I Share a Vitality with You(元気のお裾分け)

ある年の瀬の事務所…
やよい「私がですか?」
「ああ。でもやっぱり正月は家族で過ごしたいよな、やよいも」
やよい「プロデューサー、それってどんなお仕事ですか?」
「年明けのアイドル歌合戦なんだよ」
やよい「あれ?でも歌番組なら律子さんが一緒じゃないんですか?」
「今回は都合があって律子は行けないんだ…って向こうがちょっと嫌がっててさ」
やよい「ええーっ!?律子さんが嫌がられてるなんて…そんなのメッですよ」
「いや、嫌がっているのは歌合戦の対戦相手に予定されてる人なんだ」
やよい「どうして律子さんを嫌がってるんでしょうか…?」
「律子にも一応話をしたんだけど、律子もそんなことしたら正月から親戚に顔見せできないって言ってなあ」
やよい「プロデューサー、もしかして…相手って律子さんの従弟の涼ちゃんですか?」
「そういうことだ。律子だと気負いするから律子以外でお願いしたいって」
やよい「でも歌なら私じゃなくて、もっと上手なあずささんとか千早さんとかじゃないんですか?」
「律子がやよいを推薦したんだよ。今のやよいなら、あずささんや千早にも負けないくらいだからって」
やよい「そんな…私なんかそんな…」
「俺も今のやよいならいけると思うぞ」
やよい「プロデューサー…はいっ。あの…その日程は問題無いんですね?」
「この日だけどやよい達の日程は基本的に律子に一任しているけど、問題は無いってさ。むしろやよいの都合は大丈夫か?」
やよい「この日なら大丈夫です。私、出ます!」
「分かった。律子ー、やよい大丈夫だってさ」
少し遠くのテーブルで事務作業をしていた律子へと呼びかけるプロデューサー。
律子「本当ですか?ちょっと今行きますね」
作業を止めた律子がやってきた。
律子「やよい、やってくれるのね」
やよい「はい。律子さんにそう言われて自信が付いちゃいました」
「それであとは律子に任せて大丈夫だな?」
律子「曲とかも私たちで決めちゃっていいのよね?」
「ああ。決まったらこっちに伝えてくれ。先方に連絡入れるから」
律子「了解。プロデューサーも他の仕事に穴を開けないようにしてくださいね」
やよい「プロデューサー、必ず成功させて勝ってきますっ」
「ああ。期待してるからな」
プロデューサーは急いだ様子で他の仕事の作業やらをし始めた。
律子「でもゴメンやよい。本当のこと言うとね、このオファーって私たちに来たのよ」
やよい「そうだったんですか!?」
律子「私も涼もどうしても嫌だって言ったけど、番組側から枠は変えられないって言われちゃったの」
やよい「だから私に話が来たんですね」
律子「ええ。やよいだけなら涼も良いって言ってくれたし、今のやよいなら大丈夫って私も思ったから」
やよい「それなら任せてください。私、律子さんの分も頑張りますから」
律子「頼もしいわ。さすがは私の大事なパートナーね」
やよい「そんな…律子さんが大切なパートナーとして居てくれるからです」
律子「フフフ、ありがとうやよい」
やよい「エヘヘ、ありがとうございます律子さん」
律子「ねえやよい、そろそろ曲決めちゃってしまわない?」
やよい「そうですね、律子さんはどうしたらいいと思いますか?」
律子「フフフ…秘策なんだけど……………ってどうかしら?」
やよい「ええーっ!?そんなことしちゃってもいいんですか?」
律子「いいのよ、せっかくの機会だしCDにも入るでしょ?」
やよい「分かりました。でも涼ちゃんには内緒にしてくださいね」
律子「もちろんよ。涼のことには一切干渉しないって約束だから。聞かれても答えないわ」
………
そして当日のリハーサル前のスタジオ…
やよい「おはようございます、涼ちゃん」
「おはようございます、やよいさん」
やよい「そういえば男の人としての涼ちゃんって、現場では初めてですよね」
「そうだね。プライベートとかでは律子姉ちゃんに聞いてた?」
律子「そうね、話してたことはあったかしら」
