Symmetrical Wave(対称の波)

ここはある日の事務所…
「おはようございまーす!」
一人のボーイッシュな女の子が事務所に入ってきたようだ。
律子「おはよう、真」
「おはよう、律子。それで用事があるって聞いたんだけどさ」
律子「ああ、そうね。本当は亜美が来てからの方がいいんだけど…先に会議室に行っててもらえる?」
「え?うん…」
………
その会議室には大量の手紙とノートパソコンが2台置いてあった。
「これって何?」
律子「まずは、この前はラジオの代打放送ありがと」
「別にあれはしょうがないじゃん。急だったけど何とかなったからいいよ…それで?」
律子「あの後も結構真と亜美へのお便りが局に来てるのよ」
「もしかしてこれ全部?」
律子「手紙だけはそれで全部ね。FAXは全部データとしてそこのパソコンに入ってるから」
「FAXの方はどれくらい来てるの?」
律子「そうね…全部で1000通ほど保存してあるかしらね」
「うへえ、そんなにいっぱいあるんだ…」
ガチャッ
そこにドアを開ける音とともに…
亜美「おはー!」
律子「おはよう亜美」
「あ、亜美も来たんだ。おはよう」
亜美「律っちゃん、兄ちゃんから亜美だけここに来るようにって言われたんだけど」
律子「ええ、ちょっと見てもらう物があったから」
亜美「何何ー?うわあいっぱいのお手紙だー」
律子「この前はラジオの代打ありがとね、亜美」
亜美「な、何か律っちゃんがそう優しいと少し怪しいよ」
律子「まあそれはそれよ。それで真には説明したけど、それ全部この前のラジオの後に局に来たお手紙なの」
亜美「これって亜美とまこちん宛ってこと?」
律子「そうなの。FAXはそのパソコンに画像データとして入ってるから」
亜美「凄いね、まこちん」
「うん、1回こっきりの代打放送なのに反響が凄いなあ…」
律子「それを読んでもらいたくて二人を呼んだのよ」
「了解。じゃあボクと亜美でゆっくり読んでるから」
律子「後処理は任せるわ。一応そこに箱用意してあるから、その中にやっておいて」
亜美「りょーかいっ!あとは律っちゃん仕事戻っていいよー」
律子「じゃあ良い時間になったらまた来るわね…あ、あとでプロデューサーも来てもらうわね」
「OK、また後でね」
バタンッ
亜美が開けたままのドアからそのまま出て閉めて行った律子。
「さてと、ちゃっちゃとやっちゃおうか亜美」
亜美「そだねー…」
二人は一つ一つ手紙を開封しながら読みふけり始めた。
………
しばらくすると…
ガチャッ
「お、いたな二人とも」
「プロデューサー、おはようございます」
亜美「兄ちゃんおはよ、どったの?」
「いやちょっと色々と話があってな…もう一人部屋に入れていいか?」
「ボクはいいですけど、亜美は?」
亜美「亜美もいいよん」
番組D『二人ともこの前は代打ごくろうさま』
「あ、あの時のディレクターさんですよね。どうしたんですか?」
亜美「こんにちは、ディレクターの兄ちゃん」
番組D『いやー、あの時の放送が結構好評でね』
「そうだったんですか、あ…でも最後はちょっとすみませんでした」
番組D『それはいいってことさ』
亜美「あれはまこちんが悪いんだぞ」
「それはそうだけどさあ、あんなことしなくてもよかったじゃん」
番組D『まあまあ二人ともそれくらいで』
「それでお話って何ですか?」
番組D『ああ、そうだったね。この前代打してもらった枠が交互にやっているのは知っているね?』
亜美「うん。予告もしたからちゃんと覚えてるよ」
番組D『そのもう一人の方がもうすぐ結婚して芸能活動を引退するとのことで、秋の改編からその枠が空くんだよ』
「そうなんですか…え?もしかして…」
亜美「亜美達がその枠をやるってこと?」
番組D『本当は毎週秋月さんと高槻さんに出てもらうことも考えたんだけど、でも本人達は今のままでいいと言っているんでね』
「でもボク達、律子みたいに頭の回転がいいわけでもないし…」
亜美「んー、2週間に1回でもあんまり自信が無いかも…」
「いやいや、まだ話を聞いてくれ」
亜美「どういうこと?兄ちゃん」
番組D『それで、萩原さんが○○FMでやっているラジオは知っているかい?』
「あの毎月最後の土曜日にやっているやつですよね?ボク、聞いてますよ」
番組D『そっちと交渉したら、番組改編で土日も含めた帯枠にするからどこに移動するかを迷っていたと言われて』
亜美「ゆきぴょんも入れちゃうってこと?」
番組D『つまり秋月さん、萩原さん、秋月さんと高槻さん、その次の4週目を菊地さんと亜美さんにどうかなって思ってね』
「それくらいなら…亜美はどう?」
亜美「亜美もいいけど…んー…ちょっち待って!」
亜美は急に部屋を飛び出して行った。
「え?亜美、ど、どこに行くんだ!?」
数分後、亜美はとある人と一緒に戻ってきた。
亜美「ただいまー!」
真美「亜美、それで話って何なのー?」
「おかえり亜美…と、どうしたんだ?真美」
真美「事務室でゲームで遊んでたら、亜美に来てくれって言われて来たんだ。あ、まこちんもいたんだ」
「おはよう、真美。でも何で連れて来たの?亜美」
亜美「ねえ、ディレクターの兄ちゃん」
番組D『ん?どうしたの…亜美さんでいいんだよね?』
双子が急に来たら誰でもこうなるだろう。
亜美「あのね、さっきのゆきぴょん…じゃなかった…萩原さんの枠を真美も一緒にして欲しいなって」
真美「えっ?えっ?」
話が何もつかめていない様子の真美。
「そういうことか…」
亜美「だってまこちんが亜美なら、ゆきぴょんが真美じゃないと何か嫌だもん」
「何かボクも心に引っ掛かってたんだけど、それだよ」
番組D『そうか…双子ならそう思うわけか…』
真美「まこちんが亜美と?それでゆきぴょんが?えっ?えっ?」
さらに混乱している真美。
「ああ、あのな………」
プロデューサーはそんな真美に今までの経緯を説明した。
真美「………そういうことだったんだ、兄ちゃん」
「それで真美はどうだ?」
真美「亜美がやるなら真美もやるっ!そんで、ゆきぴょんには話はついてるの?」
「雪歩にはこれからだな。放送局変更の話も含めてこの後…って向こうに来てるか?真美」
真美「うん。さっき本読みながら、お茶を淹れに給湯室に行ってたよん」
「それなら今ここに呼んでこの話もしちゃおうか。ちょっと呼んでくる」
亜美「行ってらー」
秋の改編で完全に765プロ枠になったその枠は、お便りが毎度山のように来るモンスター枠になったとかいう話である…
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あとがき
どもっ、飛神宮子です。
真と亜美のラジオのSSの続編にあたります。
何だかんだ言っても亜美と真美は双子。片方だけっていうのは、事務所の誰もが心に引っ掛かるんじゃないかなと思います。
特に亜美にとって真美は普段から一緒の対称の存在…なんでしょう、きっと。
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2011・07・28THU
飛神宮子
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