Sound Opens out Nighttime Sky(夜空に咲く音)

梅雨も明けたかよく分からない、とある地方都市のとある夕方…
律子「ここが会場ですか、プロデューサー」
「ここは観覧会場の中では一番綺麗に見えるらしいぞ、律子」
やよい「すっごく楽しみです!」
律子「しかしねえ…私たちだけいいのかしら?」
やよい「プロデューサーの地元なんですよね?」
「ああ。毎年この日が花火大会なんだ、やよい」
そう、このとある地方都市とはプロデューサーの地元でもある。
「たまにはこういうのも良いだろ?」
律子「そうね、最近ライブずくめだったし」
やよい「今日はゆっくり花火を見ちゃいましょう!」
律子「ところでプロデューサー、打ち上げ場所は?」
「えっと、確かここからだとあっちの川の方だな」
律子「また随分と近いのね、500mくらいかしら」
「その分大迫力だぞ。音が鼓膜に響いてくるくらいだからな」
やよい「うあー、凄いです!」
律子「でもねえ…最近ずっとライブだったのに、今日は移動無しで…いいの?本当に」
「大丈夫だ。そのためにきちんと日程組んだんだからな」
やよい「ありがとうございます、プロデューサー」
「それにな、今回は…あ、これは秘密にしておくか」
律子「何ですか?いつもそういうこと言うんだから」
やよい「でもでも、何かあるんですね?」
「ああ、あるとだけは言っておこう」
律子「ま、いいわ。いずれ分かるんでしょ?」
「確実に分かるぞ、確実にな。それにしても二人ともよく似合ってるな」
やよい「ありがとうございます!」
律子「おかげで少し荷物が増えたのよね」
「それはスマンな、でもどうしても二人のこういう姿も見てみたかったんだ」
律子「ライブではとてもできないから、こういうのも新鮮でいいけどね」
やよい「はい!」
「ところでお腹は大丈夫か?」
やよい「ううー、確かにお腹空いちゃいました」
律子「やよいったら…でもそうね、始まっちゃう前に食べちゃった方が良いかしら」
「見ながらだと食べてられないからな、はい弁当とお茶と…除菌のティッシュ」
律子「ありがと」
やよい「ありがとーございます」
「それじゃあ」
3人「「「いただきまーす」」」
3人はとりあえずの腹ごなしに入った。
 
時は少し流れ…
律子「プロデューサー、確か15分からですよね?」
「ああ、そろそろだな」
と、その時…
ピュー… パッ ドンっ
やよい・律子・P「綺麗です…」 「綺麗ね…」 「綺麗だな…」
近いからこそ味わえる大きな光と鼓膜へと直接響くかのような音。しかし感想は一つだった。
3人はしばらく何も言葉にせず、ただ酔いしれていた。
………
しばらくして…
司会『続いては、昨日秋のま〜ちによるライブがありました、東京から765プロダクションの特別協賛によるスターマインです』
律子・やよい「「えっ…!?」」
キョトンとする律子とやよい。
律子「ど、どういうことよ?プロデューサー」
「どういうことって…こういうことだよ」
やよい「プロデューサー、秘密ってもしかしてこれだったんですか?」
「そういうことだ。新曲のプロモーションも兼ねてるからな…」
放送が流れていたスピーカーから、2人が歌っている新曲が聴こえてきた。
ピュー… パッ ドンっ パッ ピュー… ドンっ パッ ドンっ…
その曲に合わせるかのように色とりどりの花火が空へと舞っていった。
律子「それにしてもこれ、幾らかかったの?」
「…社長か小鳥さんにでも聞いてくれ。俺、実は知らないんだ」
律子「でも立案したのはプロデューサーでしょ?」
「確かにそうだけど、2人ともノリノリでさ…」
律子「はあ…まあそれならいいわ」
やよい「だけどこんな演出って他じゃ無理ですよね」
律子「そうね、これで少しでも私たちのことを知ってくれるならいいかしら」
やよい「でも本当に花火って、この歌みたいに色んな色があって凄いなあ」
律子「♪♪♪♪〜 ♪♪♪〜 ♪♪♪♪〜 ♪♪♪〜 確かにそうね」
やよい「♪♪♪♪〜 ♪♪♪〜 ♪♪♪♪♪♪♪♪〜 はいっ」
スピーカーから流れてきたサビに合わせて歌った2人。
司会『ただいまの花火は、765プロダクションの協賛でした』
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
会場内から割れんばかりの拍手が響き渡った。
律子「プロデューサー…ありがと」
やよい「ありがとうございました!」
「お礼なら協賛金を出すことを決めた社長に言ってくれよ」
律子「あと、この花火を製作してくれた人にもお礼を言いたいわね」
やよい「それとこの祭りをやってくれた人にもです」
「そっちは後で御礼状を出す予定だったから、一言書いてくれるか?」
律子・やよい「「はい」」
「ん、じゃあそれで手筈しとくから」
律子「あの…プロデューサー」
「何だ?律子」
律子「さっきの歌で、若干周りの人に気付かれたっぽいんだけど…」
「えっ!?」
見回してみると、幾つかの視線がこちらに向けられていた。
やよい「どうしたらいいんですか?プロデューサー」
「…どうしたらいいと思う?律子」
律子「前に出て歌うとか、サインするとかしかないかしら」
「2人とも…いいのか?」
律子「私は…しょうがないし、いいわよ」
やよい「うー…アカペラだとちょっと不安だけど…たぶん大丈夫です」
「しょうがない次の花火との合間に何とかするか」
律子「そうね」
「はい、二人とも飲み物飲んで」
新しい飲み物を手渡すプロデューサー。
律子「ん、ありがと」
やよい「ありがとうございます」
その後、花火を背景にしてアカペラで新曲を歌った2人なのであった…
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あとがき
ども、飛神宮子です。
昨日地元の花火大会があったもので…
結構近い場所で見てたので、本当にこんな感じになるんですよ。
鼓膜に響くっていうのはこういうことなんだなって…思いますよ。
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2009・08・10MON
飛神宮子
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