Autumn Reading a Deux(二人だけの読書の秋)

ここはある朝の事務所…
真美「おっはよーん、ゆきぴょん」
雪歩「真美ちゃんおはよう。今日はよろしくね」
真美「うん、よろしくねっ」
雪歩「真美ちゃんと仕事するのっていつ以来だっけ?」
真美「んーと、全員ライブ以来じゃないかな?」
雪歩「そっか…そういえば亜美ちゃんとはたまに一緒だけど、真美ちゃんとって殆ど無かったっけ」
真美「そだね」
雪歩「でもどんな仕事なんだろう?真美ちゃんは何も聞いてない?」
真美「兄ちゃんから?うん。特に何も聞いてないよ」
雪歩「何だろうね?」
と、そこに…
真美「あ、兄ちゃん来たよ。兄ちゃんおはよー」
雪歩「おはようございます、プロデューサー」
「おはよう雪歩、真美。二人とも揃ってるな」
真美「兄ちゃん、今日の仕事は何なの?」
「あれ?言ってなかったっけか」
真美「何も聞いてないよね?ゆきぴょん」
雪歩「うん、真美ちゃん」
「小鳥さーん、この二人に今日の二人の企画書見せてないんですかー?」
向こうのデスクにいる小鳥に声を懸けるプロデューサー。
小鳥「えー!?知りませんよー」
「小鳥さんに二人に書類渡すの頼んだじゃないですかー」
小鳥「え?あ、あれ、ダメになったって言ったじゃないですか」
「それは千早と亜美の方ですよー。あちゃー…二人に話が通ってなかったのか…」
雪歩「そ、それで今日は何のお仕事ですか?」
「今日はCM撮影だけど…大丈夫か?」
真美「んー、何のCM?」
「雪歩が詩集を出した出版社は分かるよな?」
雪歩「はい…」
「あと真美がCMをやってる文房具会社があるだろ?」
真美「うん」
「その2社が合同キャンペーンをやることになってな。そのCMだ」
雪歩「それで私と真美ちゃんなんですね」
真美「そっかー、どんなCMなの?兄ちゃん」
「ちょっとこの企画書に目を通していてくれ。何ページか後にセリフの案が書いてあるから」
雪歩「プロデューサーはどこへ?」
「ちょっと小鳥さんを叱りつけてくるのと、千早と亜美の対応してくるから」
真美「んー、いってらー」
雪歩「真美ちゃん真美ちゃん、ここのCMって今までどんなCMだった?」
真美「面白いよー。その文房具使えば、何やっても良いって言われたもん」
雪歩「そうなんだ。そういえばノートの時って、あれは何を書いてたの?」
真美「あれ?あれはCMの最後に出てきた絵のまんまだよ」
雪歩「あれって真美ちゃんが描いてたんだ、凄いなあ」
真美「そっかな?」
雪歩「えっと、次のページが…」
ペラッ
企画書をめくっていく雪歩
雪歩「これが今回のコンテみたいだね」
真美「うん。あ、最初はゆきぴょんがベンチで本を読んでるんだ」
雪歩「それで…真美ちゃんがCG合成された小人さんになって私の本の上に居て、本の続きを魔法で書くんだって」
真美「大変そうだけど面白そうな役なんだね」
雪歩「フフフ、小人の真美ちゃん、きっと可愛いと思うよ」
真美「そ、そっかな?」
雪歩「うん。その後にキャンペーンのメッセージを二人で言うって感じかな」
真美「それで最後は指に乗った小人の真美に…」
雪歩「ご、合成だからね」
少し顔が赤くなる雪歩。
真美「そうだよね、でもゆきぴょんだったら本当にでもいいよ」
雪歩「え、え…ええーっ!?」
真美「だってゆきぴょん、優しくて大好きだもん」
雪歩「ま、真美ちゃんっ!?」
そこに…
「一通り読んでくれたか?」
ようやくプロデューサーが戻ってきた。
雪歩「コンテまでは読みました、プロデューサー」
「そこまで読んでくれたらいいか。あと1時間しないうちに出るから、準備しておいて」
真美「うんっ」
雪歩「は…はいっ」
………
秋の木の葉舞い散るベンチで本を読む雪歩。
雪歩「フフフ…次のページは…」
ペラッ
雪歩がページをめくるとそこには…
雪歩「えっ!?こ…小人さん!?」
白紙の2ページの上に小人の真美が鉛筆の杖を持って、雪歩に背を向けて何やら考えながら立っていた。
真美「えっと次の2ページは…えいっ!」
真美が鉛筆の杖を振ると、その見開きの2ページに挿絵と文字が載っていく。
真美「ふー、間に合ったかな…ってみ、見つかっちゃったぁ!」
雪歩「秋の嬉しいの、見ーつけた」
真美「○○社…」
雪歩「△△出版…」
雪歩・真美『読書の秋、プレゼントキャンペーン!』
小人の真美を左手の人差し指に座らせる雪歩。
雪歩「△△出版の文庫の帯に付いている応募券を、必要な枚数集めて送ると…」
真美「○○社の文房具を必ずプレゼントするね」
雪歩「抽選で□□名様には私か…」
真美「真美のサイン付きで送るよー」
雪歩「みんなこの秋は…」
真美「本を読もー!」
雪歩「秋のありがとう、見ーつけた」
チュッ
真美を載せた人指し指を口元に近づけて、その真美の頬に雪歩はそっと口付けた…
………
数日後、ここは事務所の会議室。ここで出来あがったばかりのこのCMを見せられた二人は…
雪歩「何だかやっぱりちょっと恥ずかしいかな…」
真美「本当にゆきぴょんにキスされちゃったかなって思って、真美もドキッとしたもん」
雪歩「プロデューサー、このCMいつから流すんですか?」
「ああ、確か今日二人のOKが出たら来週の平日朝帯で流すんだったな」
真美「真美はOKだよん。ゆきぴょんは?」
雪歩「私も…ちょっと恥ずかしいですけど…」
「よし、じゃあちょっと先方に報告してくるから」
バタンっ
プロデューサーは席を外した。
雪歩「真美ちゃん…また一緒に仕事ができるといいね」
真美「うん。絶対にまた一緒に仕事しよっ」
雪歩「じゃあ約束の…」
チュッ
雪歩は真美の頬にそっとキスをした。
真美「ゆ、ゆきぴょん…」
雪歩「サイン代わり…にね。今度は恥ずかしくなくなるようにしたいから…」
真美「じゃ、じゃあ真美もするっ!今度は真美の番かもしれないもん!」
チュッ
真美も雪歩の頬へ口付けを返した。
雪歩「ありがとう…真美ちゃん」
真美「どういたしまして…ゆきぴょん」
二人のCMは大好評で、すぐに第二弾が作られたのは後日談である…
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あとがき
どもっ、飛神宮子です。
雪歩と真美。雪歩と亜美とはちょっと違う雰囲気になっています。
いたずらっ子っぽい雰囲気があんまり無いというのが、うちの真美。
これから違う方向に歩む真美と亜美、心の中ではどちらも応援していますよ。
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2010・09・24FRI
飛神宮子
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