ここはある日の小鳥のマンション。 |
小鳥 | 「これで良しっと…フフフ、さてっと来るまでどうしようかしら」 |
何やら家主が準備をしているようだ。 |
小鳥 | 「でもどうしたのかしら…結構慌ててたわよね」 |
ベッドの用意が済んでいる、つまりは誰かが泊まりに来るようだ。 |
小鳥 | 「だけどプロデューサーさんは、千早ちゃんとかと長期の遠征だし…」 |
そこに… |
Ding Dong♪ |
部屋に響き渡る呼び鈴の音。 |
小鳥 | 「あ、来たわね。はーい」 |
小鳥は玄関まで出迎えに行った。 |
カチャッ カチャッ ガチャッ |
玄関の鍵を開けるとそこにいたのは… |
真美 | 「ピヨちゃん、こんにちはー」 |
小鳥 | 「真美ちゃん、上がって」 |
真美 | 「うんっ」 |
その来客とは真美のことであった。 |
バタンッ |
真美を入れてドアが閉められた。 |
真美 | 「でも本当に急でゴメンね」 |
小鳥 | 「どうしたの?ずいぶんと慌ててたみたいだけど…」 |
真美 | 「あのね、亜美がちょっとね…………だから…………ってことなんだ」 |
小鳥 | 「ええっ!?それは大変ね!亜美ちゃんは大丈夫なの?」 |
真美 | 「来る時見てきたけど、その時は割と落ち着いてたかな…でもまたぶり返すかもしれないって」 |
小鳥 | 「そうなのね…分かったわ。暫くは自分の家だと思って使っていいわよ」 |
真美 | 「うん、でもゴメンねピヨちゃん」 |
小鳥 | 「いいのよ、こういう時に協力できなくてどうするの」 |
真美 | 「ありがと…」 |
ギュッ |
真美は小鳥に抱きついた。 |
真美 | 「こういう時に頼れる大人の人がいて良かったよ…」 |
小鳥 | 「真美ちゃん、そうとう切羽詰ってたのね」 |
真美 | 「うん…だってこの時期だから友達もさすがに無理って言われちゃったから…」 |
今は12月も下旬になりかけで師走と言うだけあって、真美も友人などへ手は尽くしたのだがダメだったようだ。 |
小鳥 | 「そうよね、今はみんな忙しいもの」 |
真美 | 「それに風邪も流行ってるもんね」 |
小鳥 | 「うちも春香ちゃんにあずささんがやられちゃったものね」 |
真美 | 「ピヨちゃんは大丈夫?」 |
小鳥 | 「私は大丈夫よ。みんなほどではないけれど、私も声は使う仕事でしょ」 |
真美 | 「あ、そっか」 |
小鳥 | 「じゃあそろそろお昼ご飯にしましょ。もうお腹空いたでしょ?」 |
真美 | 「うん、もうお腹ペコペコだよー」 |
小鳥 | 「もう準備はしてあるから、一緒に食べましょ。荷物は私の寝室に置いて」 |
真美 | 「うんっ」 |
小鳥 | 「あ、持ってきた着替えは何日分?」 |
真美 | 「えっと…一応一週間分かな。亜美の方が長引きそうなら洗濯したり取りに戻ろっかなって思ってるから」 |
小鳥 | 「洗濯は私と一緒でいい?」 |
真美 | 「いいよー。それじゃああらためて…しばらくよろしくお願いね、ピヨちゃん」 |
小鳥 | 「こちらこそ何もお構いできないけれど、暫くは自分の家だと思って使って」 |
……… |
その夜… |
真美 | 「ふう…気持ちいいー」 |
小鳥 | 「お湯加減はどうかしら?」 |
真美 | 「このくらいで大丈夫だよ。それにしてもピヨちゃんって…」 |
小鳥 | 「え?」 |
ツンッ |
小鳥 | 「ひゃんっ!」 |
真美は向かい合って湯船に浸かっていた小鳥の胸を突いた。 |
真美 | 「やっぱり胸がばいんばいんだね」 |
小鳥 | 「ブッ!な、何を言ってるの真美ちゃん」 |
思わず噴出してしまった小鳥。 |
真美 | 「見た感じ、律っちゃんにも引けはとらないんじゃないかなー」 |
小鳥 | 「え、えっと…」 |
真美 | 「その胸って…やっぱり兄ちゃんに大きくしてもらったの?」 |
小鳥 | 「も、もー!真美ちゃん」 |
小鳥の顔は恥ずかしさからかすっかり紅く染まっている。 |
真美 | 「あ、紅くなってるー」 |
小鳥 | 「もう、大人の人をあんまりからかっちゃダメよもう…」 |
真美 | 「でも、そうなんだ」 |
小鳥 | 「そうかも…しれないわ」 |
真美 | 「あ、そうだ。ねえ、ピヨちゃんにとって兄ちゃんってどんな人?」 |
小鳥 | 「…え、えっとそうね…守られたくてそして守りたいと思う人…かしら」 |
真美 | 「そうなんだ…兄ちゃんもピヨちゃんも優しいもんね」 |
小鳥 | 「そ、そうかしら?」 |
真美 | 「そうだよ。そんな二人に見守ってもらえてこうやって活動できるって…幸せなんだな真美」 |
小鳥 | 「真美ちゃん…」 |
真美 | 「じゃあピヨちゃんにとって、真美ってどんな子?」 |
小鳥 | 「えっ…」 |
真美 | 「真美、ピヨちゃんにどう思われてるのかな…って」 |
小鳥 | 「そうね…」 |
ツツツツツ |
小鳥は指で真美の頬を撫でた。 |
小鳥 | 「面白くて優しくて健気で、それから…」 |
真美 | 「それから?」 |
小鳥 | 「とっても可愛い女の子よ」 |
真美 | 「えっ…そっかな?」 |
小鳥 | 「可愛いって、顔とか容姿だけじゃないの」 |
真美 | 「それって…」 |
小鳥 | 「醸し出す雰囲気とか秘めている気持ちとか、色々なことを全部含めてなのよ」 |
真美 | 「そっか…でも良かった」 |
小鳥 | 「どうしたの?」 |
真美 | 「何だか自分に…ちょっと最近自信が無かったのかな」 |
小鳥 | 「真美ちゃん…やっぱりそうだったのね」 |
真美 | 「え?ピヨちゃん分かってたの?」 |
小鳥 | 「普段みんなを見ているから分かるのよ。最近の真美ちゃん、少し消極的な感じも見えてたわ」 |
真美 | 「あー、すっかり見破られてたんだ」 |
小鳥 | 「今の気分はどう?」 |
真美 | 「んー…うん、何かこうやって話してたらちょっとスッキリしてきたよ」 |
小鳥 | 「それなら良かったわ。真美ちゃん、聞いて欲しいことがあったらここにいる間なら…ね」 |
真美 | 「ありがとピヨちゃん…ううん、この家では小鳥お姉ちゃんって呼ぼうかな」 |
小鳥 | 「フフフ…そう呼ばれると少しくすぐったい感じね。じゃあ私は真美って呼ぼうかしら」 |
真美 | 「う…うん、真美はそれでいいよ。じゃあよろしくね、小鳥お姉ちゃん」 |
小鳥 | 「…ええ、真美」 |
真美が自宅に戻った日、『何だか真美が少し違う感じがする』と言われたのはまた別の話である… |