Opposite Side of Side trip(回り道の向こう側)

ある日のとある撮影スタジオの楽屋…
真美「兄ちゃん、今日は2本だよね?」
「そうだな。午前がCM撮影で午後が再来月出るファッション誌の撮影だ」
真美「宣材写真も空いた時間に撮るんだよね?」
「そうだけど大丈夫か?」
真美「うん。ちゃんとCMのセリフとかもバッチリ憶えてきたよー」
「(一人でも頼もしくなったな…)」
真美「ん?どうしたの兄ちゃん」
「いや、何でもないよ真美。でも真美だけ仕事増やしてゴメンな」
真美「ううん。だって真美なんて他のみんなに比べたら知名度とかまだまだだもん」
「俺はそうでもないとは思ってるけどさ」
真美「そんなことないよ。だってまだまだ亜美の方が声援とかも多いもん」
「やっぱり悔しい?」
真美「うーん、ちょっとね。今までは二人で一人だったじゃん、比べられるってことが無かったし」
「なるほどな。でもこれから少しずつ上げていけばいいことだからさ」
真美「そうだよね。兄ちゃんサポートしてくれるよね?」
「真美が俺を頼ってくれる限りはね」
真美「真美のこと、トップアイドルに導いてくれるって約束はちゃんと守ってね」
「ああ。そう言ってくれるなら、俺も出せる全力を出すさ」
真美「ありがと、兄ちゃん」
「どういたしまして、真美。よし、じゃあそろそろ着替えないとだな」
真美「あ、今回から制服なんだよね」
「まあな。今回からは同じ会社の中学生用のやつだからな」
真美「じゃあちょっち着替えるから、そっち向いててー」
「え?い、いいのか?俺が居たままでも」
真美「別にいいよ。だって、前だって部屋に居た時に着替えたじゃん」
「それはそうだけどな…」
真美「この制服でいいんだよね?」
「ああ。今日持ってきたそれだぞ」
真美「え?持ってきたってことはこれって歌の衣装なの?」
「そういうことだ。新しい衣装だぞ」
真美「新しいってことは誰もまだ着たことないってこと?」
「宣材用写真を撮るために春香が着た以外はな」
真美「じゃあ人前で披露するのは真美が一番なんだ。何だか嬉しいな」
「そうだな…亜美が先に着るのも多くて、一番に着ることなんてなかったもんなあ」
真美「亜美ばっかり先で羨ましかったなあ…」
「そっか…ゴメンな真美」
真美「いいよいいよ、兄ちゃんが謝らないで」
「でも、もう少し早くこういう状況に持って来れたら良かったんだけどな…」
真美「ううん…ちょっとこっち向いて、兄ちゃん」
「そっちって…っ!?」
そこには当然のことながら着替え途中の真美がいたわけで…
真美「だって兄ちゃんがいなかったら真美だってここまで成長できなかったもん」
「…せ、成長って…い、意味が違うだろ?」
プロデューサーは真美の下着姿にしどろもどろになっている。
真美「そんなことないよ。身体もだけど、心も伸ばしてくれたのは兄ちゃんじゃん」
「俺が…か?」
真美「亜美が出番で二人で楽屋に居る時とか、とっても優しくっていつも一緒に居て欲しいって思ったよ」
「………」
真美「亜美の仕事でも真美のこともちゃんと気に掛けてくれてて、真美の心の支えだったのかな」
「そうなのか?」
真美「うん。そうじゃなかったら…こんな格好恥ずかしくて見せられるわけないよ」
「…ってそうだった。真美、早く服着てって!」
真美「あー、兄ちゃん恥ずかしがってるー」
「真美、もう少し恥じらいをもってくれよ…」
真美「ほーらほら、兄ちゃん欲情した?」
「え?そりゃしてないと言ったら嘘になるんだけどな」
真美「やっぱりそういう目で見てたんだ」
「目の前でこんなに可愛い子にそんなことされれば、誰だってそうなるだろ?」
真美「…でも、こんなの見せられる男の人なんて本当に兄ちゃんだけだもん」
「真美…そうなんだ」
真美「じゃ、そろそろ着るよん。兄ちゃん、鼻の下伸びてるよー」
「おっと、そろそろ俺も仕事モードにしないとっと。それ着たら最終確認するからな」
真美「はーい」
………
撮影が予定より早く終わり、楽屋で帰り支度をしている二人。
「今日はおつかれさん。どうだった?」
真美「んー、結構着せ替え人形させられて疲れたよー」
「結局何着着たんだっけ?4着…いや、5着か」
真美「5着だよん。好きな1着貰って良いって言われたから、これ貰っちゃった」
上下のハンガーをそれぞれ充てて見せる真美。
「お、似合っているな」
真美「何でこれにしたか分かる?」
「何でって…真美が好きな1着だからじゃないのか?」
真美「それもそうだけど、兄ちゃんが撮影の時に一番反応が良かったんだもん」
「え?」
真美「撮影見学しに来てた時に、一番喰いついて見てたじゃん」
「自分でも気が付かなかったな…そうだったのか」
真美「だから兄ちゃんがこれを一番気に入ってるのかなって思ったんだ」
「何だよ真美…」
ぎゅっ
プロデューサーはそのまま真美のことを抱きしめた。
真美「に、兄ちゃんっ!?」
「そんなに人のことなんてもう、気にしなくたって良いんだぞ」
真美「そ、そんなんじゃないよ」
「じゃあ何で俺を思って選んだんだ?」
真美「それはだって兄ちゃんが…兄ちゃんが一番最初で一番大好きで一番大切なファンだもん!」
「真美…」
真美「だから真美は兄ちゃんに、一番喜んでもらいたいんだよ」
「そっか…ありがとう真美…でもな」
真美「でも?」
「もうちょっと、いやもっと自分のこと考えて良いんだからな」
真美「う、うん…兄ちゃんがそう言うならそうするよ」
「よし、じゃあ今日は早く終わったし、どっか寄って帰るか?」
真美「え、兄ちゃんいいの?」
「いいさ。真美も時間までに戻れば問題無いんだろ?」
真美「うん。あ、じゃあこれ着ちゃおうか?」
「そうだな、真美が良いんならせっかく貰ったものだしな」
真美「分かった。ちょっち着替えるからそっち向いててね」
真美が着替えている間、どこに行こうか思案し始めたプロデューサーなのであった…
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あとがき
どもっ、飛神宮子です。
アイマス2発売以降初めてのSSは、偶然にも今回から単独プロデュースできるようになった真美になりました。
久々にタイトル付けに悩んだ作品でした。それ以上に作品も難航しましたが。
「真美」として独立するまでの曲折、それがあったからこそ今の真美が生きてくるのではないでしょうか。
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2011・02・28MON
飛神宮子
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