ここはある日の765プロ事務所… |
Ding dong♪ |
765プロ事務所の呼び鈴が鳴り響いた。 |
小鳥 | 「はーい、どちらさまでしょう?」 |
涼 | 『こんにちはー、876の秋月ですー。例の物を届けに来ましたー』 |
小鳥 | 「はいー、どうぞー」 |
ガチャっ |
一人の少年?が事務所に入ってきた。 |
涼 | 「おじゃましまーす」 |
小鳥 | 「はい…ご苦労さま、秋月さん」 |
涼 | 「音無さん、これで良かったんですよね?」 |
涼は小鳥へと物を渡した。 |
小鳥 | 「ええ、確かに。じゃあそこのソファで休んでいって」 |
涼 | 「え?いいんですか?」 |
小鳥 | 「いいのよ、今日は時間はあるのかしら?」 |
涼 | 「はい。今日は仕事も特に無くて暇だったから」 |
ぽふっ |
涼は導かれるままにソファへと落ち着いた。 |
小鳥 | 「でもゴメンなさいね…ウチの子がそっちに忘れ物したのを届けさせちゃって…」 |
小鳥はひとまずの仕事を終えて給湯室から麦茶をグラスに入れて持ってきた。 |
カタンッ カタンッ |
小鳥 | 「どうぞ、外は暑かったでしょ?」 |
ぽふっ |
小鳥も涼の向かいのソファへと腰を下ろした。 |
涼 | 「ありがとうございます、コクッ…コクッ…はあ…」 |
小鳥 | 「麦茶で良かった?」 |
涼 | 「はい…ふう…」 |
小鳥 | 「でも本当はプロデューサーさんが取りに行ければ良かったんだけど…」 |
涼 | 「どうしたんですか?」 |
小鳥 | 「あの人、出張なの。ちょうど今週1週間出ちゃってて」 |
涼 | 「そうだったんですか。やっぱり人気事務所は大変ですね」 |
小鳥 | 「そんなこと言っちゃって、秋月さんの所ももう人気事務所でしょ?」 |
涼 | 「そんなことないですよ。ここに比べたら僕のところなんて…」 |
小鳥 | 「でも3人ともすっかり人に知られるようなアイドルの仲間入りしちゃってるわ」 |
涼 | 「そうですか?そう言われると嬉しいです」 |
小鳥 | 「でも秋月さんとは…あのCMの時以来かしら?」 |
涼 | 「うう…思い出させないでくださいよー」 |
小鳥 | 「あの時の恥ずかしそうな恰好…今思い出しても垂涎モノね…フフフ」 |
涼 | 「もう金輪際あんな恰好はしませんよ!」 |
小鳥 | 「そうよね、でも男の子がああいう恰好ってどうだったの?」 |
涼 | 「思った以上にハイレグで…あらためてそういうのに男の人は喜んでいるんだって感じましたよ」 |
小鳥 | 「フフフ、そうね。あのCMの評判はどうだったかしら?」 |
涼 | 「あの後大変だったんですよ。学校の文化祭でもさせられて…」 |
小鳥 | 「そうだったの?」 |
涼 | 「あ…確か…」 |
ピッピッピッ |
涼はポケットから携帯電話を取り出して… |
涼 | 「あ、えっとこれです」 |
その携帯電話を小鳥に差し出した。 |
小鳥 | 「あら…フフフ、そういえばこの衣装って…」 |
涼 | 「あの後、結局貰ったんです」 |
小鳥 | 「そういえば私にも後で送られてきたわね」 |
涼 | 「僕への特注だし、これを今後女の子に着せるわけにもって…」 |
小鳥 | 「いくら女の子の衣装とはいっても一度男の子の薫りが付いちゃうとね」 |
涼 | 「はい。でも持って帰ったところで親には色々言われちゃうし…」 |
小鳥 | 「それでどうしたの?」 |
涼 | 「律子姉ちゃんのところに置かせてもらいました。迷惑そうでしたけど…」 |
小鳥 | 「仕方ないわね…」 |
涼 | 「で、あのCMが大体一週間でみんなに知られちゃって…」 |
小鳥 | 「結構放送していたものね、私も見るたびに恥ずかしかったわ」 |
涼 | 「それで文化祭の時に客寄せ用に着ろと言われちゃったんです」 |
小鳥 | 「その割にこの写真はノリノリね」 |
涼 | 「もうアイドルってことで吹っ切っちゃわないとダメだと思いましたから」 |
小鳥 | 「大変ね、秋月さんも」 |
涼 | 「でもこんなことで泣き言言ってたら務まらないって分かってます」 |
小鳥 | 「そうそう。あ、そうだ…」 |
小鳥は立ち上がって… |
小鳥 | 「えっと…」 |
ファイル棚の所で何やら探し始めた。 |
小鳥 | 「あ、あったわ」 |
小鳥はファイルを一つ持って涼のところに戻ってきた。 |
小鳥 | 「これ、渡そうと思ってたの」 |
涼 | 「あ、これってこの前の四条さんとの写真…」 |
小鳥 | 「何か手違いで全部こっちに送っちゃったって話なの。それで渡してくれって」 |
涼 | 「はい、ありがとうございます」 |
小鳥 | 「ところで貴音ちゃんの水着はどうだったかしら?」 |
涼 | 「う、うぐっ…」 |
小鳥 | 「ほらほら、お姉さんに正直に言っちゃいなさい」 |
涼 | 「え、えっと…何か凄く綺麗で…でもその…出てて…」 |
小鳥 | 「やっぱり大変だった?」 |
涼 | 「はい…抑えるのにもう心の中で別のこと考えることすら大変でした」 |
小鳥 | 「盛りの男の子だものね、普段はどうしてるの?」 |
涼 | 「普段っていうと…」 |
小鳥 | 「ほら、日高さんとか水谷さんとかと一緒の時よ」 |
涼 | 「最近は慣れちゃったのかなあ…あんまり意識しなくなっちゃったです」 |
小鳥 | 「でも女性だけの職場で男一人って大変でしょ?」 |
涼 | 「あ、はい。力仕事は任せられることもありますし…」 |
小鳥 | 「うちも社長はいいとして男手はプロデューサー一人だけだから…」 |
涼 | 「でもあの女性の薫りに囲まれているって…普段はありませんし」 |
小鳥 | 「プロデューサーさんも…もう、それでデレデレしてると嫉妬しちゃうわ…フフ」 |
涼 | 「アイドルいっぱいですもんね」 |
小鳥 | 「でもそういう時はちゃんと後で…しっかり薫りを擦り込んじゃうの」 |
涼 | 「…ごちそうさまです」 |
小鳥 | 「そういえば今度はまたドラマ決まりそうらしいわね」 |
涼 | 「うーん…僕はどれだけ765プロのアイドルのファンを敵に回すことになるんですか…ね」 |
小鳥 | 「どうかしら、監督に気に入られている限りは使われちゃうわよ」 |
涼 | 「あー…でもみんな感触が違っていて…それがあるから頑張っているような物ですよ」 |
小鳥 | 「そうなのね、今度のドラマもまた頑張って」 |
涼 | 「はい、ありがとうございます!」 |
小鳥 | 「じゃあ最後にお姉さんから…」 |
チュッ |
涼に突然小鳥の顔が近付いたかと思った時には、その唇は一瞬で奪われていったという… |