ここは雪歩の自宅のお風呂。おや?どうやら雪歩が浸かりに来たようです。 |
ん?今日は雪歩だけではないようですよ。これはぜひ聴き耳を(某ラジオ番組風)… |
カポーン(グラスの音の代わり) |
絵理 | 「お邪魔…します?」 |
雪歩 | 「絵理ちゃん、いらっしゃいですぅ」 |
絵理 | 「これが…萩原さんの家のお風呂?」 |
雪歩 | 「そうだけどびっくり…しました?」 |
絵理 | 「はい。こんなに広いなんて思ってなかったから…」 |
雪歩 | 「これ、一応温泉だから」 |
絵理 | 「えっ…温泉を引いたんですか?」 |
雪歩 | 「ううん、私が穴を掘ったら出ちゃったんです」 |
絵理 | 「凄い…萩原さんの綺麗さの秘密?」 |
雪歩 | 「どうかなあ?…って私って綺麗だと思う?」 |
絵理 | 「はい。色白で美人で可愛くてとても」 |
雪歩 | 「そんなことないですよぉ」 |
絵理 | 「そんな、謙遜しないでください…」 |
雪歩 | 「だって絵理ちゃんの方が私よりも色が白いでしょ?」 |
絵理 | 「これは…あまり日に当たらなかったから…かな」 |
雪歩 | 「絵理ちゃんも綺麗だと私は思うけどなぁ」 |
絵理 | 「…ありがとうございます、萩原さん」 |
雪歩 | 「じゃあ入ろ、絵理ちゃん。裸で何もしないのもアレだよね?」 |
絵理 | 「そうですね。はい…あの、桶はどこですか」 |
雪歩 | 「あ、こっちのを使ってもらえるかな?」 |
ザパッ ザバンッ |
入る前に掛け湯をする二人。 |
絵理 | 「これはどこに返せば…」 |
雪歩 | 「あ、こっちに返してくれる?」 |
絵理 | 「はい、ありがとうございます」 |
ザプンッ ザパンっ |
二人は湯船へと入っていった。 |
絵理 | 「でも今日はどうしてわたしをここに?」 |
雪歩 | 「うーん、なんとなくじゃダメ…ですか?」 |
絵理 | 「でもだからって、ここ?」 |
雪歩 | 「絵理ちゃんとは一度ゆっくりお話してみたくって…」 |
絵理 | 「そうなん…ですか?」 |
雪歩 | 「絵理ちゃんって何だか不思議で、それに…」 |
絵理 | 「?」 |
雪歩 | 「何だか少し私に似てるかなって思ったんです」 |
絵理 | 「わたしが…萩原さんと?」 |
雪歩 | 「この前一緒に出た時に、ステージ裏で絵理ちゃんのこと見てたのは分かってた?」 |
絵理 | 「えっ…?!そうだったんですか?」 |
雪歩 | 「その時、似てるなって」 |
絵理 | 「わたしと萩原さん…どこだろう?」 |
雪歩 | 「自分を前に出すのって苦手だと思うけどどうかなあ?」 |
絵理 | 「は、はい」 |
雪歩 | 「やっぱりそうなんだあ。私もそうだから、近い匂いがしたんですね」 |
絵理 | 「えっ、とてもあのステージではそんな風には…」 |
雪歩 | 「そんなことないよ、絵理ちゃん。あれでもステージ前はガチガチに緊張してたんだよ」 |
絵理 | 「知らなかったです。とてもそうは見えなかったから」 |
雪歩 | 「裏でプロデューサーに背中を押してもらわないと、私一人じゃ何もできないんですぅ」 |
絵理 | 「プロデューサーさん?…ですか」 |
雪歩 | 「絵理ちゃんのところには居ないんだっけ?」 |
絵理 | 「マネージャーはいるけど…だから居るって言っていいのかな?」 |
雪歩 | 「うーん、大体一緒かな。でもそっちはマネージメントだけだから、ちょっと違うかな?」 |
絵理 | 「そういう関係って、いいな…」 |
雪歩 | 「候補生だった頃は引っ込み思案で、弱いただの女の子だったんだよ」 |
絵理 | 「今の萩原さんを見ていると?とてもそうは思えないです」 |
雪歩 | 「プロデューサーに自分を見出してもらって、やっと変われたんだぁ」 |
絵理 | 「そうだったんですか」 |
雪歩 | 「だから、今の絵理ちゃんを見ていると昔の自分を思い出しちゃうなって」 |
絵理 | 「今の…わたし?」 |
雪歩 | 「絵理ちゃんはネットアイドル?でスカウトされたんだったよね?」 |
絵理 | 「はい…」 |
雪歩 | 「やっぱり違ったりする?」 |
絵理 | 「とっても…実際の人が目の前にいるってところ?」 |
雪歩 | 「それはわかるかも。私も最初の頃はそうだったから」 |
絵理 | 「今まではネットを通してだったから、人の目は間接的?」 |
雪歩 | 「そっか…」 |
絵理 | 「だから今までも見られてはいたけど、直接的に来るから少し怖い…かな」 |
雪歩 | 「私もまだ怖いですよ。男の人ってまだちょっと苦手ですから」 |
絵理 | 「男の人が苦手…あれ?でもプロデューサーさんって男の人じゃ…」 |
雪歩 | 「プロデューサーは前からずっと一緒ですし、それに…」 |
そこで風呂で赤みを帯びた頬を一層紅く染め上げる雪歩。 |
絵理 | 「…萩原さん?」 |
少し怪訝な顔で雪歩の顔を覗き込む絵理。 |
絵理 | 「好き…なんですか?」 |
雪歩 | 「その…うん。好きだって言うよりも、その…」 |
絵理 | 「そういえば前、涼さんから聞いた?」 |
雪歩 | 「ええっ?!」 |
絵理 | 「でも確かにあの時?二人だけの世界だった気がしたかも」 |
雪歩 | 「本当はあの時にもっといっぱい話せれば良かったね」 |
絵理 | 「だけどこうして招待してくれたから、萩原さんのことよく分かれた?」 |
雪歩 | 「あうー…」 |
恥ずかしさのあまり、顔が徐々に湯船に沈んでいく雪歩。 |
絵理 | 「わたし…萩原さんのこと少し、羨ましいかな?」 |
雪歩 | 「え?どうして…?」 |
絵理 | 「そういう男の人が直ぐ近くに居てくれるなんて…」 |
雪歩 | 「そ、そうかなあ?」 |
絵理 | 「だって、わたしの事務所は居ないから?だから…」 |
雪歩 | 「そっか…そう言えば社長さんも女の人だったね」 |
絵理 | 「だから、そういう関係?絶対に無いから」 |
雪歩 | 「でも絵理ちゃんくらいなら、すぐに出来ると思うけどなあ」 |
絵理 | 「そんな…でも萩原さんがそう言ってくれるなら」 |
雪歩 | 「大丈夫、こういうのは自信を持った者勝ちですから…ね」 |
絵理 | 「そうですね」 |
雪歩 | 「じゃあそろそろ一旦上がって身体とか洗っちゃおう」 |
絵理 | 「はい」 |
ザパンっ ザブンッ |
雪歩 | 「椅子はこれを使ってね」 |
絵理 | 「これって…いい薫り。ヒノキの新品ですか?」 |
雪歩 | 「うん。せっかく絵理ちゃんに来てもらうんだから、新しいの出しちゃった」 |
絵理 | 「そ、そんな私のために…」 |
雪歩 | 「いいんです。大事なお客さんですから…」 |
カポーン(グラスの音の代わり) |
二人の他愛の無い会話はこの後も続くようですが、そろそろこの辺で。 |
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