日差しはもう夏のような頃のこと… |
亜美 | 「あずさお姉ちゃーん!」 |
あずさ | 「あら?えっと…亜美ちゃんね」 |
亜美 | 「うんっ、今日はよろしくねー!」 |
あずさ | 「よろしく、亜美ちゃん」 |
亜美 | 「でも変だよねー、亜美とあずさお姉ちゃんの写真集って」 |
あずさ | 「そうかしら?でもプロデューサーさんの希望じゃないって話なのよ」 |
亜美 | 「そうなんだー。あ、兄ちゃんだ。兄ちゃーん!」 |
P | 「お、二人とも着替え終わったな」 |
あずさ | 「はいー、遅くなってしまいましたでしょうか?」 |
P | 「いやいや、この時間ならまだまだ十分に余裕がありますって」 |
亜美 | 「兄ちゃん、今日はよろしくー!」 |
P | 「良い返事だな、亜美。じゃあ今日の撮影について説明するから」 |
亜美・あずさ | 「はーい」 「はい」 |
P | 「今日撮るのは、写真集と言うよりもブックレットにするためのものです」 |
亜美 | 「ブックレットってことは、今度出すCDのおまけにでもするの?」 |
P | 「そういうことだな、初回盤に付けたらどうだってレーベルの方から打診があってさ」 |
亜美 | 「でもさー、普通の写真もアルバムのジャケットとかには入るんだよね?」 |
P | 「入るけど、今回曲が多くて写真が1、2枚しか入らなくてな」 |
あずさ | 「そうなんですか〜、それでどんなコンセプトなんです?」 |
P | 「それはこれから説明します。えっとですね…」 |
……… |
亜美 | 「へー、ところで兄ちゃん」 |
P | 「ん?何か質問?」 |
亜美 | 「自由時間は遊んでていいの?」 |
P | 「ああ、そうだな。気をつけて遊ぶなら、この施設は1日借りてあるからいいぞ」 |
亜美 | 「やっほーい!」 |
あずさ | 「日向ぼっこもいっぱいできそうですねー」 |
P | 「あずささんも休憩時間はゆっくりしててください」 |
あずさ | 「そうさせてもらいますー」 |
P | 「あと…15分後に撮影開始するから、それまではあのテントの下の椅子で休んでてください」 |
亜美 あずさ | 「はーいっ」 「は〜い」 |
|
最初の撮影ポイントで… |
亜美 | 「兄ちゃーん、そこに立っててー」 |
あずさ | 「お願いします、プロデューサーさん」 |
P | 「え?二人ともどうして?」 |
あずさ | 「後ろから来る人を、振り向いて呼ぶようなシチュエーションなんです」 |
P | 「なるほど…って、俺はカメラには入らないですよね?」 |
亜美 | 「たぶん入らないと思うよー」 |
P | 「ここでいいのかー?亜美ー」 |
亜美 | 「うーん!」 |
P | 「でも俺なんかでいいんですかね?」 |
あずさ | 「いいんです、むしろこういう時は大好きなプロデューサーさんが一番ですから」 |
P | 「大好きって、そんな…」 |
あずさ | 「あ、そろそろ撮影だそうですよ」 |
P | 「そうみたいですね。亜美ー、大丈夫かー?」 |
亜美 | 「兄ちゃーん、こっちはオッケーだよーん!」 |
P | 「もう始まるみたいだからー」 |
亜美 | 「分かったー」 |
……… |
そして休憩中… |
亜美 | 「あずさお姉ちゃーん、ここに居たんだ」 |
あずさが休んでいた芝生の上の木蔭へと、遊んでいた亜美がやってきた。 |
あずさ | 「あら、亜美ちゃん。もしかして私のこと探してたのかしら?」 |
亜美 | 「んーん、偶然だよ偶然。でもあっついねー」 |
あずさ | 「そうねえ…あ、亜美ちゃんこれ飲むかしら?」 |
と、あずさは持っていたペットボトルを差し出した。 |
亜美 | 「うん、貰うよありがとー…ごくっごくっごくんっ…ぷはあ、生き返るー!」 |
あずさ | 「すぐ行かないで、ちょっと休んでいったら?」 |
亜美 | 「そうするよ。でも木蔭でとっても涼しー」 |
あずさ | 「そうね、こういう日は木蔭が一番ね」 |
亜美 | 「ふう、落ち着いたあ」 |
あずさ | 「いっぱい動き回って疲れたんじゃないかしら?」 |
亜美 | 「うん、暑かったからちょっと疲れちゃった」 |
あずさ | 「ほら、亜美ちゃん」 |
ポンポンっ |
亜美 | 「え?いいの?」 |
あずさ | 「いいの、ほらっ」 |
亜美 | 「それなら、うんっ」 |
ポフっ |
亜美はあずさの腿を枕にして横になった。 |
亜美 | 「涼しくて気持ちいー」 |
あずさ | 「亜美ちゃん汗だくね、びっしょりだわ」 |
亜美 | 「あ、あずさお姉ちゃんのスカート大丈夫?」 |
あずさ | 「大丈夫よ、もう次の衣装に着替えるでしょ?」 |
亜美 | 「あ、そうだった。うーん、でも本当に今日はいい日だねー」 |
あずさ | 「そうね…」 |
ポンっ |
あずさはそんな亜美の頭に手をそっと乗せた。 |
亜美 | 「んっ…」 |
あずさ | 「くすぐったい?」 |
亜美 | 「んーん、あずさお姉ちゃんの手が気持ちいいなって」 |
あずさ | 「そう…良かった」 |
亜美 | 「あずさお姉ちゃんの薫りも、気持ちいいよ」 |
あずさ | 「えっ…?」 |
亜美 | 「この薫り、何だか落ち着いちゃうもん」 |
あずさ | 「そうかしら?そう言われると嬉しいわ〜」 |
亜美 | 「んー、気持ちいい…ふわーあっ」 |
あずさ | 「あらあら、大きなあくびね。時間には起こしてあげるからゆっくりおやすみなさい」 |
亜美 | 「うん、それじゃあちょっとおやすみー」 |
あずさ | 「おやすみ、亜美ちゃん」 |
しばらくすると… |
亜美・あずさ | 「くぅ…くぅ…」 「すぅ…すぅ…」 |
寝息はすっかり二重唱へと変化していた…が |
パシャっパシャっ |
そのそばで何やらカメラのシャッター音が… |
P | 「二人とも、よく寝てるなあ…起こすのはもう少しだけ後にするか」 |
どうやらプロデューサーのカメラのようだ。 |
P | 「この写真、何かに使えるかな?後で社長に相談してみよう」 |
二人の優しそうな寝顔に、プロデューサーは微笑みながらシャッターを下ろしていた… |