3月のある日… |
みちる | 「着きましたー」 |
やよい | 「ここがみちるさんのおうちなんですねー?」 |
みちる | 「はい!やよいさん、あたしの実家のおおはらベーカリーへようこそー!」 |
やよい | 「パンの美味しそうな薫りがします」 |
みちる | 「早く入りましょう!あたしも今日は楽しみです」 |
ガチャッ カランカランカラン |
ドアを開けて店へと入る二人。 |
みちる母 | 『いらっしゃいませ…じゃないわね、おかえりなさいみちる』 |
みちる | 「お母さん、ただいまー!」 |
やよい | 「おじゃましまーす!」 |
みちる母 | 「あなたが、お話のあった…」 |
やよい | 「はいっ、高槻やよいです。今日はよろしくお願いしまーす!」 |
みちる母 | 「あら、良いお返事…って、みちる!何食べてるの!」 |
みちる | 「だって…フゴフゴ…久しぶりにこの美味しそうなのみたら…あむあむ…我慢できなくなったんだもん」 |
みちるが手に持っていたのは長さ30cmもあるバゲット。それに頭からかじり付いていた。 |
みちる | 「もう…後で手伝ってもらうわよ」 |
みちる | 「はーい…フゴフゴ…」 |
みちる母 | 「それじゃあこっちに入って、まずは着替えてもらおうかしら」 |
やよい | 「私もですか?」 |
みちる母 | 「ええ。厨房に入るから高槻さんもみちると一緒に着替えてもらえる?」 |
やよい | 「はいっ。それで着替えは…」 |
みちる母 | 「みちる、去年使ってたお古、まだ部屋にあるわよね?」 |
みちる | 「フゴ?んー…あー、押入れの衣装ケースに入れてあるあれだ!」 |
みちる母 | 「それ、みちるの部屋で着せてらっしゃい。自分のは分かってるわよね?」 |
みちる | 「うんっ、じゃあやよいさん行こっ!」 |
やよい | 「はいっ」 |
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ところ変わってカメラは厨房内の二人を映し始めた。 |
やよい | 「この服、何かパン屋さんって感じがしますー」 |
みちる | 「あたしの昔ので大丈夫でした?」 |
やよい | 「はいー。大丈夫です」 |
二人はパン屋の制服に身を包んでいた。 |
みちる | 「うんうん、やよいさん似合ってますよ」 |
やよい | 「ありがとうございます。みちるさんもさすがは看板娘って感じがします」 |
みちる | 「んふー♪そうですか?」 |
やよい | 「何年もやってきた職人って感じもします」 |
みちる | 「そっかー。あたしもたまに手伝ってたから、パン作りはお手の物ですよ」 |
やよい | 「これに着替えたってことは…」 |
みちる | 「はいっ!○○さん、お願いしますー」 |
職人 | 『あいよっと』 |
ドンッ ドンッ |
二人の目の前に二つの白い塊が置かれた。 |
みちる | 「今日は二人で創作パン作りをするってこと…でいいんですよね?」 |
みちるはカメラマン役のディレクターの方へと向いた。それに呼応するようにカメラが上下に動く。 |
やよい | 「それじゃあ始めましょー…って言っても、何かテーマがあった方がいいですね」 |
みちる | 「やよいさんはパンと言ったら何ですか?」 |
やよい | 「うちは家族が多いから、菓子パンとかはあんまり食べないかなーって」 |
みちる | 「なるほど…そうだと食パンが多いってことですね!」 |
やよい | 「食パンとか、あとは長いパンとかがお得なので買うときはそれです」 |
みちる | 「うーん、食パンとか味が付いてないのは面白くないから…」 |
やよい | 「んー…」 |
考え込む二人。 |
みちる | 「…やよいさんに因んだ物を作りたいから…何かあるかな…?」 |
やよい | 「私に因んだもの…ですか?」 |
みちる | 「せっかく来てもらったんですから、そうしたいなって思ったんです!」 |
やよい | 「もやしは…パンには入れないですよね」 |
みちる | 「水分が多いと後々困るから、あんまり入れないですねー」 |
やよい | 「それだと…」 |
と、ふと店で流れていた有線の曲が切り替わった。 |
♪〜 |
その曲に顔を見合わせた二人。 |
やよい・みちる | 「「これですっ!!」」 |
そして同時に言葉を発した。 |
みちる | 「そうなるともうちょっと固くなる方がいいかもしれないです。○○さん、アレ用の生地ってまだあります?」 |
やよい | 「私は野菜をみちるさんのお母さんに聞いてきますっ!」 |
……… |
その日の夜… |
みちる | 「今日作ったの、美味しかったですね!」 |
やよい | 「はいっ!」 |
みちる | 「あたしの家の新しいメニューが一つ増えましたよっ」 |
やよい | 「私も自分が歌ってたのに、すっかり忘れちゃってました」 |
みちる | 「あれは店の音楽に感謝ですっ」 |
やよい | 「味もバッチリでしたね」 |
みちる | 「あたし、何個食べたんだろう?美味しくてつい何個も食べちゃったから…」 |
やよい | 「えっと、12個作って………あれ?6個くらい食べてるんじゃないですか!?」 |
みちる | 「それもみんなやよいさんの料理の腕がいいからですよ」 |
やよい | 「みちるさんのパンの出来が良かったからですっ」 |
みちる | 「ありがとうございますっ!やよいさん」 |
やよい | 「こちらこそありがとうございます、みちるさん」 |
みちる | 「あ、その布団大丈夫ですか?」 |
やよい | 「はい、この布団もパンみたいでふかふかかなーって」 |
みちる | 「パンもお布団も、温かい時の方がやっぱりいいですよね」 |
やよい | 「冬のお布団は寒くて、姉弟で暖を取ったりもやっぱりしちゃいます」 |
みちる | 「やよいさんって何人姉弟なんですか?」 |
やよい | 「私?私は私を入れて6人です」 |
みちる | 「いいなー、そういうのも憧れちゃいます!」 |
やよい | 「ちょっと五月蝿いかもだけど、楽しいですっ」 |
みちる | 「それなら…」 |
みちるはベッドから立ち上がり… |
ススススス |
やよいの布団の方へと入っていった。 |
やよい | 「み、みちるさん!?」 |
みちる | 「こういうこと、憧れてたんですっ!」 |
ぎゅうっ |
そのまま布団の中のやよいを抱きしめた。 |
みちる | 「やよいさんもパン生地みたく柔らかいですねー」 |
やよい | 「み、みちるさん…あうう…」 |
みちる | 「温かいです…やよいさん」 |
やよい | 「みちるさん…みちるさんの温もりも伝わってきます…」 |
みちるのおかげで、二倍に膨らんだやよい用の布団であったという… |
HAPPY BIRTHDAY!! Yayoi TAKATSUKI.