Freedom to Choose one's Occupation(職業選択の自由)

「ええっ?それはどういうことですか?小鳥さん」
小鳥「最近色んな衣装を着せてダンスさせてるのはプロデューサーさんでしょう」
「そうですけど…」
小鳥「だって、このファンレターの山を見てください」
プロデューサーの机へと段ボール箱が二つ。
小鳥「これ、全部ファンからの衣装やシチュエーションの要望ですよ」
「ええっ!?こ、こんなに来てるんですか?」
小鳥「ええ、一応そういう奴だけこれに入れてたんですけど…」
「なるほど…ちょっと見ていいですか?」
小鳥「はい、どうぞ」
「ま、今日はオフにさせてありますから、ゆっくり見てみます」
………
「まずは春香か…ふむ、何々?バスガイドねえ…」
………
春香『本日は○○交通をご利用いただきましてありがとうございます』
と、想像に耽るプロデューサー。
春香『ガイドを務めさせて頂きます天海です。今日はよろしくお願いします』
「なかなか良さそうだな、うん」
春香『本日はえーっと…あ、すみません。東京の下町の方を7時間かけて巡ります』
「うんうん、春香ならこうでなくっちゃな」
春香『昼食は佃で予定しております。もしご気分の悪くなった方が居られましたらいつでもお申し付けください』
「でも、なかなかさまになってる気がするな、これは」
春香『では、本日は楽しい時間をお過ごし…ふわあっ!』
どんがらがっしゃーん
バスの揺れで盛大にこけた春香であった。
………
「なるほど、これはいいかもしれない。次は千早…お、女医さんか」
………
千早『今日はどうなさいましたか?』
患者P「えっと、ちょっとセキで喉が痛くて、あと熱っぽいのもあって…」
千早『典型的な風邪のようですが、少し診てみますので口を開けてください』
患者P「はい、アーン」
千早『ん?…まったく、どうしてこんなになるまで来ないんですか!』
患者P「え、えっと…」
千早『ここまで体調管理が出来ないなんて…社会人失格ですよ』
患者P「そんな、そこまで言わなくても…」
千早『薬だと三日分になりますが、職業はプロデューサーですか…それなら注射がいいですか?』
患者P「はい、できれば注射でお願いします」
千早『分かりました、それではそこのベッドに横になってください』
………
「これはこれでいいかも…次はあずささんだな。どれどれ…旅館の女将さんか」
………
あずさ『いらっしゃいませ〜、△△荘へようこそ〜』
お客P「あ、どうも」
あずさ『こちらの部屋の担当になりました、三浦あずさです〜』
お客P「あ、よろしくお願いします」
あずさ『えっと〜、あら?何を説明すれば良かったのかしら〜?』
お客P「ええっ!?ちょ、ちょっと…」
あずさ『ああ、そうでした〜。非常口は部屋を出て左側の突き当たりです〜』
お客P「はい、分かりました。あ、そうだ…食事はどうなってますか?」
あずさ『あ、はい〜、どうだったかしら〜…ちょっと待ってください〜』
お客P「え?ちょっとしっかりしてくださいよ…」
………
「だ、大丈夫なのか?これ。お、亜美と真美は…美容師って、うーん…」
………
亜美・真美『『いらっしゃいませ〜』』
お客P「え?ええっ!?」
亜美『どうしたの?お客さん』
お客P「双子の美容師なんですか?びっくりしたなあ」
真美『あーよく言われるよねえ、亜美』
亜美『うん、そうだよ。でも腕は確かだから大丈夫だよ。ね、真美』
お客P「その割には客が居ないような気がするんですけど…」
亜美『むー、でも腕は確かだよ。評判は身内だけにだけど』
真美『ねー、何でお客さん来ないんだろうねー?』
お客P「ちょ、ちょっと待ったー!」
………
「とんでもない髪型にされそうだ…これ以上は想像するのは止めておこう」
と、我に返ったプロデューサー。
「あ、伊織は…やっぱり花屋みたいに可愛いのが求められてるわけか…」
………
伊織『いらっしゃいませ…アンタまた来たの?』
お客P「何だよ、客にその態度は無いだろ」
伊織『で、今日は何を買ってくわけ?』
お客P「え?ああ、いつものやつ。リボンも頼むわ」
伊織『アンタも懲りないわねえ…はいはい、分かりました』
お客P「そんなのこっちの勝手だろ?まったくどうしてなんだよ…」
伊織『みんなアンタの趣味を知って逃げてるんじゃない』
お客P「そうだけどよ…って何でお前が顔を赤くしてるんだよ」
伊織『そ…そんななってないわよ!もう…はい、出来たわ』
お客P「サンキュ、はいこれお代。あ、あとこの一本はお前にやるわ」
伊織『…えっ…ありがと』
………
「性格知ってるとこうなるよなあ…って失礼か。次は美希か。うーん、看護婦って…大丈夫か?」
………
美希『ハニー、検温に来たの!』
患者P「おい、ここでハニーは無いだろ?いくら恋人でも…」
美希『だって、ハニーのこと大好きだもん』
患者P「…ったく、しょうがないな…分かったよ」
美希『それじゃあ、はいこれ。鳴ったら渡してね』
