I Rest her Head Against my arm(腕枕)

ここはある日の765プロの練習スタジオ…
「ほら、また脚が下がってるぞ」
「そ、そんなこと言われてももう疲れてぇ…」
「これ1回やったら休憩にするから頑張って」
「は、はいぃぃ…」
 
「もうだらしないぞ愛」
「こんな厳しいなんて思ってなかったんですっ…」
元気に受け答えしているようで、バテバテになっている愛。
「本当に真さんについていくだけで精一杯です」
「そうだなあ…どこか動きが甘いのかな?」
「そうですか?」
「うん、無駄な動きが多いのかもしれないな…ほら」
ぎゅむっ
真は壁に手を付いて立っていた愛の右脚を持ち上げた。
「うあんっ!」
「あ、だ、大丈夫?」
「はい、ちょ、ちょっとバランスが取れなくなっちゃいそうだったんです」
「ほら、やっぱりそうだ」
「へ?」
「バランスが取れないってことは、身体の軸がちょっと傾いてるんじゃないかな」
「そうですか?」
「ちょっと片足で立ってみて」
「え?あ、はい…こうですか?」
愛は抱えられていなかった足で立った。
「はい、それで目を瞑って」
「目ですか?」
愛は言われるがままに目を閉じた。
「30秒、そのままだよ」
「はい…………あれ?あれ?どうして…グラグラしてきてえええっ!?」
「まだ半分しか経ってないよ」
「そんなこと言われて…うわわあっ…!」
「おっと!」
どんっ
真は愛の身体を押さえ切れずにそのまま…
「うわあっ!」
どさんっ
愛が真に覆いかぶさる形で倒れた。
「ま、真さん、すみませんっ!」
「ご、ゴメン、押さえられなくて」
「そんなあ、アタシが悪いんですから。すぐ起きますね…その、恥ずかしいですっ」
「あ、う、うん。この体勢はちょっとね…」
愛は真の横へとその身体を転がした。
「うう…あんなにバランスが取れてないなんて…」
「そんなもんだよ。ほら、床に寝てると髪汚れちゃうよ」
真は愛の頭の下に腕を差し出した。
「え、いいんですか?」
「いいんだよ、ほら」
「はい、じゃあ…」
ぽふっ
愛は真の腕に頭を載せた。
「フフフ、何かこうしてもらうって照れちゃいますねっ」
「うーん、ボクもちょっと恥ずかしいけどね。でもこういう体勢になっちゃたしさ」
「でも何だか慣れてる感じがします」
「う…そう言われると否定できないかも…」
「そうなんですか?」
「そういう役回りって言うのかな、うちの事務所を見れば分かるよね?」
「何となく…わかる気がします」
「雪歩とか美希とか、あとたまにせがまれて他の人にもやったりしてるなあ」
「やっぱり少し鍛えてるんですね」
「あ、分かる?」
「ちょっと他の人の腕枕と違う感じがします」
「もともとトレーニングとか運動は好きだったからさ」
「そうですよね、涼さんからも絵理さんからも聞いてます」
「だからちょっと筋肉が多いかもね、女の子としては恥ずかしいけど」
「そんなことないですっ、かっこいい真さんを司ってるんですから」
「かっこいい…かあ…」
「あ、でも…こんなこと言っていいのか分からないですけど…」
「ん?」
「こういうの気にするところって、何だか可愛いですっ」
「う…い、言ってくるじゃないか愛も」
「す、すみませんっ!」
「いや、いいんだけどさ」
「でも、真さんってそう見えてやっぱり女性って感じがします」
「そうかな?」
「涼さんとは違う薫りっていうんですか?それを感じます」
「ああ、そっか。身近に男の子がいるんだよね、愛のとこは」
「それに…」
「それに?」
つんっ
「ひゃあんっ!?あ、愛っ!!」
愛は何やらつついたようだ。
「アハッ、この感触、涼さんにはありませんから」
「それはそうだろうけど…さあ」
「でも涼さんより身体が鍛えられてる感じはしますっ」
「スポーツは大好きだしさ、そうなるかもしれないな」
「今日だってこっちに来る時に自分の事務所に寄った時も、だらしなくしてましたよ」
「ああ、今度は涼も鍛えてくれって言われてたんだよなあ…」
「そうなんですか?」
「もう少し男の子らしくしてくれってさ。でも女の子のボクに頼むって本当は変だよね…」
「あ、そういえば涼さんは別のこと言われてた気がします」
「え?」
「真さんのこと、女の子らしくしてって。確か社長がそう言ってました」
「うう…ドラマでそういう配役で一度やったけど…」
「涼さん、楽しみにしてましたよ。今度はドラマじゃなくて現実で真さんとこういうことできるって」
「ああ、分かった。それについてはよろしく言っておいて」
「はーい」
「よーし、そろそろ続きやるよ?」
「はいっ」
愛は笑顔で先に起き上がって、真の腕を優しく引っ張っていた…
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あとがき
どもっ、飛神宮子です。
真と愛、これまた難易度が高い組み合わせでした。
腕枕って自分で相手にすると痺れますけど、してもらうと気持ちがいいものですよね。
とは言っても、する相手は…実際にはいませんけどね(悲)
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2012・07・18WED
飛神宮子
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