ここは765プロの事務所前… |
愛 | 「えーっと、ここでいいんだよね」 |
一人の少女が訪ねに来たようだ。 |
愛 | 「765プロダクション…あたしの所と名前が似てるんだっけ」 |
ショートヘアーの春香に似た元気そうな女の子である。 |
愛 | 「とりあえず春香さんを待たさないようにです」 |
DING DONG♪ |
愛は765プロの呼び鈴を押した。 |
……… |
ここは事務所の中… |
小鳥 | 「ふんふふ〜ん♪」 |
事務所の中で小鳥は事務作業をしていた。そこに… |
DING DONG♪ |
呼び鈴の鳴る音が事務所に響いた。 |
小鳥 | 「あら?お客さんかしら?」 |
配送の来る時刻でもないので不思議がっているようだ。 |
小鳥 | 「…えーっと、今日は来客予定は無いわよね…」 |
ホワイトボードに書いてある予定を見る小鳥。 |
小鳥 | 「はーい、今開けますねー」 |
事務所のドアへと向かった。 |
ガチャッ |
小鳥 | 「あら?えっと確か…」 |
愛 | 「おはようございます。んーっと…」 |
お互い初対面のためか名前が呼べないようだ。 |
小鳥 | 「あ、思い出したわ。876プロの日高さんね」 |
愛 | 「はい、876プロの日高愛です」 |
小鳥 | 「私は765プロ事務の音無小鳥よ」 |
愛 | 「そ、そうだったんですか。分かりました、音無さんで良いですか?」 |
小鳥 | 「ええ、構わないわ。じゃあ私は愛ちゃんでいいかしらね?」 |
愛 | 「はいっ、それでお願いしますっ」 |
小鳥 | 「それで今日はどうしたの?」 |
愛 | 「あの今日、春香さんにこちらに来るように言われたんですけど…」 |
小鳥 | 「春香ちゃん…あら?今日はオフになっているはずよね」 |
ホワイトボードを見やる小鳥。 |
愛 | 「それなのでちょっと色々と教えて欲しいって言ったら、ここに来るようにって」 |
小鳥 | 「それって何時の予定?」 |
愛 | 「えーっと…11時には来て欲しいって言われたんですけど…」 |
時計は既に10時55分を指している。 |
小鳥 | 「変ねぇ…春香ちゃん、始発の時間ならともかくこの時間ならもう居てもいい頃なのに…」 |
愛 | 「んー、どうしたんでしょうか?」 |
小鳥 | 「本当に今日で合ってるのよね?」 |
愛 | 「はい、えっと…」 |
愛は携帯電話を操作して確認している。 |
愛 | 「3月◎日の11時…ってメールで貰ってます」 |
その画面を小鳥に見せた。 |
小鳥 | 「んー、確かに今日だわ…ちょっと待ってて」 |
ピッピッピッピッピッピッ |
小鳥は765プロの電話機で春香の携帯電話を呼び出した。 |
Trrrrr… Trrrrr… |
……… |
ここは春香の自宅の自室。 |
♪〜 |
携帯電話の持ち主はまだベッドの中にいるようだ。 |
春香 | 「…んー?何だろ、事務所かプロデューサーさんからの電話だぁ…」 |
寝ぼけ眼で携帯電話を取った春香。 |
Pi♪ |
春香 | 「もしもしー、春香ですー」 |
まだ眠いのか声も間延びしている。 |
小鳥 | 『もしもし、春香ちゃん?765プロの音無です』 |
春香 | 「小鳥さん、どうしたんですかー?」 |
小鳥 | 『876プロの日高さんが事務所に来てるわよ』 |
春香 | 「え?あ、ああーっ!今日って3月◎日ですか!?」 |
小鳥 | 『そうよ。11時の約束だったらしいわね』 |
春香 | 「はいっ。す、すいません今からそっちに行くんで、待っててもらってください!」 |
小鳥 | 『はあ…やっぱり忘れてたの。分かったわ、日高さんにはそう伝えておくわね』 |
春香 | 「お願いします、じゃっ!」 |
Pi♪ |
……… |
ここは戻って事務所の応接用のソファー… |
小鳥 | 「そういうわけで、1時頃には着くんじゃないかしらね。はい、紅茶で良かった?」 |
愛 | 「ありがとうございます、音無さん。でも、春香さんってこうなんですか?」 |
小鳥 | 「たまに、ちょっとそそっかしい所もあるわよ。フフフ、そういうところも可愛いんだけどね」 |
愛 | 「私にとっては人生の恩人ですっ。この世界に入れたのも春香さんのおかげです」 |
小鳥 | 「それは春香ちゃんから聞いたかもしれないわ。でも今はどう?」 |
愛 | 「今ですか?自分の時間が少し無くなっちゃいましたけど、とっても楽しいです」 |
小鳥 | 「確かにこういう世界に入っちゃうと、自分の時間って作るのは難しくなるわね」 |
愛 | 「でもママの上を目指すって決めたから頑張ろうって思ってます」 |
小鳥 | 「えっと、愛ちゃんのママって…」 |
愛 | 「あの、分かりますか?日高…」 |
ポンっ |
小鳥はようやく理解したようだ。 |
小鳥 | 「日高ってことは愛ちゃんって、日高舞さんの娘さんなのね」 |
愛 | 「はいっ。でも…」 |
小鳥 | 「ん?どうしたの?」 |
愛 | 「でも、ママの七光ってことで見られたくはないんです」 |
小鳥 | 「親がそうだと大変だわよね。そっちの涼ちゃんもそうでしょ?」 |
愛 | 「あー、はい。こちらの律子さんがあまりに凄すぎちゃって、いっつも何か言ってます」 |
小鳥 | 「確かに親は大きいけど、乗り越える目標が近くにあるからいいかもしれないわ」 |
愛 | 「あっ…なるほど、そういう風に考えればいいんですね」 |
小鳥 | 「少しずつ確実にやっていけばきっと大丈夫。うちのみんなだってそうだったもの」 |
愛 | 「ここのみなさん本当に凄いです。誰もが知ってるアイドルばっかりじゃないですか」 |
小鳥 | 「みんな努力は事欠かなかったわね。自分のやることを全力で取り組んでいたわ」 |
愛 | 「だからこそ、これだけの事務所に成長したんですよね」 |
小鳥 | 「これもみんな一人の男の人が…来てから変わったのよ」 |
愛 | 「その人って…みなさんのプロデューサーさん…ですか?」 |
小鳥 | 「ええ。プロデューサーさんであって、それから私の…」 |
愛 | 「もしかして…音無さんの恋人さん…なんですね」 |
小鳥 | 「私もプロデューサーさんからパワーを貰ってるから、アイドルのみんなを全力でサポートしなくちゃって思うの」 |
愛 | 「こんなに強力な後ろ盾があるからこその、みなさんの強さなんだあ…」 |
愛の瞳に映る小鳥の姿は、さっきのお姉さんとしてとはまた違うように見えていたという… |