| ここはある日の事務所にあるダンスレッスン場… |
| 真 | 「…っと、ふー…これくらい準備運動はでいいかな」 |
| 中性的な女の子が準備運動に励んでいた。 |
| 真 | 「さてっと、絵理は大丈夫？」 |
| 絵理 | 「…これが準備運動…？」 |
| どうやらもう一人女の子がいたようだ。 |
| 真 | 「もう、これくらいで疲れてたら今度のライブなんて耐え切れないぞ」 |
| 絵理 | 「でも真さんは…慣れてる？」 |
| 真 | 「それはそうだけど…プロデューサーもボクにこんなこと押し付けてくるなんて…」 |
| 絵理 | 「すみません…わたしのことなのに…」 |
| 真 | 「いや、いいんだよ。確かにこういうダンスレッスンはボクの日課のようなもんだからさ」 |
| 絵理 | 「でも、一緒にやったら足手まといになって迷惑…」 |
| 真 | 「そんなことないって。ボクだって一緒にやる相手がいた方が楽しいからさ」 |
| 絵理 | 「今日はよろしくお願いします…」 |
| 真 | 「うん。じゃあ次は軽いステップの練習しようか」 |
| 絵理 | 「はい…」 |
| 真 | 「えっとボクたちが歌ってる曲で踊れる曲って何があるっけ？」 |
| 絵理 | 「そうですね…ちょっと前の曲なら大丈夫な曲は多いです」 |
| 真 | 「それなら一番軽いあの曲で行ってみようか」 |
| ……… |
| 肩慣らしの１曲を踊り終えて… |
| 真 | 「あれ？踊れてるよ絵理」 |
| 絵理 | 「ダンスだけなら好きですから…」 |
| 真 | 「そうなんだ。でもさっきの様子だときっと持久力が無いんだね」 |
| 絵理 | 「たぶんそう…？」 |
| 真 | 「それなら数をこなしていこうよ。こっから3曲連続で行くよ」 |
| 絵理 | 「…大丈夫…かな？」 |
| 真 | 「まずはやってみようよ。あ、あとちゃんと次の曲からは歌もね」 |
| 絵理 | 「えっ…」 |
| 真 | 「あれ？歌はダメ？」 |
| 絵理 | 「歌は苦手だから…はい…」 |
| 真 | 「うーん、それはちょっとなあ…」 |
| 絵理 | 「ダンスは色々な人のをコピーしていたけど…？」 |
| 真 | 「そっか、だから踊れるのは踊れるんだ…」 |
| 絵理 | 「だから、歌はちょっと…」 |
| 真 | 「でもライブなんだから歌わなくちゃ」 |
| 絵理 | 「それならまずは１曲だけ…」 |
| 真 | 「うん…じゃあこの曲いける？」 |
| 絵理 | 「この曲はちょっとまだ練習してなくて…こっちの曲なら大丈夫…」 |
| 真 | 「それならこの曲とこの曲は？」 |
| 絵理 | 「そっちは大丈夫で、その曲の次の曲は大丈夫です…」 |
| 真 | 「よしっ。この３曲一気に行くからね」 |
| 絵理 | 「大丈夫…かな？」 |
| 真 | 「やってみなくちゃ分からないよ。まずは１回やってみよう」 |
| 絵理 | 「はい…」 |
| ……… |
| 絵理 | 「………」 |
| 真 | 「はあ…はあ…だ、大丈夫？絵理」 |
| 絵理 | 「………な、何とか…」 |
| 真 | 「だいぶ息上がってるね、ちょっと休憩しようか」 |
| 絵理 | 「真さんも…大丈夫です…？」 |
| 真 | 「ボ、ボクもちょっと…さすがに激しい曲だったから…」 |
| 絵理 | 「…そうですね…じゃあ休憩しましょう…」 |
| 二人は壁を背に床へと座った。 |
| 真 | 「ふう…はいこれ。スポーツドリンクでよかった？」 |
| 絵理 | 「ありがとう…ございます…」 |
| 真 | 「でも一気にやるのは一回に三曲くらいだから、これくらい踊れれば充分じゃないかな」 |
| 絵理 | 「はい…」 |
| 真 | 「ふう…」 |
| 絵理 | 「でもやっぱり…歌と一緒だと難しい…」 |
| 真 | 「それは誰だって一緒だよ。ボクだってそうだからさ」 |
| 絵理 | 「どちらかを意識すると、もう一つがダメになりそうなのが怖いから…」 |
| 真 | 「そうだね。でもそれは練習あるのみってところだろう」 |
| 絵理 | 「そう言えるのって…カッコいい」 |
| 真 | 「ええっ、そ、そうかな」 |
| 絵理 | 「はい…」 |
| 真 | 「でもボク…カッコいいって言われるの、あんまり好きじゃないんだ」 |
| 絵理 | 「そうなんですか…？」 |
| 真 | 「うん。ああいう感じで売り出されちゃったから、半分諦めていたりもするけどさ」 |
| 絵理 | 「フフフ…」 |
| 真 | 「え？どうしたの？」 |
| 絵理 | 「ご、ゴメンなさい…笑っちゃって」 |
| 真 | 「いやいいんだけど…急にどうしたのかなって」 |
| 絵理 | 「えっと…こんなこと言ったら怒られるかもしれないけど…」 |
| 真 | 「いいよ、怒らないからさ」 |
| 絵理 | 「あの…真さんって可愛いんだって…」 |
| 真 | 「絵理…」 |
| 絵理 | 「何だか別の面を見た感じで…その…」 |
| 真 | 「ありがとう絵理、何かそうストレートに言われると照れるけどさ」 |
| 絵理 | 「また少し真さんのこと好きになれた気がします…」 |
| 真 | 「そっか、うん」 |
| 絵理 | 「こういう面があるから雪歩さんもきっと…真さんのことが好きなんですね」 |
| 真 | 「そうなのかな…？」 |
| 絵理 | 「はい…真さんのこういう面も含めてきっと…」 |
| 真 | 「雪歩…」 |
| 絵理 | 「あっ…真さんって、雪歩さんのことを考えている時幸せそう…」 |
| 真 | 「ええっ！？絵理っ！そういう恥ずかしいことはぁっ！」 |
| 真は顔を真っ赤にして絵理の口を両手で塞いだ。 |
| 絵理 | 「むうっ…んんっ…！」 |
| 真 | 「ああっ！ゴメンゴメン、つ、つい…」 |
| 絵理 | 「ぷはあっ…苦しかった…」 |
| 真 | 「でも確かにそうなのかって…自分でも思うけど」 |
| 絵理 | 「自分もそんな人…できるかな…？」 |
| 真 | 「うん、絶対にできると思うよ。それが男の人か女の人かは別としてね」 |
| 絵理 | 「はい…」 |
| 真 | 「よし、じゃあもう１回三曲通しでやってみる？」 |
| 絵理 | 「もう一回だけで…いいですか？」 |
| 真 | 「うん、ボクもさすがにこれを３回も４回もできる体力は無いからね」 |
| 絵理 | 「じゃあ…はい」 |
| 二人は再び始めるために何となく手を繋いで立ち上がったという… |