とあるお休みの日のこと… |
小鳥 | 「プロデューサーさん、これにしましょうよ」 |
P | 「これですか…」 |
小鳥 | 「あれ?どうしたんです?」 |
P | 「いや、ちょっと…」 |
小鳥 | 「あー!もしかしてプロデューサーさんって実は…」 |
P | 「お察しの通りでございます、小鳥さん」 |
小鳥 | 「それならそうと早く言ってください、もう」 |
P | 「だって、そう思われるのが嫌だったんで…」 |
小鳥 | 「じゃあ、あっちのなら大丈夫ですよね?」 |
P | 「はい、大丈夫ですよ」 |
小鳥 | 「それじゃあ時間はっと…そっちもあと1時間くらいですか」 |
P | 「うーん、△が付いてますしもう券を買っておいた方が良さそうですね」 |
小鳥 | 「それなら先に券を買ってから食べ物とかを買っちゃいましょ」 |
……… |
そして映写室の中へ… |
P | 「本当に満席みたいですね」 |
小鳥 | 「この映画、静かにですけどブームになっていたみたいですから」 |
P | 「そうなんですか?知らなかったですよ」 |
小鳥 | 「プロデューサーさん、芸能関係者なんですからその辺も押さえないとダメですよ」 |
P | 「…はい、善処します」 |
小鳥 | 「よろしい。それで席は何番でしたっけ?」 |
P | 「えっと、○−XXですからあの辺ですね」 |
小鳥 | 「もうすぐ始まるので座っちゃいましょ」 |
P | 「そうですね」 |
……… |
小鳥 | 「んっ…」 |
小鳥が映画に涙していると… |
サッ |
すぐにハンカチを差し出すプロデューサー。 |
コクンっ |
そのハンカチを一つ頷いて受け取る小鳥。 |
小鳥 | 「…(ありがと)」 |
P | 「…(どういたしまして)」 |
もう既に言葉は無くとも通じ合える仲のようだ。 |
そんな小鳥はプロデューサーの方を見て、何やら思案し… |
ポンっ |
ひじ掛けに載せていたプロデューサーの手に、そっと自分の手を載せた。 |
P | 「…(小鳥さん、そんな急に…)」 |
小鳥 | 「…(フフ、恥ずかしいんですか?)」 |
P | 「…(でも、こんな所でなんて)」 |
小鳥 | 「…(ほら、周りだってやってるじゃないですか)」 |
そんな心のやり取りをしながら、二人は映画の時間を過ごしていた。 |
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映画も終わり… |
小鳥 | 「ふう…泣けましたね、プロデューサーさん」 |
P | 「確かにあのヒロインの演技には、引きこまれるものがあった気がします」 |
小鳥 | 「展開としてはちょっとベタでしたけど、役者の演技力がカバーしてたと思うわ」 |
P | 「さすがは小鳥さん、なかなかの観察眼だなあ」 |
小鳥 | 「それはもう…ってちょっとお腹空きません?」 |
P | 「確かに、買って入るって言ってもそんなに買いませんでしたしね」 |
小鳥 | 「それならこの近くに良い店を知ってるんですけど…どうでしょう?」 |
P | 「そのお店の相場によりますけど…」 |
小鳥 | 「んー、こんなくらいかしら」 |
指の本数で数字を表す小鳥。 |
P | 「それくらいならいいですよ」 |
小鳥 | 「分かりました、それじゃ案内しますから…」 |
プロデューサーへと手を差し出す小鳥。 |
ギュッ |
その手をそっと握ったプロデューサーなのであった。 |
P | 「ここからどれくらいの距離です?」 |
小鳥 | 「そうですね、15分くらいでしょうか」 |
P | 「ちなみに何料理なんです?」 |
小鳥 | 「東南アジア系で、面白い味ですよ」 |
P | 「なるほど…それは楽しみだな」 |
小鳥 | 「早くしないと、けっこう狭い店ですぐ埋まっちゃうんで行きましょ」 |
P | 「はい」 |
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P | 「へえ、こんな路地裏にあったんですね」 |
小鳥 | 「だから『知る人ぞ知る』ってとこですから」 |
P | 「なるほど、こういう店を知っておくのもいいですね」 |
小鳥 | 「今度もっと色々教えちゃいますね、それじゃ入りましょ」 |
チリンチリンチリン |
店員 | 『イラッシャイマセー』 |
いかにも片言の日本語しか話せなさそうな東南アジア系の人に出迎えられ、その店へと入った。 |
……… |
P | 「小鳥さん、ここでのおススメは何です?」 |
小鳥 | 「そうですね…マスター!今日のおススメは何ですー?」 |
マスター | 『今日はベトナムの春巻きがおススメだよー』 |
小鳥 | 「ということらしいですよ、プロデューサーさん」 |
P | 「それじゃあ…と言いたいところですが、小鳥さんにお任せします」 |
小鳥 | 「それなら、このセットとこのセットにして半分ずつにしません?」 |
P | 「いいですね、そうしましょう」 |
小鳥 | 「すいませーん!このセットとこのセットを1つずつお願いしますー!」 |
マスター | 『へーい!』 |
……… |
P | 「なるほど、やっぱり和食とは一味も二味も違いますね」 |
小鳥 | 「この味付けが癖になりません?」 |
P | 「確かにちょっと癖がありますけど、それもまた良いアクセントで」 |
小鳥 | 「でしょ?でも良かった、プロデューサーさんをここに連れてこれて」 |
P | 「あ、小鳥さんのそれ貰っても良いですか?」 |
小鳥 | 「はい。じゃあプロデューサーさんのそれ、貰っちゃおっかな」 |
P | 「どうぞ…あーん」 |
プロデューサーは箸で一口分を持って、小鳥の口へと差し出した。 |
小鳥 | 「へ?え、ええっ!?いいんですか?」 |
P | 「ダメなわけないじゃないですか、ほらアーン」 |
小鳥 | 「それなら、アーン…うん、酸味がこの仄かな甘みと調和して美味しいわ。それじゃあお返しに、あーん」 |
小鳥も箸で一口分を持って、プロデューサーの口へと差し出した。 |
小鳥 | 「アーン…ん、この歯ごたえがなかなか凄いですね」 |
…周囲の冷やかしの視線に、その後そそくさと会計を済ませ帰ったのは言うまでもない… |