No one will Ever Know(二人だけのコト)

ここはある日の事務所…
真美「ねーねー兄ちゃん、ひまひまー!」
「そんなこと言ったって、真美は何しに来たんだ?」
真美「だって今日は亜美が仕事だからついてきただけだよ」
「その亜美は…ああ、竜宮小町の方に行ったのか」
真美「だからひまひまー!」
「とは言ってもだな、今日は俺は事務所で留守番だから何も動けないんだぞ?」
真美「あれ?ピヨちゃんは?」
「音無さんは今日は社長に同行してる。だから出張扱いになってる」
真美「へー、そうなんだ」
「俺が動きようがないから、今日は竜宮小町以外はオフにしてあるんだよ」
真美「それにしても今日は静かだねー」
「誰もいないからな。真美もオフなんだからどっか出かけても良かったんじゃないか?」
真美「友達だって予定が合う時とそうじゃない時があるんだよ」
「ま、そういうもんだよな」
真美「兄ちゃんは何してんの?」
「俺か?今は今度の新曲のチェックしているだけだぞ」
真美「誰の曲?」
「えっと…確か真美達のもあるはずだな。他の人のも入れて結構色々あるぞ」
真美「真美にも聴かせてよ」
「いいけど、まだ仮歌しか入ってないからな。じゃあ隣の椅子借りてこっち来て」
真美「ほいほーい」
隣の机の椅子を持ってきてプロデューサーの右隣へ来た真美。
「はい、こっちのイヤホンでいいか?」
真美「んー」
プロデューサーは左耳のイヤホンを外して真美へと渡した。
「じゃあ再生するぞ」
真美「ちょっと待って…ん、いいよ」
Pi♪
プロデューサーはプレイヤーの再生ボタンを押した。
♪〜
二人の耳へと音楽が流れ込んでいく。
 
〜♪ Pi♪
曲の再生が終わり、プロデューサーはプレイヤーの停止ボタンを押した。
「どうだ?」
真美「んー、何だか不思議な感じの曲だね」
「そうだよな。リズムも難しいし、音程もなかなか難しそうな曲だ」
真美「今までは明るい曲が多かったけど、これって何かアジアっぽい感じかな」
「そうだなあ…中東って感じもちょっとあるよな」
真美「この曲を今度歌うんだね」
「一応まだ候補の1曲だ。まだ何曲かあるぞ」
真美「そなの?そっちも聴かせてよー」
「ちょっと待って、今何番目に入っているか確認するから…」
 
その何曲かを再生中のこと…
真美「兄ちゃん…」
「どうした?真…」
ぴとっ
真美は椅子をくっ付けて、プロデューサーへと寄り添う形になった。
「真美?!」
真美「こうしてていいかな?」
その真美の顔はどこか寂しそうな感じも見受けられた。
「どうしたんだ?急に」
真美「何となく…だって誰も他にいなかったからさー」
「ま、いいけどさ」
真美「兄ちゃん…温かいな」
「…そうか?」
真美「うん…」
 
「貰ったのはこの5曲なんだけど…どうだ?」
真美「どれもいい曲だったねー」
「俺も迷ってるんだよ。今度真とも一緒に相談になるだろうな」
真美「兄ちゃんとしてはどれを歌って欲しいの?」
「俺か?俺個人としては…挑戦して欲しいところもあるから1曲目と…3曲目と4曲目かな」
真美「2曲目も捨てがたいよー、5曲目もね」
「今回シングルに入れない曲も別に捨てるわけじゃないぞ」
真美「そうなの?」
「ああ。アルバムには入れる予定だから収録自体はしてもらうんだ」
真美「そうだったんだ、まこちんとだとどんな曲になるかなー?」
「こればかりはやってみないことには分からないな」
真美「そうだよねー」
「よし…今日聴いてもらえたのは良かったのかもな…って真美?!」
ぽふっ
いつの間にか真美の頭はプロデューサーの太ももの上へと移動していた。
「どうしたんだ?今日はこんなに甘えてきてさ」
真美「何となく…だよ」
「何となくでここまでやってこないだろ?」
真美「う、うん」
「どうしたんだ?」
真美「何でもないってば、何でも」
「本当のこと話してくれないと起こすぞ」
真美「うー…兄ちゃんの意地悪ー」
「それでどうなんだ?」
真美「ちょっと寂しかったんだ…」
「寂しかった?」
真美「ママもパパも今日はいなくって、亜美だってお仕事でしょ?」
「ああ、そうだな」
真美「本当は兄ちゃんが今日一人だって、最初から知ってたんだ」
「えっ…」
真美「だから今日、兄ちゃんに甘えようって。亜美と一緒に来たのも言い訳だったんだよ…」
「何だよ…そういうことなら言ってくれれば良かったのにさ」
真美「だって兄ちゃん、そう言っちゃうと無理して仕事片付けて構っちゃうもん」
「真美…」
真美「兄ちゃん、もうちょっとこうしててもいい?」
「いいけど…あ、ちょっと起きてくれる?」
真美「ん?どして?」
「あっちのソファに移動しよう。今日はこれ聴いて評価付けるくらいだからさ」
真美「りょーかいっ」
数十分後、ソファの上にはプロデューサーの膝枕にすやすや眠る真美の姿があったという…
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あとがき
どもっ、飛神宮子です。
久々の真美単騎。
一人、それは自由であり孤独。人の温もりというのは他に変えられません。
寂しい感情に真美もつい誰かに甘えたくなっちゃったのでしょう。
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2013・01・31THU
飛神宮子
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