Shot in the Arm(景気付け)

ここは年も明けて数日の事務所…
「さて…っと、小鳥さんと律子は明日まで休みだけど、俺は一人寂しく事務所か…」
どうやら事務所にはプロデューサー一人のようだ。
「三が日に仕事って…でも入れてもらえるってこと嬉しいことだよな」
嬉しさ半分悲しさ半分と言ったところか。
「でも二人ともちゃんと来るかな?」
そこに…
ガチャっ
真美「やっほーい!明けましておめでとー!兄ちゃんっ!」
元気な子が一人やってきた。
「お、来たか。明けましておめでとう、真美」
真美「今年もよろよろー、今日はまた寒いねー」
「こっちこそ今年もよろしくな。寒いけど真美は元気だな」
真美「仕事だと思ったら、寒さになんか負けてられないもん」
「お、良い心がけだな。今日は来るのは大丈夫だったか?」
真美「電車も初売りに行く人で結構混んでたけど何とかね。うー…今日の初売り行きたかったよー」
「そう言うと思ってさ、確か真美が好きなのって○○○○○○と☆☆☆☆☆だよな?」
真美「そだよ」
「○○○○○○と☆☆☆☆☆に頼み込んで、真美のサイズの1万5千円の福袋を1つずつ分けて貰ったぞ」
真美「え?」
「今日の仕事が終わったら持って帰ってくれ」
真美「兄ちゃん、ホントにいいの?」
「正月から働いてもらうんだから、これはお年玉だと思ってくれ。但し中身は保証しないからな」
真美「そんなのいいよ、ありがと兄ちゃん。大好きだよー!」
ぎゅうっ
真美は椅子に座っていたプロデューサーへと抱きついた。
真美「あれ?そういえばもう2つ袋があるけどあれは?」
「あれはもう一人今日出てもらう子のために確保した福袋だけど…そういえば遅いな」
真美「ねえねえ、もしかして駅伝で何かあったのかな?」
「…そうか、今日はそっち方面に向かって走る日か」
テレビを点けてそのチャンネルに合わせると…
実況『…レースは2区に入りました。それでは2区のコースの紹介です…』
三が日の2日目・3日目に行われる某駅伝の生中継が始まっていた。
「…こうなると、人の移動の関係で電車が遅れる可能性もあるか…」
真美「ねえねえ、ちょっと連絡した方がいいんじゃないかな?」
「そうだな…」
ピッピッピッピッ Trrrrr… Trrrrrr…
プロデューサーはその人の電話を鳴らし始めた。
………
♪〜
ここはその子の居る場所…
春香「ん〜?何だろうー…くぅ…電話だぁ…」
携帯電話を探って電話に出たその人。
春香「もしもしぃ」
「もしもし、春香か?」
春香「プロデューサーさん、明けましておめでとうございますー」
「明けましておめでとう…って今どこだ?」
春香「どこだって…そんな、家に決まってるじゃないですかー」
「ちょっと待てい!今日仕事だって年末に確認したし、昨日も連絡のメールを入れたよな?」
春香「え?え…あれ?もしかしてあのレポーターの仕事って今日でしたっけ?」
「まさか…忘れてたわけじゃないよな?春香ちゃん」
春香「す、すすすみませんっ!今すぐ行きますっ!」
「気をつけろよ、今は駅伝がそっちに向かってるんだからな」
春香「は、はいっ!あ、あのっ…何時までに行けばっ!ああっ!」
どんがらがっしゃーん
プロデューサーの電話口にも届くような派手な転倒音。
「まだ間に合うくらい時間はあるから、落ち着いて来てくれ」
春香「あいたたたぁ…そ、それで何時ですか?」
「事務所に12時までだ。それでダメだったら、○○駅の△△口に13時までにな」
春香「分かりました、今すぐ準備してそっちに向かいますっ」
ピッ
「はあ…新年早々春香は春香だったか…」
真美「で、どうなの?兄ちゃん」
「まだしばらく掛かりそうだ。ゆっくりここで待つか」
真美「そういえば律っちゃんとかピヨちゃんは?」
「明日まで休みだ。正月三が日は仕事が殆ど入って無いから、俺一人だけにしたんだ」
真美「そっかあ」
………
そして時は流れて11時半…
ガチャっ
春香「プロデューサーさん、遅れてスミマセンっ!」
真美「明けましておめでとー、はるるん」
「体力大丈夫か?春香。まあまずは明けましておめでとう」
春香「あ、明けましておめでとうございます、プロデューサーさん、真美」
真美「こんなに遅くなって、はるるんどったの?」
春香「仕事があるのを寝る前にコロッと忘れてて、目覚ましを点け忘れてて…」
真美「でも時間は大丈夫っしょ?兄ちゃん」
「まあカツカツになったけどな。じゃあ前にも説明したけどもう一度今日の仕事の説明をするからさ、春香もそこに座ってくれ」
春香「はい…」
………
春香「何か私と真美で仕事の量に差がないですか?プロデューサーさん」
「そんなことはないぞ。駆け回ってもらうのは同じだ」
真美「兄ちゃん、つまり真美はこの2階の7店舗でいいんだよね?」
「ああ。春香だって8店舗だから殆ど変わらないよな?」
春香「でも私、3階と4階じゃないですかぁ」
真美「はるるん、往生際が悪いよー。じゃんけんで負けたじゃん」
春香「そうだけどぉ…プロデューサーさん、出し方がヒドいじゃないですか」
「いや、それ以前に子供服のリポートまでやりたいか?」
春香「へ?」
「真美の担当分、子供服の店もあるんだぞ」
春香「あ…ホントだ」
「それをやりたいって言うならいいけどな」
春香「プロデューサーさんの意地悪…」
「じゃあ決まりだな。よし、現場向かうから二人とも車に乗ってくれ」
真美「準備は大丈夫なの?」
「春香が来るまでに積んでおいたから大丈夫だぞ」
真美「よーし、じゃあレッツらゴー!」
春香「うう…今年も私はこうなのかなぁ…」
「何だよ春香、いつもの明るさが無いぞ」
春香「だって、今年はドジしないようにしようって思ってたんです。それがいきなり…」
「ああ、まったく正月から先が思いやられるな…」
チュッ
春香の頬にそっと乗るプロデューサーの唇。
春香「プ、プロデューサーさんっ!?」
「これで元気出してくれ」
春香「…はいっ!」
さっきまでの春香はどこへやら、春香の顔は紅くなりながらも笑顔へと変わっていた。
真美「あー!兄ちゃん、真美も欲しいー」
「え?真美はいいだろ?元気だしさ」
真美「むー、でもはるるんにばっかりズルいよー!」
「…しょうがないな」
チュッ
真美の頬にもそっとプロデューサーの唇が乗った。
真美「…ありがと、兄ちゃん。これで元気100倍だよっ!」
真美の顔も少し赤みを帯びた笑顔へと変わった。
「よし、じゃあ行くか。真美、春香」
二人の顔の赤みは現場に行くまで引くことはなかったという…
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あとがき
飛神宮子です。明けましておめでとうございます。
今年の1本目なので新春の初売りのインタビューネタで。
春香さんはそれでもドジっ子です…いや、やればできる子なんですよ。
サーバは変わりましたが今年も鈴音天晶をよろしくお願いします。
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2012・01・09NAT/MON
飛神宮子
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