「り、律子姉ちゃん!?どうしてここに!?」
律子「私は殆ど秋のま〜ち専属のマネージャー兼アイドルなの。やよい、もうすぐ歌のリハーサルだって」
やよい「はーい。頑張ってきまーす」
律子「本番中はスタジオにいないから、安心しなさい涼。じゃあやよい、私は音とかの確認に行ってくるわね」
やよい「律子さん行ってらっしゃーい」
律子は二人を残して行ってしまった。
「うわあでも律子姉ちゃん居たんだ…」
やよい「もしかして聞いてなかったんですか?」
「僕には干渉しないって約束だったから、何も聞いてなかったんだ」
やよい「そうだったんですかあ。でもだからと言って今日の勝負は負けませんからね」
「こっちだって、望むところだよ」
スタッフ『高槻さーん、リハーサルお願いしまーす』
やよい「あ、ちょっと行ってきますね。涼ちゃんはすぐ後ですよね?」
「うん。行ってらっしゃいやよいさん」
 
「うわあ、こんなの勝てるわけないよやよいさん」
やよい「律子さんが新しいミニアルバムのカップリングでいったらって勧めてくれたんです」
「しかも今日の本番でテレビ初披露なんだよね?大胆だなあ」
やよい「だけど涼ちゃんの曲もかっこ良かったですよ」
「ありがとうやよいさん。トップアイドルのやよいさんにそう言ってもらえるのは嬉しいよ」
やよい「でもでも、何だか自信無く見えます」
「目の前であんなパフォーマンスを見せられて、自信あるわけないよ」
やよい「もう…あの、ちょっとこっちに来てくれませんか?」
「こっち?」
涼はやよいに引っ張られるように誰にも見えないようなスタジオの裏へとやってきた。
「どうしてここに?やよいさん」
やよい「涼ちゃんが元気なさそうだったから、私の元気分けてあげたくて」
「やよいさん…」
やよい「涼ちゃん、左手を伸ばして上げてください」
「えっとこう?」
やよい「はいっ、じゃあ行きますよー。ハイターッチ!」
パシンっ
やよい「イエイっ!どうですか?」
「何だかやよいさんの笑顔に少し元気を貰えた気がするよ」
やよい「ええーっ、少しですか?じゃあもっと元気注入してあげちゃいます」
「え?またハイタッチ?」
やよい「違います。涼ちゃん、ちょっとだけ低くなってもらえますか?」
「えっとこうでいいかな?」
涼は少しだけ腰を落とした。
やよい「はいっ、じゃあ行きますね」
やよいは涼の両頬を手を添えた。
やよい「元気…」
チュウっ
やよい「入ですっ。エヘヘっ」
涼は一瞬目の前で何が起こったのか分かっていなかったが、目の前にやよいの顔があることで理解した。
「や、やよいさんっ!?」
そんな二人の顔は少し紅く染め上がっていた。
やよい「元気、入りましたか?」
「…うん。ありがとう、やよいさん」
やよい「どういたしましてですっ」
「こんなにやよいさんの元気を貰ったからにはもう負けられないなあ」
やよい「私だって、まだまだ元気いっぱいですから負けませんよ」
「あれ?何か騒がしいよ」
やよい「そろそろ休憩じゃないですか?」
「あ、そうかも。僕達もここにいちゃ邪魔かもね」
やよい「じゃあここ出ましょう、涼ちゃん」
「うん、やよいさん」
本番、史上まれに見る高パフォーマンス対決となり、この二人の対決は1点差でやよいの勝ちだったらしい…
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あとがき
どもっ、飛神宮子です。
やよいと涼。年齢的には三人称が逆になってもおかしくないですけどねえ…。
さて今年のSSもこれで最後となります。アイマス界隈は本当に色々あった一年でしたね…。
では今年も一年、ありがとうございました。そしてよいお年を…。
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2010・12・30THU
飛神宮子
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