患者P「ん、まったくこの歳になって入院するなんてなあ」
美希『でも本当に心配したんだから。重傷って聞いたときはホントに…』
患者P「それは謝るよ美希、ゴメンな。…って鳴ったな、はい」
美希『ありがと、それじゃあ昼にまた来るからね』
患者P「ん、分かった」
………
「これじゃ完全にバカップルじゃないか。次、次っと。やよいはなるほど、幼稚園の先生ね…」
………
やよい『はーい、今日はダンスですよー』
「なるほど、これはあっても確かに…」
さすがにこれはプロデューサーも園児になるのを想像しなったようだ。
やよい『先生の伴奏に合わせて行くよー、せーのっ』
と、オルガンで演奏を始めるが、途中で間違うやよい。
やよい『あれ?ゴメンねみんな。もう一回行くよー、せーのっ』
再び演奏を始めるが、また同じところで間違うやよい。
やよい『うー、もうオルガン止めたっ!先生の歌に合わせて踊ろーっ!』
園児たちはそれに合わせてダンスを始めた。
やよい『…うっうー!やっぱり歌って楽しいねっ、みんなっ!』
………
「ちょっと悪いけど、似合ってるなやっぱり。えっと律子は、そうか検事かあ…」
………
律子『被告人はアイドルAさんやBさんが嫌がっていたにも関わらず、胸を触った。その罪は重いと思われます』
被告人P「これはコミュニケーションの一環で…」
律子『被告人はコミュニケーションの一環だと言っていますが、これは明らかにセクシャルハラスメントです』
被告人P「でも…」
律子『アイドルAさんの証言によると、何も関係無い時に胸を触ってきたと』
被告人P「しかし、彼女は触って欲しいような風貌で居たんです!」
律子『あと、Bさんは嫌がってガードしている所を、無理やり触ってきたと証言しています』
被告人P「それは確かに…」
律子『以上の行為に対し、検察として2年を求刑したいと考えております』
被告人P「そ、そんな…」
裁判官「静粛に、これより30分の休廷とします。判決は休廷の後に申し上げます」
………
「やっぱりそうなるよなあ…雪歩はっと、ファンは巫女みたいなのを求めてるのか…」
………
雪歩『あ…あわわ…人が多くて…』
お客P「すいませーん、お守りと破魔矢をくださいー」
雪歩『は、はいー…えとえと…1800円ですぅ…』
お客P「はい、2000円でお願いします」
雪歩『はい、お釣りはあれ?どこ?あれ?あ、あった。はい200円のお釣りです』
お客P「確か…あれ?これ50円玉ですよ」
雪歩『え?ええっ!?す…すみません、こんなダメダメな私は穴掘って…』
お客P「そんな余裕無いと思うんですけど…後ろこんな居るし…」
雪歩『はいす、すみませんそうですね…あ、あと50円です』
お客P「確かに、ありがとうございました(何だか可愛かったなあ…)」
………
「雪歩もちょっと心配かも。真は婦人警官か、ちょっと意外かも…真のスカート姿なんて…」
………
『まったく、最近多いなあ…困るんだよなあ…』
と、車のタイヤと路面にチョークで線を引き始める真。
『駐車違反、何とかならないかなあ…ん?』
「すいませーん、それ俺の車です」
『え?これですか。まったく…ダメですよ』
「すみません、ちょっとそこでご飯食べようと思ってて…」
『はい、違反切符です。ここは駐車禁止区域だから2点と1万5千円』
「うわあやっちゃったなあ、点数これで残り1桁か…出費も痛いなあ」
『だからこれからは面倒くさがらずに駐車場に入れること』
「はい、分かりました」
『それじゃあ気をつけて、今度やったら関節外しますからね』
………
「真にだったらやられても…」
小鳥「あ、あの…プロデューサーさん」
「小鳥さん、どうかしましたか?」
小鳥「さっきから全部声に出てるんですが…」
「え?マジですか…?」
小鳥「はい、バッチリと。しかもセクハラ発言まで…」
「わー!忘れてください!忘れてください!」
小鳥「どうしよっかなあ…あ、アレ食べたいなあ…」
「分かりました、分かりましたからお願いです…」
小鳥「しょうがないですね、アイドルのみんなには話しません」
「ありがとうございます、はあ…焦った焦った…」
これからの出費に少し泣きを見たプロデューサーであった…
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あとがき
飛神宮子です。
投稿ネタの昇華もこれで5回目。まったく、楽しいこと楽しいこと。
これも前作と同じ曜日に出したということ=同じ投稿用サイトの投稿ネタです。
内容的には何となく合いそうなのと、あえて合わなさそうなもので…
一番難しかったのは、実は雪歩だったり…
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2008・07・08TUE
飛神宮子
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