冬のある日のこと… |
真美 | 「寒いなー、やっぱり冬って感じだよ」 |
とある駅で電車に乗り込んだ、いつもの姿からは少し変装した少女が一人。 |
真美 | 「んー、でもやっぱり休みだと座れそうにないかなあ」 |
ちょうど座れるか座れないかくらいの混み具合のようだ。 |
真美 | 「ん?あ、そこが空いてるから座ろうっと」 |
と、とある長髪の女性の横に空き座席を見つけた。 |
あずさ | 「くぅ…くぅ…」 |
真美 | 「寝てるけど、座っちゃってもいいよね」 |
ぽふっ |
とりあえず少女はその席へと座った。 |
あずさ | 「くぅ…ぐぅ…」 |
真美 | 「ふ〜…買い物もいいけど、こうやって変装しないといけないのがなあ…」 |
あずさ | 「すぅ…くぅ…」 |
ガタンっ |
刹那に揺れる電車。 |
真美 | 「うわあっ!」 |
あずさ | 「キャッ!」 |
ぎゅうっ むにゅっ |
その寝ていた人が急に少女へと寄りかかってきた。 |
あずさ | 「ご、ごめんなさい大丈夫かしら?」 |
真美 | 「うー、大丈夫だよ…ん?」 |
あずさ | 「あら?その声は…」 |
真美 | 「もしかして…あずさお姉ちゃん?」 |
あずさ | 「どちらかしら?亜美ちゃんか真美ちゃんよね?」 |
真美 | 「やっぱりあずさお姉ちゃんなんだ。真美だよん」 |
あずさ | 「あら、真美ちゃん。ゴメンなさいね、痛かったかしら?」 |
真美 | 「ううん、大丈夫だよ。むしろ凄い感触だったよー」 |
あずさ | 「え?」 |
真美 | 「ううん、何でもないって何でも。でも今日はどうしたの?」 |
あずさ | 「お出かけよ。せっかく何もないオフだから…」 |
真美 | 「どこに行く予定だったの?」 |
あずさ | 「…えっと、どこだったかしら?」 |
真美 | 「うえ!?そこからなの?」 |
あずさ | 「ああ、思い出したわ。○○だわ」 |
真美 | 「え?乗り換え駅ってもう過ぎてるような…」 |
あずさ | 「あらあら、また寝過ごしちゃったみたいね」 |
真美 | 「もう、しっかりしてよあずさお姉ちゃん。ってことは何回も乗り過ごしちゃったってこと?」 |
あずさ | 「そういうことになるかしら。この電車に乗ったのが朝の9時だったわ」 |
真美 | 「もう2往復ぐらいしてるよ、たぶん」 |
あずさ | 「でも、電車の中が気持ち良くてつい〜」 |
真美 | 「それでどーすんの?逆向きに乗り直した方がいいんじゃない?」 |
あずさ | 「んー、でもそんなに絶対行きたい場所じゃないしねえ」 |
真美 | 「あ、そうなんだ」 |
あずさ | 「真美ちゃんはどこに行くつもりだったのかしら?」 |
真美 | 「真美は4つ次で乗り換えて△△だよん。ちょっと欲しい物があってね」 |
あずさ | 「それなら真美ちゃんに一緒について行こうかしら」 |
真美 | 「え?でも…」 |
あずさ | 「あら?私には秘密にしたい買い物なのね」 |
真美 | 「う、うん。あ、でも…あずさお姉ちゃんだったら逆にいいかも」 |
あずさ | 「そう?」 |
真美 | 「あずさお姉ちゃんは切符は大丈夫?」 |
あずさ | 「大丈夫よ。乗り過ごしても構わないようにICカードなのよ〜」 |
真美 | 「それならいいね、じゃあ一緒に行こっか」 |
あずさ | 「そうね」 |
……… |
ここはとあるジャンルの服のお店… |
あずさ | 「そういうことだったのね」 |
真美 | 「うん…だから亜美にも今日のことは内緒だったんだよ」 |
あずさ | 「分かるわ〜、恥ずかしいものね」 |
真美 | 「それだけじゃないんだよ。だって…双子だから…」 |
あずさ | 「えー、よく分からないわ」 |
真美 | 「双子だから亜美と比べられちゃうんだ」 |
あずさ | 「そうなのね〜」 |
真美 | 「双子だから似てるんだけど、それでも色んなところが違うんだよ」 |
あずさ | 「うーん、普段見ている分にはよく分からないわ」 |
真美 | 「でも、あずさお姉ちゃんが一緒で安心した」 |
あずさ | 「どうしてかしら?」 |
真美 | 「あずさお姉ちゃんならセクシーなの知ってるよね?」 |
あずさ | 「んー、どうかしらー?」 |
真美 | 「着替えで普段見てるけど、どれもセクシーじゃん」 |
あずさ | 「でも私は服は何も意識してないわよ」 |
