Wash up Ringing(打ちあがる響き)

ここはある日の事務所…
「ええっ!?自分がか!?」
「ああ、今週のピンチヒッターを頼まれて欲しいんだ」
「うーん、予定はどうなんだ?」
「オーディションは日曜日だな。春香はオフ、真は俺が雪歩と美希とで連れて行く」
「え?じゃあ自分と亜美は誰が連れてってくれるんだ?」
「律子もやよいと仕事だから、小鳥さんになると思う」
「ピヨ子かー、了解。それで本当に自分でいいのか?」
「ああ。他にできそうなのがいないからな、しかも真の代わりとなるとさ」
「よし、相方のために一肌脱いでやるぞ」
「ありがとな、響。これから時間はあるか?」
「ん?今日は自主トレのために来たから、別に大丈夫さ」
「それなら今日この件についての打ち合わせもいいか?」
「そういうことか。うん、今からでもいいぞ」
「じゃあちょっと待っててくれないか?書類持ってくるからさ」
「どこで待ってればいいんだ?」
「えっと…あ、そこの打ち合わせ用のテーブルに掛けててくれ」
「はいさーい」
 
「…それでこうなるんだけどどうだ?」
「あのさ、自分が真のコーナーやるってことか?」
「なるべく亜美のコーナーは多めにとるけど、さすがに人気コーナーだからやらないわけにもいかないんだ」
「自分、そういう声出すの…恥ずかしいぞ」
「そこを何とか頑張ってくれ。そういえば響のそういうのってあまり聞かないな」
「普段からそういうの出さないでやってるからさー」
「今回はイメージを変えるチャンスかもしれないぞ?」
「そういうイメージは…お断りしたいぞ」
「そうか?」
「自分はまだこのスタンスでいきたいさ」
「まあそれならそれでいいけどさ、でもコーナーはやってもらうからな」
「うー、分かったさ」
「あとは…」
そこに…
ガチャっ
亜美「おっはよーん!兄ちゃん。あ、ひびきんも」
真美「兄ちゃん、ひびきん、おっはー!」
「お、おはよう亜美、真美」
「はいさーい、亜美、真美」
「二人とも今日はどうしたんだ?」
亜美「え?だって今日は午後から衣装合わせって言ったっしょ?」
真美「真美は夕方から千早お姉ちゃんとレッスンだよん」
「おお、そうだったな亜美…あ、じゃあまだ時間あるな」
亜美「どしたの?兄ちゃん」
「来週末のラジオの打ち合わせだ」
亜美「来週末って…あれ?まこちんはどしたの?」
「美希と雪歩との仕事が入ってな、だからピンチヒッター頼むことになってさ」
亜美「あれ?もしかしてひびきん?」
「そうさー」
亜美「そっかー。で、ひびきんがあのコーナーやんの?」
「一応短いけどやってもらうことにしたぞ」
亜美「ってことは、残りは亜美のコーナー?」
「ま、そういうことだ。とりあえず亜美も来た事だしあらためて打ち合わせしようか」
「そだな、プロデューサー」
「そうだ真美、千早は確かボイス自主トレでトレーニングルームにもう来てるぞ」
真美「あ、兄ちゃん了解っ。じゃあ亜美、真美はそっち行ってくるねー」
亜美「うん、いってらー」
バタンッ
真美は何やら思いついたのか笑顔で駆け出していった。
「よし、じゃあ亜美も入れてあらためて打ち合わせするぞ」
亜美「ほいほーい」
「んでさープロデューサー、自分こういうしゃべり方のままでいいか?」
「そうだなあ…いいんじゃないか?真もあの言葉でやってるしさ」
亜美「そだよ、ひびきんが自分って言わないとひびきんらしくないよ」
「そうか?亜美」
亜美「うんうん。だって言葉遣いが違ってる時って、他のみんなでも違う感じするもん」
「それは俺もそう思う。だから響はそのままでいいと思うよ」
「そっか…じゃあ自分はこのままでいくぞ」
「あ、でも真のコーナーの時だけはちゃんと合わせてな」
「それは仕方ないさ…あのコーナーはなあ…」
亜美「ひびきんの甘い声聞くの楽しみだー」
「うう…自分本当にやらなきゃダメか?」
「まあ仕方ないと思って諦めてくれ」
「分かったけどさー…」
「仕方ないな、番組終わったら何かしてもらうように小鳥さんに頼んでおくから」
「…いいのか?」
「それくらいはお礼も兼ねてやらないとだろ?」
亜美「兄ちゃん、亜美にはー?」
「亜美はレギュラーなんだから」
亜美「ちぇー」
「でも今回は一緒に何か食べるなりしてもらってくれていいぞ」
亜美「わーい、やっぱり兄ちゃんは兄ちゃんだー」
「さて、あとは亜美のコーナーについてだけど………」
………
ポーン♪
亜美「双海亜美と…」
「我那覇響の…」
亜美・響『空のなないろ!』
♪〜
二人のタイトルコールで今週も番組が始まった。
亜美「2時になったよー。ラジオの前の皆さんこんにちはー。今週は双海亜美と…」
「菊地真のピンチヒッターで我那覇響がお送りするぞー」
亜美「えっと先週言ってた通り、まこちんは今週はお休みだよ」
「真は今は確か…雪歩と美希と一緒にキャンペーンで京都に着いた頃かな?」
亜美「あーひびきん、そんなこと言うと関西で聞いてるリスナーの人がそっち行っちゃって、これ聴いてくれなくなっちゃうよー」
「う…まあそれはそれさ。えっと、今日の空のなないろのメールテーマは『わたしはこれが明けました』だぞ」
亜美「生放送だから今からでもお便り間に合うよー」
「FAXは〜〜〜〜、メールは〜〜〜〜〜。携帯からも大丈夫さ。お便りが読まれた方には番組特製ステッカーをプレゼントしてるぞ」
亜美「今週は欲しい人はひびきんのサイン付きだよん」
「サインが欲しい人はそれもちゃんと書いてきてねー」
亜美「それじゃあ今週も4時までの2時間、ラジオの波が私達とリスナーの…」
「七色の架け橋になりますように…」
2時間後、やり切って抜け殻になった響の姿がそこにはあったという…
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あとがき
どもっ、飛神宮子です。
響と亜美、この二人だけだと実は初めてです。
代打とは言え2時間の生放送、甘いコーナーもやらされるなんて初めてには重いものでしょう。
自分に務まるかの不安、そして緊張…最後は打ち上がったように抜け殻になってしまうと思います。
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2012・07・24TUE
飛神宮子
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