Lull before the Storm(嵐の前の静けさ)

ここは東京からほど近い温泉。
小鳥「ふぅ〜…」
「こういう時期の温泉も悪くないですね、小鳥さん」
小鳥「ええ。せっかくお休みをいただいたんですから、ゆっくりしましょ」
小さな隠れ宿に居る二人。そしてここは各個室に付いている露天風呂。
小鳥「でもどうやってこんな場所見つけたんですか?」
「ほら、去年雪歩の温泉中継があったじゃないですか」
小鳥「あの雪歩ちゃんの恥ずかしがっている姿が、また保護欲を誘う出来でしたね」
「結構視聴率も良かったらしいですよ」
小鳥「いい具合にあの子をいじってもらえましたしね」
「それでその帰りにこの宿のことを聞いたんですよ」
小鳥「なるほど、そうだったんですか」
「でも大変でしたね、こうしてお休みを作るの」
小鳥「そうですね、これから色々大変になる時期になりますし」
「ゆっくりできるのももう最後でしょうね」
小鳥「新しい展開に向けて動き始めましたからね」
「社長も『もうしばらく、休みは無い物だと思え』って言ってるくらいだからなあ」
小鳥「だからこその休みね。このみんなが夏休みになる時期から忙しくなりそう」
「本格的に出来るのは今からですからね」
小鳥「でも来年からは気を付けないとかしら」
「え?何のことですか?」
小鳥「亜美ちゃんも真美ちゃんも中学生になるでしょ?」
「そうですけど…」
小鳥「この時期は伸び盛りですから…衣装とかもすぐにダメになっちゃうわ」
「なるほど、その辺も考えないといけないのか…」
小鳥「でも来年のことを言うと鬼が笑っちゃうから、今だけは…ね」
「それもそうですね。今日はゆっくりと休みましょう」
 
そして夕食…
小鳥「まったく…社長も人を過労死させる気なのかしらっ!」
「そうですよ…ったく、もう13人もいるんだから少しは人増やせっつーの!」
どうやらアルコールが入っているようだ。
小鳥「律子さんもトップアイドルで忙しいっていうのにねえ」
「社長は聞く耳持つ気無いんですよ、絶対に」
小鳥「でもプロデューサーさん、他の娘に手出したりしてないわよね?」
「そんな…疑う気ですか?小鳥さん」
小鳥「だってぇ、最近私に構ってくれなかったじゃないですか」
「しょうがないじゃないですか。全員ライブで忙しかったんですから」
小鳥「だからって…少しは事務所に顔を出してくれたって…」
「拗ねないでくださいよ、もう…」
ススススス
向かいに座っていたプロデューサーは小鳥の隣へと移動し…
チュッ
頬へとそっとキスをした。
「これでも信用できませんか?」
小鳥「もう…」
チュウっ
小鳥はそんなプロデューサーの方を向いて今度は口付けを交わした。
小鳥「だから今日は、私のこと愛してください…」
「そうしたくて…だからこんな離れ宿を選んだんですよ」
小鳥「その言葉、信用しても…いいんですね」
「そんなに信用してくれないんですか?」
小鳥「そんなことお姉さんに言っちゃうと…」
…あーあ、食事中なのに1回戦が始まったようですよ…
 
どうやらその1回戦も終わったようです。
小鳥「もう、プロデューサーさんったら激しいんだから…」
「小鳥の腰使いの方が凄かったからですよ」
小鳥「だって、久しぶりだったし…」
「ほら、もう料理も冷めちゃったじゃないですか」
小鳥「だけど今の格好だと熱い物が飛んだら悲鳴でしょ?」
「そうですけど…」
小鳥「でも今の私達、誰かに見られちゃったら変態よね」
「だから浴衣着ましょうよ」
そう、二人の浴衣も帯も投げ散らかされていて、下着だけの格好なのだ。
小鳥「ダーメ。どうせすぐにお風呂入るんだから、まだこの格好ね」
「もう、こうなるとてこでも動かないんだから」
小鳥「だってプロデューサーさん、すぐに脱がしちゃうんだから」
「そんな魅力的な身体を目の前にして、我慢なんか無理ですよ」
小鳥「…え?私自身は魅力的じゃないかしら?」
「そんなことないですって。小鳥さんは全てに魅力があります」
小鳥「プロデューサーさんったら口だけは上手…」
「まったく…」
プロデューサーの目がいつに無く真剣になった。
「今日は覚悟しておいてください。もう、小鳥さんのこと寝かす気無くなりました」
小鳥「プロデューサーさん、眼が怖い…」
「だってそんなこと言われたら、こっちだってこうなりますよ」
小鳥「だけど、それでも…期待、してますから…」
 
チュン…チュンチュン…
その翌朝…どうやら本当にオールナイトだったようだ。本当に二人ともお若いこと。
二人とも一糸まとわぬ姿で同衾している。
「でも小鳥さんで良かったですよ、こういう関係になれたのが」
小鳥「私だって、プロデューサーさんで良かったです。分かりあえる人…ですから」
「小鳥さんって本当に今まで、俺以外の恋人っていなかったんですか?」
小鳥「片思い…ばかりでした」
「小鳥さんくらい綺麗な人、本当に勿体ないなあ…」
小鳥「だって、私の性格分かるでしょ?それでみんな…」
「でも俺はそれを含めて好きですから」
小鳥「私、この事務所でお仕事出来て…良かった」
「俺もですよ、小鳥さん」
小鳥「…プロデューサーさんは、こんなお姉さんでもいいんですね?」
「そんな小鳥さんだからですよ」
小鳥「嬉しい…こんなこと言ってくれる人、今まで居なかった…」
「いつまでも小鳥さんのこと、俺が守りますから」
小鳥「プロデューサーさん…」
ぎゅうっ
小鳥はプロデューサーを抱きしめた。互いの肌と肌が直に触れ合って、互いの温もりも伝わっていく…
小鳥「温かい…プロデューサーさんの身体…」
「小鳥さんも、温かいですよ…」
小鳥「まだしばらくこうしてて…いいですか?」
「朝食までまだ時間ありますから、それまでは…はい」
結局朝食が来るまで抱き合ったまま寝てしまい、女将の朝食の呼び声に慌てて起きて着替えた二人であった…
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あとがき
どもっ、飛神宮子です。
…エロいですね、だが謝らない!
いや、せっかくですしたまにはこれくらい書きたくなるものなのですよ。
まあ何と言うか、自分で書いていて言うのも何ですが…このバカップルめ!
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2010・07・09FRI
飛神宮子
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