ここはある日のレコーディングスタジオ… |
P | 『うーん…真、ちょっと休憩いれるかー?』 |
ブースの外でプロデューサーが何やら難しい顔をしていた。 |
真 | 「んー…時間って大丈夫なんですか?」 |
P | 『今日は大丈夫だぞ。曲数も多いから1日取ってあるからな』 |
真 | 「じゃあちょっと入れさせてくださーい」 |
カチャッ バタンッ |
真がヘッドホンを置いてブースの中から出てきた。 |
P | 「どうした真、何か気が入ってないというか…なあ」 |
真 | 「よく分からないんですけど…何だか気分が上手く乗らなくて…」 |
P | 「いつもよりリズム感というか声質というか、何か足りない感じだよな」 |
真 | 「自分でも何か違うって分かってるんですけど…」 |
P | 「やっぱり少し気分を変えた方がいいな。どれくらい必要だ?」 |
真 | 「うーん、どれくらいまで大丈夫ですか?」 |
P | 「とりあえず1時間…精々2時間だな。どっか出るのか?」 |
真 | 「ちょっと出てきます。何かそれで変わるかもしれないんで」 |
P | 「ああ、気をつけるんだぞ。戻ってくるときは携帯に連絡をくれ」 |
真 | 「はーい」 |
真は部屋の外へと出た。と、その時… |
響 | 「くあー!疲れたー!遅くても2時間で戻ってくるさー!」 |
隣の部屋から出てきた何やら聞きなれた声の女の子… |
真 | 「あれ?もしかして…」 |
その声に気付いたのかその女の子も真の方へと振り向いた。 |
響 | 「ん…?あーっ!」 |
真 | 「やっぱりー!?」 |
響 | 「ど、どうして765プロの真がこんなところにいるんだよ!」 |
真 | 「どうしてってそれはこっちのセリフだよ!」 |
響 | 「まったく、真とこんなところで会うなんて…で、何してるんだ?」 |
真 | 「ここにいるなら決まってるじゃないか。響は?」 |
響 | 「自分もCDの収録さ」 |
真 | 「………」 |
響 | 「………」 |
真 | 「ま、そっか。ここに来てるのにそれ以外のことは無いだろうし」 |
響 | 「で、何してるんだ?」 |
真 | 「どうも気分が乗らなくって休憩取っただけだけど。響は?」 |
響 | 「自分もさー。社長から何回もダメ出し食らったんさー」 |
真 | 「お互い様ってところなのか」 |
響 | 「それで、これからどうするんだ?」 |
真 | 「どうしようかなあ…気分変えて来いって言われたしさ」 |
響 | 「自分もだけど…」 |
真 | 「………」 |
響 | 「………」 |
言葉が無くなる二人。 |
響 | 「とりあえずどっか行くか?」 |
真 | 「ボクが響と?」 |
響 | 「しょうがないだろ、ここで会っちゃったんだからさー」 |
真 | 「でもどこに行く?」 |
響 | 「そんなこと言われても…こういう時は気晴らしだな」 |
真 | 「気晴らしかあ…」 |
響 | 「………よし、行くぞ真」 |
真 | 「え?どこに?」 |
響 | 「付いてくれば分かるさ。だから早く」 |
真 | 「う、うん…」 |
……… |
バタンッ |
響 | 「じゃあ1時間しかないからバンバン歌うぞ真」 |
真 | 「そうだね、もうこうなったら気晴らしに歌おっと」 |
そう、二人は近くのカラオケボックスへと来たのである。 |
響 | 「じゃあまずは…自分はこれで行くか。真は?」 |
真 | 「ちょっと待って…じゃあボクはこれにするかな」 |
響 | 「しっかしまさか真とこんなところに来る事になるとはなー」 |
真 | 「ボクだってそうだよ。あんなところで響と鉢合わせするなんて思わなかったよ」 |
響 | 「あ、そうだ。このカラオケって…得点機能あったっけ」 |
真 | 「えっと…うん、あるみたいだけど…勝負する?」 |
響 | 「どうせ遊びみたいなものだけど、少し勝負するか?」 |
真 | 「よし、受けて立とうじゃないか」 |
響 | 「じゃあ4本…いや、時間的に5本勝負で大丈夫だな。総得点が多いほうが勝ちな」 |
真 | 「オッケー、じゃあちょっと設定変えて…これで大丈夫なはず」 |
響 | 「じゃあ自分から、聞いて腰抜かすなよな」 |
真 | 「そんなこと言って、そっちこそね」 |
響 | 「へへーんだ。自分がそんな風になるわけないさー」 |
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真 | 「はあ…全力で歌い切ったけど…どうかな」 |
画面には76点と表示された。 |
真 | 「あー、途中でミスしたのが響いたなあ…」 |
響 | 「これで5曲ずつだな…真に76点足して…」 |
真 | 「どうなった?」 |
響 | 「え?あ…」 |
真 | 「どうしたの?響」 |
響 | 「自分、計算間違ってないよな。真、見て」 |
真 | 「いいけど…本当だ。どうする?2曲目引き分けで2勝2敗だし…」 |
響 | 「最高得点も94点で同じなんだぞ…」 |
真 | 「じゃあ引き分けってことでいいかな?」 |
響 | 「そうだな。何かこうやって歌ったらすっきりしたさ」 |
真 | 「ボクもだよ。思い切りシャウトしたら気分が晴れたよ」 |
響 | 「…自分たちって敵同士なのにな」 |
真 | 「敵同士だったからじゃない?対抗心でさ」 |
響 | 「そっか…あ、真のっていつ発売だ?」 |
真 | 「えっと確か来月の…○日かな」 |
響 | 「自分と同じじゃないか、自分も確か○日だって」 |
真 | 「それは言われてる。ぶつけに行ったって言われたんだ」 |
響 | 「本番の勝負も負けないからな」 |
真 | 「こっちだって全力出して行くよ」 |
響 | 「でも…こうしている時間も何だか…悪くない気がするさ」 |
真 | 「うん…響とこうしてちゃんと話す機会も無かったからね」 |
響 | 「社長に怒られるかもしれないけど、またタイミングが合ったらどうだ?」 |
真 | 「うん…ボクもプロデューサーに何言われてもいいや、楽しかったしさ」 |
響 | 「じゃあお金払ってスタジオ戻るか真」 |
真 | 「そうだね、この勝負はまた次回にお預けってことでさ」 |
響 | 「そうだな。また今度な」 |
気分転換が済んだ二人は、その後それぞれ一発OKを繰り返したという… |