真美 | 「いいなあ、無意識にそういうのできるって」 |
あずさ | 「それじゃあどうしようかしら?」 |
真美 | 「真美に似合っててセクシーに見えるのってどんなんかな?」 |
あずさ | 「そうねー…普段着けてるのってどんなのかしら?」 |
真美 | 「んーとね、こんなんだよ」 |
あずさにだけ服を少し捲って見せる真美。 |
あずさ | 「普段からこういうのばっかりなのね?」 |
真美 | 「うん、だいたいこんな感じ。子供っぽいかな?」 |
あずさ | 「でも、真美ちゃんらしくて素敵よー」 |
真美 | 「そっかなあ?でももう少し大人っぽいのが欲しいなあって」 |
あずさ | 「それなら…こんなのはどう?」 |
真美 | 「えっ…真美に似合ってるかな?」 |
あずさ | 「ちょっとあの試着室で着けてみたら?」 |
真美 | 「うん、そうしてみるよ」 |
|
試着室の中の二人。ん?二人とも脱いでいるのは…なぜ? |
真美 | 「あずさお姉ちゃん、どうかな?似合ってる?」 |
あずさ | 「似合ってるわよ真美ちゃん。私はどうかしら?」 |
真美 | 「あずさお姉ちゃんにそういう可愛いのも似合うんだね」 |
あずさ | 「ありがとう、真美ちゃん。こういうのって着けたこと無いから新鮮だわ〜」 |
真美 | 「でもでも本当に大きいねー、あずさお姉ちゃんの」 |
つんつん |
何を突いているんだ?真美… |
あずさ | 「んっ!もう真美ちゃんったら。でも真美ちゃんのも可愛いわよ〜」 |
つんつん |
お返しとばかりにどっかを突いているあずさ。 |
真美 | 「ひゃんっ!で…でも、あずさお姉ちゃんと可愛い柄のギャップが何だか凄いね」 |
あずさ | 「真美ちゃんもそうよ。可愛いのにちょっと小悪魔って感じよ」 |
真美 | 「んっふっふ〜、これで兄ちゃん悩殺できるかな?」 |
あずさ | 「私もこれで堕としちゃおうかしら〜」 |
真美 | 「でもそんなことをしたらピヨちゃんが怒っちゃうかもね」 |
あずさ | 「そうね〜、少し嫉妬しちゃう」 |
真美 | 「でもピヨちゃんと兄ちゃんってお似合いだもん」 |
あずさ | 「音無さんの側に居る時、本当に幸せそうよね」 |
真美 | 「だから今はもう、兄ちゃんとピヨちゃんのこと応援しようって思ってるんだ」 |
あずさ | 「真美ちゃん…そうね。ちょっと悔しいけれど…」 |
真美 | 「あずさお姉ちゃん…好きだったんだよね?兄ちゃんのこと」 |
あずさ | 「…もういいの。私があの人を好きだったってことは変わらないから」 |
真美 | 「元気出して。あずさお姉ちゃんにそんな顔は似合わないよ」 |
あずさ | 「それもそうね…真美ちゃん」 |
真美 | 「だからさ、たまにこういうのでビックリさせてみようよ。それくらいいいよね?」 |
あずさ | 「これくらい…ね。これは私と真美ちゃんの秘密よ」 |
真美 | 「うんっ」 |
あずさ | 「じゃあこれを買っていきましょ。色はどっちがいいかしら?」 |
真美 | 「んー、あずさお姉ちゃんなら今のピンクも、それから紺色もどっちも似合うよ」 |
あずさ | 「それなら両方買っていこうかしらね」 |
真美 | 「んじゃあ、真美はどうかな?」 |
あずさ | 「真美ちゃんのだとそうね…ピンクで可愛らしくでも、今の黒で小悪魔っぽくもいいわね〜」 |
真美 | 「でも両方買うお金は無いなー」 |
あずさ | 「こんな機会だもの、片方分くらいならお姉さんが出してあげちゃうわ」 |
真美 | 「え?いいの?」 |
あずさ | 「いいのよ〜、友達との買い物って久しぶりだったもの。こういう時はお姉さんを頼って〜」 |
真美 | 「ありがと、あずさお姉ちゃん」 |
ぎゅうっ |
その格好のままあずさへと抱きついた真美であった。 |
|
会計を終えて… |
真美 | 「あずさお姉ちゃん、この後どーすんの?」 |
あずさ | 「そうね〜、一緒にご飯でも食べましょ」 |
真美 | 「そーだね。でもあんまり真美たちのことが、バレないようなとこじゃないとダメだよね」 |
あずさ | 「この近くに私の知り合いの店があるの。そこはどうかしら?」 |
真美 | 「それならいいかも、じゃあ行こっ」 |
あずさ | 「そうね、行きましょ」 |
二人のその姿は変装も相まって、まるで本当の姉妹のように見えていたらしい… |