ここはとある録音スタジオ… |
スタッフ | 『OKでーす!星井さん、一度こちらでチェックお願いしまーす!』 |
美希 | 「はーいなの!ふう…」 |
とりあえず一段落と、耳からヘッドホンを外す。 |
カチャッ |
そしてそのままドアを開けて調整室へと出てきた美希。 |
美希 | 「ハニーどうだった?ミキの想い…なの」 |
P | 「一度聴いてみるといいよ。俺はドキッとさせられたぞ」 |
美希 | 「ありがと。じゃあ一度聴かせてなの」 |
美希は譜面と歌詞カードをテーブルに置いて、ソファーへと腰を下ろした。 |
P | 「すみません、一度フルコーラスでお願いできますか」 |
スタッフ | 「はい、今重ねたの流しますね」 |
♪〜 |
オケに美希の歌が重ねられたものが流れ始めた。 |
P | 「どうだ?」 |
美希 | 「ハニーはどう思ったの?」 |
P | 「いや、本当にドキッとさせられたさ」 |
やよい | 「うあー、やっぱり美希さんって凄いですー」 |
美希 | 「ありがとやよい。うーん、でも出来ればもう一回やりたいかも」 |
P | 「お、そうか?」 |
美希 | 「うん。もうちょっと心を籠めたいかなって。もう一回やってダメだったらしょうがないかな」 |
P | 「それじゃあ今から出来るか?」 |
美希 | 「んー、少しだけ休憩してもいい?」 |
P | 「分かった。その間にやよいの収録だな」 |
やよい | 「はい。次はこの曲ですよね?」 |
P | 「ライブでは何回か歌ったことがあるし、やってきたから大丈夫だよな?」 |
やよい | 「はいっ。プロデューサー、その前に一発いいですか?」 |
美希の隣の椅子に座っていたやよいが、右手に譜面と歌詞カードを持って立ちあがった。 |
P | 「いいぞ」 |
やよい | 「行きまーすっ!ハイターッチ!」 |
パシンっ |
やよい | 「イエイっ!じゃあ行ってきまーす」 |
カチャッ |
ドアを開けてやよいが収録ブースへと入っていった。 |
スタッフ | 『高槻さーん準備お願いしまーす』 |
やよい | 「はーい!あ、あのー」 |
スタッフ | 『何でしょう?』 |
やよい | 「マイク位置の調整お願いできますかー」 |
スタッフ | 『はいー、今行きまーす』 |
カチャッ |
と、スタッフの一人も中へと行った。 |
美希 | 「そういえばハニー、伊織は?」 |
P | 「伊織は家の予定が合わなくて、亜美や真美と一緒の日に変わった」 |
美希 | 「そっか。だから今日はやよいと二人だけなんだ」 |
P | 「何だ?伊織に逢いたかったとかか?」 |
美希 | 「ううん、一緒の日の収録だって言ってたから不思議に思っただけ」 |
カチャッ |
マイク位置の調整をしていたスタッフがブースから出てきたようだ。 |
スタッフ | 『それでは一回リハしまーす』 |
やよい | 「はーい、お願いしまーす」 |
♪〜 |
音楽に合わせたやよいの声が、調整室の方へも響き渡る。 |
……… |
今日のところの収録は全て終わって、ここは車の中… |
P | 「これから二人とも事務所までで良いんだよな?」 |
やよい・美希 | 「はいっ」 「うんっ」 |
美希 | 「今日はやよいの歌、聴いててすっごく元気貰えてた気がするな」 |
やよい | 「私も今日は美希さんの歌で、何だか少し蕩けちゃいました」 |
美希 | 「どうしてだろ?やよいの歌って聴いてると、どっかに行きたくなる歌なんだよ」 |
やよい | 「私は美希さんの歌って気持ちがほわわんってして来るなあって思います」 |
P | 「今日の収録はそういうのもちょっと狙ってたりしてたけどな」 |
やよい | 「やっぱりそうだったんですか?」 |
P | 「やよいで恋する曲とか、美希で元気な曲とか、そういう気分になってもらおうって思ってさ」 |
美希 | 「へー、じゃあ伊織が居なかった本当の理由ってそれなの?」 |
P | 「いや、予定が合わなかったのは事実だぞ」 |
美希 | 「そういえば前にやよいとは一曲歌ったよね」 |
やよい | 「え?えっと…」 |
美希 | 「ほら、全員ライブで歌ったよ」 |
やよい | 「あー!おはよう朝ご飯って美希さんとでした!」 |
美希 | 「あの時は全部やよいの元気に引っ張ってもらっちゃたよ」 |
やよい | 「そ、そうなのかな?」 |
美希 | 「だってやよいの持ち歌だよ。だけど歌ってて楽しかったな」 |
やよい | 「ありがとうございますっ。あ、じゃあ次は美希さんの曲、一緒にやってみたいですっ」 |
美希 | 「そうだね。ハニー、次の全員ライブで出来ないかな?」 |
P | 「やよいは美希の持ち歌を歌える自信あるな?」 |
やよい | 「はいっ!前に歌ったこともあるから大丈夫かなーって」 |
P | 「それなら次のライブは必ず入れておくぞ」 |
美希 | 「そういえば律子さんとやよいであの曲歌ったっけ?」 |
やよい | 「はい。でもやっぱり律子さんの歌についていくのが精一杯だったです」 |
美希 | 「だって律子も歌唱力は元からかなり上のランクだもんね」 |
やよい | 「だからあの曲は一生懸命レッスンしてもらって、やっと歌えました」 |
美希 | 「そっかあ」 |
P | 「そうだった。特にやよいは曲の内容の理解にも苦しんだしな」 |
やよい | 「大人の話過ぎたから良く分からなくって、うう…」 |
美希 | 「やよいって、少女マンガとか読まないの?」 |
やよい | 「うちビンボーだから、マンガとかあんまり買えなくて…」 |
美希 | 「そっか、うーんじゃあ仕方なかったのかな。今の少女マンガってそういうの凄いもん」 |
P | 「そうらしいな。真もよく言ってるしさ」 |
美希 | 「うんうん。この前貸してもらったのも、ドロドロで凄かったよ」 |
やよい | 「うあー、そんなに凄いんですか?」 |
美希 | 「もう三角関係どころの話じゃなかったもん」 |
やよい | 「興味あるけど、ちょっと読むのが怖いかもです」 |
美希 | 「やよいにはもうちょっと優しいのがいいかもね」 |
やよい | 「分かりましたー」 |
P | 「おっと、事務所着いたけど忘れ物無いようにな」 |
美希・やよい | 「うんっ」 「はーい」 |
P | 「あ、そうだ。美希もやよいも夕ご飯は事務所で小鳥さんに作ってもらってあるから、食べてから帰ってな」 |
美希 | 「おにぎりなの?」 |
P | 「ああ。おにぎりを幾つかとおかずを頼んでおいたから」 |
やよい | 「いいんですか?ありがとうございまーす」 |
美希 | 「やよい、早く行こっ!」 |
やよい | 「はいっ!」 |
二人の笑顔には敵わないなと、駐車場に持って行く車の中で少し微笑んだプロデューサーであった… |