Photograph of 13 Pieces(13枚の写真)

10月の終わり、何やら会議室で作業中のプロデューサー。
やよい「プロデューサー、何をしてるんですか?」
「…やよい?それに、律子もか。どうしたんだ?」
律子「どうしたも何もラジオ終わったら事務所に来てくれって言ったのは、プロデューサーじゃない」
やよい「探しても居なかったんでここかなーって」
「すまんな。ちょっと忙しくて、呼び出したのも忘れてたんだ」
律子「こんなにいっぱい写真を広げて、何してたのよ?」
「ほら、頼まれてたあれだよ」
やよい「こんなに色んな写真ってことは、カレンダーですか?」
「ああ、業者の方から写真を選んでくれってさ」
律子「なるほどね、それで私たちを呼んだと」
「そういうこと。各月何にしようかなと思ってさ」
やよい「分類はしてあるんですか?」
「ああ、大体各月に合うようには分けてあるぞ」
律子「なるほど…4月は桜なのね」
やよい「これって…偕楽園?に行った時のですよね?」
「そうそう。いやー綺麗だったな」
律子「確かに、あの大きさは見事だったわよね」
「だから毎月どんなのにしようかなってさ、これ以外にも選んでたんだけど、なかなかなあ…」
律子「プロデューサー、他の人のもあるんでしょ?」
「ああ。春香たちは仕事終わりで駆けつけてくれるんだけど、あと二組は誰かしらが都合つかなくてさ」
律子「それならこっちはこっちでやっておくわよ」
「すまんな、これから迎えにも行かなくちゃだからさ」
律子「最終チェックはしてくれるんでしょ?」
「それは必ずするつもりだけど」
律子「それなら行ってきて。私たちで片付けちゃうから」
「ありがとうな。じゃあちょっと行ってくるから」
バタンっ
そのままプロデューサーは迎えへと行ってしまった。
律子「それじゃあやりますか。やよい、やるわよ」
やよい「はいっ!」
律子「まずはじゃあ…1月ね。これは…栃木県だったかしら」
やよい「あ、巫女さんの格好になった時ですよね?」
律子「そうそう、本当に神社だからって巫女姿で取材だなんて単純よね…」
やよい「でもでもとっても可愛かったですー」
律子「まあ…そうね。それじゃあどの写真にしようかしら?」
やよい「えっと、うーん…」
律子「こうなると意外と難しいわね。二人が写っているのは少ないけど…」
やよい「あ、これがいいです!」
そこには二人が仲良く境内を掃き掃除している姿があった。
律子「そうねえ…ま、いいか。これ以外にいい写真も無さそうだし」
 
律子「12月はこれね。ふう…これで全部集まったわ」
やよい「はいっ、律子さんごくろうさまでした」
律子「やよいもおつかれさま。こうして見ると、いっぱい色んなところに行ったわね…」
やよい「私、今までこんなに色んなところに行ったことは無かったです」
律子「近場はいいけど遠くにはなかなか行けないからね」
やよい「どれも本当にいい思い出です」
律子「私もよ。あ、そういえば…」
やよい「どうしたんですか?」
律子「もしかしたらもう1枚要るかもって思ったの」
やよい「もう1枚ですか?」
律子「表紙よ、表紙」
やよい「あー!確かに必要ですっ」
律子「でもどんな写真がいいのかしら…」
やよい「選んでない写真って…歌ってる時の写真は無かった気がします」
律子「そうね、やっぱりそっから選ぶしかないわよね」
やよい「でもでも、いっぱいあって選べないです…」
律子「うーん、仲良く写ってるのがいいわよね」
やよい「…それなら…これはどうですか?」
律子「いいけど…やよいは恥ずかしくないの?」
やよい「ちょっと恥ずかしいですけど、一番いい写真だと思います」
律子「確かにね、これ以上無いほどぴったりくっついてるし…」
そう、その写真は笑顔で頬をくっつけている二人だったのだ。
律子「でもやよい、これが店頭に貼ってあったらどう思う?」
やよい「え?あ、恥ずかしいですー…」
律子「そうよね、でも選んだら色々な本屋とかに貼られちゃうのよ」
やよい「わ、わ、それは…うー…」
律子「ね、だからこれだけはやめましょ」
やよい「そ、そうですね」
律子「んー…じゃあこれはどうかしら?」
やよい「あー、これってあの曲のですよね?」
律子「そうね…っていつの間にこんな写真撮ってたのかしら…」
やよい「でも凄くかっこよく写ってますね」
律子「うん、やよいはこれでいいかしら?」
やよい「はい!これなら表紙にしても恥ずかしくないです」
律子「じゃあこれにしましょ…ん?」
やよい「どうしたんですか?律子さん」
律子「ちょっとこれはっ…」
やよい「プロデューサーっ………」
ふと、目を付けた1枚の写真に見入る律子。
そしてそれを見たやよいも唖然となってしまった…
ガチャっ
そして折りしもタイミング悪く帰ってきたプロデューサー
「ゴメンゴメン、道が混んでて…ってどうしたんだ?二人ともその顔は…」
律子「プロデューサー、どうしてこんな写真があるんですか?」
と、プロデューサーへと突きつけた写真には…
「い、いや偶然撮れただけだってば!」
律子「偶然?偶然にしては視点も低いですよね?」
どんな写真だったかは、最早言わずもがなである。
やよい「これってパンチラって言うんですよね?律子さん」
律子「そうね、やよい。プロデューサーはきっとこんな写真で興奮するのね」
「本当に偶然だって!」
律子「じゃあどうして消去とかしてないんですか!」
「それは…俺だって男だからな」
ついに開き直ったプロデューサー。
律子「ふうん、そこまで言うなら…やよい、ちょっといいかしら?」
やよい「何ですか?律子さん」
律子「あの…可哀そうだし、この写真返してあげてもいいかしら?」
やよい「えっと…そうですね」
やよいも何かを察したようだ。
律子「プロデューサー、この写真はお返しします。但し、もう金輪際こんなことはしないでください!」
「本当にゴメン!…っていいのか?」
律子「写真を捨てるのは何だか気味が悪いし、こうだとは言え私たちのことを思ってくれてるんだから」
やよい「もう、こんなことしたらメッ、ですからね」
「律子…やよい…」
律子「まったく…そんな写真一枚で涙ぐまないでよ、ほら私たちのチェックしてってば」
「あ、ああそうだな。どれだ?」
律子「この13枚ですけど…」
「お、うまく12都県に散らばったな…うん、いいんじゃないか?」
プロデューサーはホッとしたやら落ち込んだやら、気分は散々だったという…
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あとがき
ども、飛神宮子です。
何かカレンダーネタだったら面白くないか?と思って書きました。
ちなみに最後に12都県と書いてありますが、広域関東圏のことです。
行った場所もきちんと想定してありますよ。
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2008・12・21SUN
飛神宮子
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