| 10回目、ついに決着がついた。勝者は… |
| 真美 | 「誕生日の日、貰ったよん♪」 |
| パーを再び握り拳に変えてガッツポーズした真美。 |
| 亜美 | 「うー…でも仕方ないよねー、恨みっこなしって言っちゃったもん」 |
| その亜美の表情はとても残念そうだ。 |
| Ｐ | 「お、決まったか。それでどっちに行くんだ？」 |
| 真美 | 「真美と一緒だよ、兄ちゃん」 |
| Ｐ | 「ゲームショウか…真美、憶えること多いけど大丈夫か？」 |
| 真美 | 「楽しいからたぶん大丈夫だよ、でも兄ちゃんも憶えるの手伝ってね」 |
| Ｐ | 「了解。今週中には紹介するゲームの一覧と試遊用の商品が届くと思うから」 |
| 真美 | 「うん、届いたら教えてね」 |
| Ｐ | 「よし、じゃあ先方に連絡してくるから待っててな」 |
| ……… |
| そして1週前の週末… |
| Ｐ | 「亜美、少し早いけど誕生日おめでとう」 |
| みんな | 『おめでとー！！』 |
| 亜美 | 「みんなありがとー」 |
| 事務所にいたみんなでのささやかな亜美の誕生日パーティーが行なわれていた。 |
| 亜美 | 「このケーキっていおりんが買ってきてくれたの？」 |
| 伊織 | 「そうよ。良い店のなんだから、心して食べなさい」 |
| 亜美 | 「うわーいありがと、いおりん」 |
| 雪歩 | 「これは私から、亜美ちゃん」 |
| 亜美 | 「ゆきぴょんありがとー。これは…何だろ？」 |
| 雪歩 | 「亜美ちゃんに似合うかなって思った帽子だよ」 |
| 貴音 | 「亜美、こちらはわたくしからです」 |
| 亜美 | 「お姫ちんからもなの？嬉しいなあ。中身はなになに？」 |
| 貴音 | 「中身は今ではなく、後で開けていただけますか？」 |
| 亜美 | 「分かったー。あれ？兄ちゃんはー？」 |
| Ｐ | 「俺？俺は後でな」 |
| 亜美 | 「えー、今渡してくんないのー？」 |
| Ｐ | 「今はな。あ、真美」 |
| 真美 | 「どしたの？兄ちゃん」 |
| Ｐ | 「今日亜美は俺が預かるから、家の人によろしく伝えておいてくれ」 |
| 真美 | 「え？兄ちゃんと亜美が今日は一緒ってこと？」 |
| Ｐ | 「そういうことだ。親御さんには俺から一応連絡入れておいたけど、念のためにさ」 |
| 真美 | 「分かったよん。じゃあ亜美のことよろしくね」 |
| 亜美は気付かなかったが、その時貴音と伊織の顔は少し紅く染まっていた。 |
| 亜美 | 「ねえねえケーキ切るナイフはー？」 |
| 伊織 | 「あ、ああ！そうね。プロデューサー、早く持ってきなさいよ」 |
| その日、亜美は家に帰ることは無かった。ただ、某所では… |
| 亜美 | 「兄ちゃん、このお姫ちんから貰ったの…似合ってるー？」 |
| とか |
| 亜美 | 「亜美の初めて…兄ちゃん優しくしてね…」 |
| などと、雀が鳴く頃まで亜美の甘い声が響き渡っていたらしい… |
| ……… |
| そして誕生日前日… |
| 真美 | 『やったー！勝ったー！』 |
| どうやら紹介していたゲームを司会者同士で対戦していたようだ。 |
| 男司会 | 『なかなかやるね、双海さん。練習とかして来たのかい？』 |
| 真美 | 『うん。結構いっぱいやってきたよ』 |
| 男司会 | 『僕もやってきたつもりだったけど、敵わなかったな』 |
| 真美 | 『じゃあこの賞品の非売品の人形は真美の物だねっ』 |
| 男司会 | 『うーん欲しかったけど、負けちゃったから仕方ないか』 |
| 真美 | 『………』 |
| |
| Ｐ | 「なかなか相手との息もぴったりだな真美」 |
| プロデューサーはそんなステージを横から見ていた。 |
| Ｐ | 「まあ俺もあのゲームは長時間対戦させられたからな…」 |
| どうやらプロデューサーが練習台にさせられていたようだ。そこに… |
| スタッフ | 「すみません、双海真美さんの関係者の方ですよね？」 |
| スタッフがやってきた。 |
| Ｐ | 「あ、はい。プロデューサーの○○です」 |
| スタッフ | 「このケーキなんですけど…次のゲームの時にサプライズで出そうと思うのですがどうでしょう？」 |
| Ｐ | 「今ですか？サプライズって…大丈夫なんですか？」 |
| スタッフ | 「次のゲームがちょうど………という感じのものでして」 |
| Ｐ | 「なるほど…あちらの△△さんはその演出を知っているのですか？」 |
| スタッフ | 「はい。今回、ちょっとそれで歌の方もお願いしたので」 |
| Ｐ | 「それならば…はい、こちらは構いませんよ。ビックリさせてやってください」 |
| |
| 『………』 |
| 真美 | 『次は音楽系ゲームのこれだよ！』 |
| 画面に効果音とともにゲームのデモ画面が映し出された。 |
| 男司会 | 『続編のこのゲームは、自作曲の上に別売りのマイクで声を重ねられるんだ』 |
| 真美 | 『シンガーソングライターだっけ？そんな感じになれるんだね』 |
| 男司会 | 『ゲーム内の曲は全部カラオケもあって、その上に重ねることもできるんだよ。例えばこんな感じで…』 |
| そのスピーカーから流れてきたのはその司会者の男の人の歌声で… |
