ここはある日の765プロ事務所… |
響 | 「なあ美希」 |
美希 | 「どうしたの?響」 |
美希と響は事務所内の施設で一緒に体力作りに励んでいた。 |
響 | 「美希は元はといえばこの事務所だったんだよな」 |
美希 | 「そうだよ。それがどうかしたの?」 |
響 | 「どうして961に来ることになったんだっけ?」 |
美希 | 「あれはみんなプロデューサーさんが悪いの。ミキの愛を全然受け入れてくれなかったんだよ」 |
響 | 「へえ、でもあのプロデューサーなら仕方ない気もするさ」 |
美希 | 「でもあの頃のミキは、どうしてもプロデューサーさんに振り向いて欲しかったんだもん」 |
響 | 「独占欲ってやつか?」 |
美希 | 「うん」 |
響 | 「あの頃からあの性格なのか?プロデューサーって」 |
美希 | 「博愛…だっけ?それはずっとだよ」 |
響 | 「なるほどなー…おっと、危なかった」 |
響はルームランナーで転びそうになったようだ。 |
響 | 「でも無理だろうなー、だって今のプロデューサーはもう…」 |
美希 | 「うん…小鳥のものだもん。振り向かせられなかったのは残念だけど、もう諦めがついたの」 |
響 | 「そうなのか?」 |
美希 | 「他のアイドルだったら何となく嫌だけど、小鳥は違う気がするの」 |
響 | 「まあ分かる気がするけどなー」 |
美希 | 「でもどうしてこんなこと聞いたの?」 |
響 | 「…何でもないぞ」 |
美希 | 「えー、そんな風には見えないよ」 |
響 | 「…昔っから洞察力だけはあるんだよな、美希は」 |
美希 | 「だってミキの趣味はバードウォッチングなの」 |
響 | 「観察力だけは鋭いのか、納得したぞ」 |
美希 | 「それでどうしたの?」 |
響 | 「いやさ、美希は帰ってくる理由があったからいいんだ。自分と貴音は違うじゃないか」 |
美希 | 「そだね」 |
響 | 「だから何て言うかさ、ちょっと罪の意識って残ってるんだ」 |
美希 | 「あー、そっか。765プロにしちゃったこと?」 |
響 | 「うん…」 |
美希 | 「でもそれはもういいって、真クンも春香もやよいも言ってくれたんだよね?」 |
響 | 「だけどそれは違うさ。やってきた自分とやられてた方は違うんだぞ」 |
美希 | 「もう…響は、罪の意識にさいなまれ過ぎなの」 |
響 | 「そっかな?」 |
美希 | 「同じ事務所になったんだから、響が思ってるほど過去のことを気にしてなんていないよ」 |
響 | 「そうであって欲しいけどなー」 |
美希 | 「それにそうじゃないなら、真クンがユニットなんか組んでくれないと思うな」 |
響 | 「…うん」 |
美希 | 「でも羨ましいの。ミキも真クンとユニットが良かったなー」 |
響 | 「美希って今は伊織とだっけ?」 |
美希 | 「デコちゃんとは同い年だから楽しいけどね」 |
響 | 「そっか、でも同い年には見えないよなー」 |
美希 | 「デコちゃんが子供すぎるからなの」 |
響 | 「…行動とか性格とかは美希の方が子供っぽく見えるけどな…」 |
美希 | 「…響、今何か言った?」 |
響 | 「…え?」 |
美希 | 「なーんかすっごく失礼なこと言ってた気がするの…」 |
ピッピッ |
美希は何やらボタンを押した。 |
響 | 「わっ!わわっ!高速モードにするなあっ!」 |
どうやら響のルームランナーの速度を変えたようである。 |
美希 | 「失礼なことを言った罰なの」 |
響 | 「と、止めてえっ!」 |
美希 | 「降りて止めたらいいんじゃないかなって思うよ」 |
響 | 「おっとっとっとっとっ!」 |
トンっ… トンっ… |
響の足がようやく脇のベルトの無い所に落ち着いた。 |
ピッピッ |
そしてそのまま速度を落とした。 |
響 | 「ふう…酷いぞ美希」 |
美希 | 「でも先に失礼なことを言ったのは響の方なの」 |
響 | 「…ゴメン、悪かったさ」 |
美希 | 「別に怒って無かったよ」 |
響 | 「美ー希ーっ!謝らすなっ」 |
美希 | 「だってミキ、謝ってとは一言も言ってないの」 |
響 | 「…騙された」 |
美希 | 「アハハっ!やっぱり響って面白いの」 |
響 | 「自分のことからかったんだなー」 |
ガチャッ |
そこに一人の青年がやってきた。 |
P | 「お、美希と響はトレーニングか。感心感心」 |
美希 | 「ハニー、どうしたの?」 |
響 | 「プロデューサー、どうしたんさー?」 |
P | 「いや、ちょっと各部屋の様子を見に来たんだ。今日はレギュラーのを除いてオフ日だからさ」 |
美希 | 「他のみんなも来てるの?」 |
P | 「結構来てるぞ。えっと…レギュラー組と春香とあずささん以外は全員いるかな」 |
美希 | 「真クンは?」 |
P | 「確かダンスレッスン場…」 |
びゅうんっ |
美希はそれを聞くやいなやトレーニングルームを飛び出していった。 |
響 | 「…全く、本当に美希は真に目が無いな…」 |
P | 「そうだな、響」 |
響 | 「自分も真と打ち合わせがあるんだけどなー、まあ後でいいか」 |
P | 「それじゃあ響はまだここでトレーニング続けるのか?」 |
響 | 「んー、もう少しかな。やよいは?」 |
P | 「あ、やよいは律子と今日はラジオだな。さっき言ってたレギュラーのやつ」 |
響 | 「そっか。ここってラジオあったっけ?」 |
P | 「ラジオなら、そこの機械を操作すれば流せるぞ」 |
響 | 「プロデューサー、セットして欲しいなー」 |
P | 「まったく…仕方ないな」 |
ピッピッピッピッピッ |
プロデューサーの操作でスピーカーからラジオが流れ始めた。 |
P | 「終わったとか部屋を出るときは、ここの電源を切ってくれ」 |
響 | 「サンキュ、プロデューサー」 |
P | 「どういたしましてっと。じゃあ他の部屋も回らなくちゃだから、また後でな」 |
響 | 「うん…ありがと…」 |
『ありがと』に籠められた心…心に刺さっていた物が少し無くなるのを響は感じていた… |