ここはある日の会議室… |
やよい | 「うー…」 |
律子 | 「ほら、あと少しじゃない。頑張ってやよい」 |
やよい | 「あ!もしかして…こうですか?」 |
律子 | 「そうそう、でも…ここはこうした方が早いの」 |
やよい | 「あー、そうですね。こっちでこうして…」 |
律子 | 「うんうん、あとはできるわよね?」 |
やよい | 「えっと…こうですね!」 |
律子 | 「上出来上出来。これでもうテスト範囲は全部よね?」 |
やよい | 「はい、本当にありがとうございました。でも私のためにこんな時間まで一緒だなんて…」 |
律子 | 「いいのよ。私だってやよいがやっている間に…ほら」 |
律子は自分が綴っていたノートをやよいへと見せた。 |
やよい | 「うわあ…凄いです。もしかして私に教えながらやってたんですか?」 |
律子 | 「私ももうすぐテストだから、ちょうど良い気分転換をしながらだったのよ」 |
やよい | 「でも、律子さんは頭が良いからいいですよね」 |
律子 | 「そんなやよいが思っているほどじゃないわよ。学年が違うからそう思うだけよ」 |
やよい | 「そんなことないです。私と違って憶えるのも速くて、プロデューサーにも何でも言えて凄いです」 |
律子 | 「それは私の方が歳が近いからよ。私が言わなくちゃ誰が言うのよ」 |
やよい | 「でも私が律子さんの歳になっても、そんなこと言えないと思います」 |
律子 | 「確かにやよいは優しいものね」 |
やよい | 「ええっ!そ、そんなことないですよ」 |
律子 | 「ううん。やよいは優しくて明るくて健気で良い子よ」 |
やよい | 「そ、そうですか?」 |
律子 | 「それを証拠に人気だってやよいの方が上なのよ」 |
やよい | 「あう…で、でも律子さんだって人気あると思います。私もその一人ですから」 |
律子 | 「ありがとやよい。やよいがそう言ってくれるだけで私は嬉しいわ」 |
やよい | 「律子さん…」 |
律子 | 「やよい…」 |
そこで二人は我に返り… |
やよい | 「あ…あれ?私どうしちゃったんでしょうか?」 |
律子 | 「わ、私もちょっと今のはどうかしてたわね」 |
やよい | 「そうです、律子さん」 |
律子 | 「何かしら?やよい」 |
やよい | 「今日はこれからどうしますか?」 |
律子 | 「そうね…テスト範囲の勉強もお互いに終わったし…」 |
やよい | 「でもプロデューサーも居ないですから」 |
律子 | 「そこなのよ問題は。んー…やよいはどれくらいまで時間大丈夫かしら?」 |
やよい | 「今日は夕方まで大丈夫にしてあります」 |
律子 | 「それなら…と言っても次の曲ももうダンス含めて完璧だものね」 |
やよい | 「そうですよね、うーん…」 |
律子 | 「あ!やよい、ちょっといいかしら……」 |
……… |
律子 | 「やよい、こんなこと手伝わせちゃってゴメンね」 |
やよい | 「いいんです。元々こういうのは得意ですから」 |
さて2人が居るのは… |
律子 | 「しかしあのプロデューサーったら、収納がメチャメチャじゃない」 |
やよい | 「この部屋にあるのって14人分ですよね」 |
律子 | 「そうよ。961から移籍した3人の分も入ってきたからもうギリギリなのよ」 |
そう、衣裳部屋である。 |
やよい | 「この衣装はどこですか?」 |
律子 | 「そのシリーズは…そっちの緑の衣装ケースの2番目よ」 |
やよい | 「分かりましたー」 |
律子 | 「これはこっちに入れて…しっかしよくもまあこんな衣装作ったわね」 |
やよい | 「この宇宙服のヘルメットはあの棚で良いんですよね?」 |
律子 | 「ええ。ちゃんと誰のか書いてあるからそこにお願い」 |
やよい | 「はーい」 |
律子 | 「いくら忙しいからって部屋に放りっぱなしは無いでしょうにもう」 |