| ♪Happy birthday to you, Happy birthday to you. Happy birthday Dear Mami-san Happy birthday to you...♪ |
| 真美 | 『えっ…』 |
| 男司会 | 『双海さん、明日だけど誕生日おめでとう』 |
| 真美 | 『ええーっ！？あ、ありがとっ△△さん！』 |
| 驚きと興奮が隠しきれない様子の真美。 |
| 男司会 | 『このゲームの発表が今日だったから、お祝いが今日になっちゃったのはゴメンね』 |
| 真美 | 『ううん、ビックリしただけだよん。でもありがとう！』 |
| そこにスタッフの手でケーキが運ばれて来た。 |
| 男司会 | 『双海さん、ほらローソク消して消して』 |
| 真美 | 『うんっ』 |
| フーーーーー |
| 消されていくローソクの炎。 |
| 観客 | 『『『おめでとー！！』』』 |
| 真美 | 『ありがとー！』 |
| 会場にいた観客からも、お祝いの言葉が投げられていたという… |
| ……… |
| その日のイベントが終了して、ホテルへの道… |
| Ｐ | 「真美、今日のイベント司会はどうだった？」 |
| 真美 | 「びっくりしたよ、だってあんなところでお祝いなんて聞いてなかったもん」 |
| Ｐ | 「俺だって、あれ出す直前で聞かされたんだ。最終的にOK出したのは俺だけどさ」 |
| 真美 | 「でもありがと。お客さんみんなからも祝ってもらえて嬉しかったよ」 |
| Ｐ | 「だよなあ。よし、じゃあ挨拶も終わったしとりあえず宿に行くか」 |
| 真美 | 「そだね。明日もあるから…ね」 |
| Ｐ | 「でも明日は日曜だから今日以上にお客さんも多いかもな」 |
| 真美 | 「じゃあ兄ちゃんにしっかり癒してもらって、エネルギー注入してもらわないとかな」 |
| Ｐ | 「そうだな…って俺がどうやって真美にエネルギー注入するんだ？」 |
| 真美 | 「だって、先週亜美にエネルギー注入したっしょ？」 |
| Ｐ | 「先週って…亜美の誕生日パーティーの日か」 |
| 真美 | 「あの日…結局亜美が帰って来なかったけど、その後さ…今まで以上に元気してたんだ」 |
| Ｐ | 「そうなのか？」 |
| 真美 | 「それから何か真美とは違う世界を見たって感じがして…前とはちょっと違って見えた」 |
| Ｐ | 「一番近くにいる真美がそういうならそうなんだろうね」 |
| 真美 | 「あのさ…兄ちゃん、あの日に亜美に何かしたんだよね？」 |
| そこで真剣な眼差しを向けた真美。 |
| Ｐ | 「…ああ、それは否定しない」 |
| その雰囲気に圧されてプロデューサーの言葉も重くなった。 |
| 真美 | 「双子って不思議でね、離れてても色々シンクロしちゃうことがあるんだ」 |
| Ｐ | 「何かを感じ取ってたってことか？真美」 |
| 真美 | 「うん…」 |
| すっかり俯いてしまった真美。そして意を決したように話を切り出した。 |
| 真美 | 「あ、あのさ兄ちゃん」 |
| Ｐ | 「何だ？真美」 |
| 真美 | 「後で…真美のお願いを聞いて欲しいな」 |
| Ｐ | 「…分かったよ。向こうで落ち着いてからね…」 |
| 二人はそれからは無言になってホテルへと向かっていった… |
| ……… |
| 食事やお風呂も終わってもう寝るだけと落ち着いた二人。 |
| 真美 | 「初めてだよね…兄ちゃんとこうして二人きりって」 |
| Ｐ | 「そうだな…今までそういう機会も無かったし」 |
| 二つあるベッドのうち、片方のベッドの上で並んで座って話している。 |
| 真美 | 「こんな近くで兄ちゃんの温もりを感じたの初めてかも」 |
| ぴとっ |
| 真美はそっとプロデューサーへと寄り添った。 |
| Ｐ | 「確かにこんな真美に近くに寄り添われるのは初めてだもんな」 |
| 真美 | 「兄ちゃんの温もり…鼓動も…感触も…気持ちいいよ」 |
| Ｐ | 「そ、そう言われると少し恥ずかしいな。でも真美のも気持ちいいさ」 |
| 真美 | 「ありがと…兄ちゃん」 |
| Ｐ | 「こちらこそありがとな、真美」 |
| 真美 | 「この感触…今日は真美が一人占めにしていいんだよね？」 |
| Ｐ | 「今日はな。今日だけは真美のためにこうして二人きりにさせてもらったんだ」 |
| 真美 | 「それならさっき言ってたお願い、聞いてほしいな」 |
| Ｐ | 「そうか…ああ、何だ？」 |
| 真美 | 「お願い兄ちゃん…」 |
| 真美は少し頬を紅く染めて… |
| 真美 | 「あの日の亜美みたいに、真美に兄ちゃんの感触を刻み込んでよ…」 |
| Ｐ | 「何をしたか、分かってるんだよな？真美」 |
| 真美 | 「ちゃんと後で亜美に聞いたんだ。あと、やよいっちにも誕生日のこと聞いてみたら、答えてくれたんだよ」 |
| Ｐ | 「そうか…真美、絶対に後悔しないな？」 |
| それに答える間もなく… |
| チュゥッ |
| 真美の唇はプロデューサーの唇を塞いでいた。 |
| 真美 | 「兄ちゃん、これが真美の答え」 |
| 翌日、司会をやる真美のその姿には以前とはどことなく違う何かが滲み出ていたという… |
Happy Birthday!! Mami FUTAMI.