
真美「んー、それならいいよー」
「…あのさ、ちょっとこの問題を解いてみてくれない?」
真美「えー…んー、しょうがないなー暇だしいいよー」
「本当は亜美に解いてもらわなきゃなんだけど、逃げちゃったんだよ」
真美「これって…いいの?真美が解いても」
「構わないけど…って、もしかして学校での成績とか違うのか?」
真美「うん、ちょっと違うよー」
「そうか…それだとどうしようか…」
真美「でもこれ何のためのやつなの?」
「765プロ全員の学力調査だよ、一応成績とかも見とかないと学生の身分だからな」
真美「それで真美たちは二人で一つなの?」
「ああ、社長からは一部しか貰ってないんだが」
真美「それじゃあどーするのー?」
「しょうがないな、ちょっとコピーさせてもらってくるから待ってて」
真美「分かったー」
 
「準備大丈夫か?」
真美「うん、いつでもいいよー」
「それじゃあ今から30分な、よーいスタート!」
真美「やるぞーっ!」
………
「よし、終わり。真美、おつかれさま」
真美「んーっ!疲れたあ」
「そう言うと思って買っておいて良かったよ、はいおつかれ」
と、買っておいたジュースを渡すプロデューサー。
真美「ありがとー、兄ちゃん」
「どうだった?難しかったか?」
真美「んー、これ本当に6年生用の問題だったの?」
「そうだけど…どうだった?」
真美「真美の得意分野だけだったみたいで、簡単だったかなーって」
「そういうことか。いや、割と幅広く出してあるはずなんだけどな」
真美「あ、でも亜美は苦手な分野かも。たぶんだけど…」
「そうなのか…まあまずやらせてみないことにはな」
真美「そうだね、あ…兄ちゃん」
「ん?」
真美「これでもし成績が悪かったらどうなるの?」
「社長に聞いてみないと分からないけど…芸能活動は難しいかもなー」
真美「えーっ!?」
「学業を疎かにしてまで活動してもらってもな。1・2週は強制的に勉強させられるかも」
真美「んー、やよいっちとか大丈夫かなー?」
「どうだろう…ここで気にしたところでしょうがないけど」
真美「でも、みんなで活動できないのは寂しいもん」
「そうだよな、正直俺も何だか心苦しくなってきたよ」
真美「で、これの結果っていつ出るのー?」
「さあ?俺もよく知らないんだよ。小鳥さんが丸付けするとかってのは聞いてるけど」
真美「ピヨちゃんが丸付けかー、律っちゃんほど厳しくはなさそうだからいいけど」
「あ、でもやよいはもう終わってたな。成績はギリギリだけどセーフだって聞いたから」
真美「むむー、やるなーやよいっち。亜美、大丈夫かなー?」
「…やっぱり心配?」
真美「うん、だって大事なパートナーだもん。真美たちは二人で一つだもん」
「分かってる、俺もそう思ってるから」
真美「そういえば、兄ちゃん。一つ聞いてもいい?」
「ん?何だ?」
真美「どうして真美たちをプロデュースしようと思ったの?」
「んー、どうしてだろう?そういえば憶えてないな」
真美「えー。真美たち、そんな一時の感情で選ばれたのね…ヨヨヨヨヨ」
「そうじゃないって。でも何でだろう?あ、だけど迷って決めたのは事実だな」
真美「そうなんだ、それなら嬉しいな」
「元気な子をちょっとプロデュースしてみたかったのはあったな」
真美「それならやよいっちでも良かったじゃん」
「いや、やよいは前にプロデュースしたしさ。だから今回は避けたんだ」
真美「でもどうして元気な子が良かったの?」
「ちょっと落ち込んでたのがあったな、だからその元気を貰おうかなって。でも…」
真美「でも?」
「逆に二人に元気を吸い取られてる気がして…な」
真美「そうかなー?んー、でも…」
チュッ
プロデューサーの頬に真美の唇が吸い付いた。
「真美…」
真美「これで元気出た?兄ちゃん」
「…ありがと、真美」
真美「ううん、お礼を言わなくちゃいけないのはこっちだよ」
「どうして?」
真美「真美たち普段、兄ちゃんを困らせてばっかりで…こんなアイドル、迷惑じゃないの?」
「そんな、迷惑だなんて思ったことなんか一度もないさ」
真美「でも、こんなにいたずらばっかして、兄ちゃんのこと疲れさせちゃってるのに」
「いいんだよ、それも含めて俺だって楽しんじゃってるんだからさ」
真美「…兄ちゃんがプロデューサーで良かった」
「そうかい?そう言ってもらえると、何だか嬉しいな」
真美「兄ちゃん、そっち向いて座って」
「え?どうして?」
真美「いいからいいから、座って座ってよ」
「あ、うん分かったよ」
とんっとんっとんっとんっとんっとんっ
と、座ったプロデューサーの肩を叩き始めた真美。
真美「兄ちゃんどう?気持ちいい?」
「…ん…気持ちいいよ、うん」
真美「もうちょっと強いほうがいい?」
「いや、いいよ。それならもうちょっと首の方をお願いできる?」
真美「うん、この辺?」
「ああ、そこそこ。うん、気持ちいいな」
真美「本当に…いつもありがと、兄ちゃん」
「どういたしまして、こっちこそありがとな。おっと、そろそろ収録休憩の時間じゃないか」
真美「ん、兄ちゃん行ってらっしゃい。亜美によろしくねー」
「分かった、10分くらいで戻ってくるから」
真美「んー、了解ー。次は真美だっけ?」
「亜美の調子次第かな、とりあえず準備だけはしておいてな」
真美「はーい」
プロデューサーを見送る真美の目は、前とは違う優しさが少し出ているようであったという…
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あとがき
飛神宮子です。
何だか急に真美で書きたくなって書いてしまいました。
このSS自体は別にどちらでも成立はしますが、私は真美の方がこういう気持ちが強いと考えてます。
二人居るからこそのバランスなんじゃないかなって、思っています。
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2008・06・18WED
飛神宮子
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