やよい | 「律子さんあとはこれだけです」 |
律子 | 「これね。これは…そこに仕舞ってっと」 |
やよい | 「ふう、終わりましたー!」 |
律子 | 「ごくろうさま、やよい」 |
やよい | 「おつかれさまでした、律子さん」 |
律子 | 「これだけ整理しとけば充分ね」 |
やよい | 「何だか懐かしい衣装とかいっぱいでした」 |
律子 | 「一度きりとかのもけっこうあったわね。本当に予算の使い方が荒いわ…」 |
やよい | 「でも衣装と一緒にその頃に歌った曲も思い出しちゃいます」 |
律子 | 「確かにそれはあるわ。やよいと組んでもう長いわね」 |
やよい | 「そうですね。最初はどうなるかなってちょっと心配でした」 |
律子 | 「私も実を言うとそうだったわ。まさかやよいだなんて思わなかったもの」 |
やよい | 「あの頃は律子さんって、凄い頭が良くて私なんかじゃダメかなって思ってたんです」 |
律子 | 「そんなこと無いわよ。まあでも最初の曲で心配も吹っ飛んじゃったわ」 |
やよい | 「そうでした。あれで律子さんと一つになれた気がします」 |
律子 | 「不思議よね。私の持ち歌をやよいがあんなに綺麗に歌いこなしちゃったんだもの」 |
やよい | 「その次は逆に律子さんが私の持ち歌を歌ってくれて、本当に嬉しかったです」 |
律子 | 「その頃はまだ衣装も少なくて、同じ衣装を何回もクリーニングして…」 |
やよい | 「アクセサリーも他のみんなと使い回して使ってました」 |
律子 | 「でも今はこんなに選べるほどある。考えてみれば凄いことなのね」 |
やよい | 「これもみんなプロデューサーが私たちアイドルを導いてくれたからなんですよね」 |
律子 | 「そうなの。ずぼらな所は少しあるけど、そこら辺は抜け目無いのよ」 |
カチャッ |
やよいがふと一つ衣装棚を開けてみると… |
やよい | 「…ん?あーっ!最初の衣裳ってこれでしたよね」 |
律子 | 「そうね、本当に懐かしいわ…」 |
やよい | 「うー、何だかちょっと…」 |
律子 | 「やよいも?」 |
やよい | 「はい。律子さんもですか?」 |
律子 | 「ちょっとくらいいいわよね」 |
やよい | 「私もそう思います」 |
律子 | 「それじゃあちょっと着ちゃいましょ」 |
やよい | 「あ、汗臭い今の身体で着ちゃったら後で洗わないと…」 |
律子 | 「いいの。この部屋の整理をしなかったプロデューサーに、罰としてクリーニング代を押し付けるわ」 |
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律子 | 「この感触、懐かしいわ」 |
やよい | 「洗いすぎて少し生地が薄くなっちゃったんでしたっけ」 |
律子 | 「そうそう。この手触りが同じシリーズの他のと少し違うのよ」 |
やよい | 「ちゃんととってあったんですね」 |
律子 | 「私も新しく発注し直したとばっかり思ってたわ」 |
やよい | 「Fランクの頃は、この衣装を着て色んな場所で歌ってたんですよね」 |
律子 | 「そうそう。あの頃はまだ売れてなかったから、移動も出来るだけお金を節約してて」 |
やよい | 「地方に行った時は同じベッドで一緒に寝たりもしました」 |
律子 | 「そんなこともあったわ…って今もたまにそうじゃない」 |
やよい | 「だって、時々寂しくなっちゃって…」 |
律子 | 「やよいは家族が多いんだもの、しょうがないわよ。でも、そんなやよいが私は可愛いの」 |
やよい | 「律子さん、これからも…いいですか?」 |
律子 | 「そんなに心配しなくても、いいに決まってるじゃないもう」 |
やよい | 「律子さん…」 |
ギュッ |
やよいは律子へと抱きついた。 |
律子 | 「やよい…」 |
ギュウっ |
律子はそんなやよいを自然と優しく抱きしめ返していた… |