5月のある日… |
海 | 「んー!着いた着いたっ!」 |
伊織 | 「もう海の向こうは四国や九州ね」 |
海 | 「伊織さんは初めて…だよね?」 |
伊織 | 「ここは通過するばかりだったわ、来てみれば結構いいところじゃない」 |
海 | 「ありがとう伊織さん、ウチも久しぶりだな」 |
伊織 | 「そうなのね」 |
海 | 「でもウチの家、大丈夫かな?」 |
伊織 | 「はい?」 |
海 | 「弟たちが伊織さんに迷惑掛けないかなってさ」 |
伊織 | 「大丈夫よ、そういうのは慣れてるわ」 |
海 | 「え!?」 |
伊織 | 「うちのアイドルでやよいって分かるかしら?」 |
海 | 「あ、あの背がちっちゃい人かな?」 |
伊織 | 「そうそう。やよいも兄妹が多くて、たまに家に行ったりもしてるから慣れてるわ」 |
海 | 「それならうちでも問題は無さそうだね」 |
伊織 | 「それで海の下は?」 |
海 | 「え?海って…魚とかいっぱいいるんじゃないかなっ?」 |
伊織 | 「そうじゃなくて、アンタの下よ」 |
海 | 「あ、ウチ!?」 |
伊織 | 「むしろこの話の流れでどうしてそう思ったの…」 |
海 | 「ウチ、海が好きだからね!」 |
伊織 | 「確かに海はそういう雰囲気に見えるのよね」 |
海 | 「こっちに来るとウインドサーフィンをよくやるんだよ」 |
伊織 | 「どうりでねえ…違和感があったわ」 |
海 | 「え?」 |
伊織 | 「筋肉の付き方が何か違う感じがしたの。背筋とかが強そうって感じね」 |
海 | 「やっぱりそうかな。自然と付いちゃったのかも」 |
伊織 | 「ほどほどにした方が良いかもしれないわ。アイドルとしては、見せ方も大事だもの」 |
海 | 「うーん、そっか」 |
伊織 | 「それで話を戻すわよ。海の下は?」 |
海 | 「ウチの姉弟の話だよね?」 |
伊織 | 「そうよ、さっきみたいのは無しね」 |
海 | 「ウチの下は弟ばっかりだけど?」 |
伊織 | 「そうなのね…弟ばっかりとか大変じゃないかしら?」 |
海 | 「伊織さんの兄弟はどうなの?」 |
伊織 | 「私?私は逆に上に兄ばっかりよ」 |
海 | 「伊織さんも男兄妹の中の一人なんだね」 |
伊織 | 「ええ、だから大変よね。私は一番下でわがまま放題だったから、それは正反対みたいだけど」 |
海 | 「でも気持ちは分かるな。それでも気を使うってのは同じそうだし」 |
伊織 | 「そうね。男の兄弟ってどうしても色々気になるわよね」 |
海 | 「確かに思った以上に自分達と違う匂いがするしさ」 |
伊織 | 「そうそう。いくら綺麗にしていても違うって思うわ」 |
海 | 「まーとにかくウチの家に来てもらってから考えることにするかな」 |
伊織 | 「それが一番よ。慣れてさえしまえばどうってことないから」 |
……… |
そしてここは海の実家… |
海 | 「こーら!また倒して!すぐ直しなさい!」 |
伊織 | 「あんたたち、早くやらないと今日の夕食は無いものと思うのよ!」 |
海 | 「伊織さん、何か申し訳ないね。ウチの弟の面倒まで見てもらっちゃって」 |
伊織 | 「だから言ったじゃない、慣れてさえしまえばって」 |
海 | 「お嬢さまだと思ってたから、こういうの苦手だと思ってさ」 |
伊織 | 「そんなことないのよ、事務所でも無邪気な子の尻拭いとかしてたりするから」 |
海 | 「なるほどねえ…って何やってるの!」 |
伊織 | 「きゃっ!何でスカートめくったのよ!」 |
海 | 「あんたたち、本当に明日までお仕置き部屋がいいんだね?!」 |
伊織 | 「カメラマンさん、今のは撮っては…見えてないのね、本当ね?もしそうだったらカットするのよ」 |
海 | 「本当にうちの弟達が…すみません」 |
伊織 | 「ま、まあこれくらいでうろたえたりはしないから大丈夫よ」 |
海 | 「まったく…」 |
伊織 | 「それで…お仕置き部屋はどちらか・し・ら?」 |
海 | 「あっちだけど…伊織さん、もしかして乗り気かい?」 |
伊織 | 「やられたらやり返ししないとよねえ…フフフフフフ」 |
海 | 「じゃあそっちに呼んどくから、みっちりお願いしていい?」 |
伊織 | 「ええ…みっちりお仕置きしてあげるんだから!」 |
……… |
その夜… |
海 | 「今日はありがと、うちの弟達も懲りたみたいだわ」 |
伊織 | 「あれだけやっておけば大丈夫でしょ?」 |
二人は畳敷きに敷かれた布団の中にいた。 |
海 | 「伊織さんもえげつないなあって思ったさ」 |
伊織 | 「でも海の弟さん達、素直で良かったわ」 |
海 | 「まあアイドルの伊織さんが来るってことで興奮していたってのもあるだろうし」 |
伊織 | 「海もアイドルでしょ?」 |
海 | 「そうだけど、でもまさかウチがこういうことに選ばれるなんてね」 |
伊織 | 「行き先はここ山口って決まっていたから、一緒に行くのは海ともう一人だけだったらしいわ」 |
海 | 「それでウチと?」 |
伊織 | 「そうなの。もう一人は私と似た子だったらしいわ」 |
海 | 「伊織さんに似ている…あ、もしかして的場ちゃんかな?」 |
伊織 | 「同じ事務所?」 |
海 | 「うん。確かに似ているところはあるかもしれないさ」 |
伊織 | 「それならそうね。プロデューサーに確かそう言われたから」 |
海 | 「分かる気がするなあ。番組がめちゃくちゃになりそうな気もする」 |
伊織 | 「海とで良かったわ。やっぱりお姉さんしてるところはやよいに似てるわ」 |
海 | 「そう言われるとちょっと照れるな」 |
伊織 | 「やよいはそこまで男っぽくはないけどね、フフフ」 |
海 | 「ウチはそれが売りだから…」 |
伊織 | 「だけどそれが海に合ってる気がする」 |
海 | 「ありがと、伊織さん」 |
伊織 | 「いい家族ね」 |
海 | 「そうかな?」 |
伊織 | 「みんな笑顔だったもの。それだけでいい家族だって分かるわ」 |
海 | 「そっか…いい家族なのかな」 |
伊織 | 「ええ、自信を持っていいわよ」 |
海 | 「うん。そうだな」 |
伊織 | 「それじゃあそろそろ明日に向けて休みましょ」 |
海 | 「明日もまた何かありそうな気がするんだけどさ」 |
伊織 | 「またお仕置き部屋かしらね」 |
海 | 「そうかも…アハハッ」 |
伊織 | 「そうね…フフフッ」 |
二人の顔には思わず笑いがこみ上げてきていたという… |
HAPPY BIRTHDAY!! Iori MINASE.