Lost Heart Property(ココロの忘れ物)

ここはある日の事務所…
♪〜
律子が事務仕事をしていると電話が来たようだ。
カチャッ
律子「はいもしもし、765プロダクションです」
千早『もしもし』
律子「あら、千早。どうしたの?」
千早『そっちにプロデューサーって戻ってないかしら?』
律子「プロデューサー?いないわよ…どうしたの?」
千早『変ね…そっちに戻るって言ったんだけど…』
律子「え?でも今日って千早と春香と一緒にミニライブでしょ?」
千早『それはもう終わったのよ。それで春香と一緒にそっちに戻るって40分前に別れたんだけど…』
律子「そこからだと20分くらいよね…ちょっと待って、こっちから連絡入れてみて何か分かったら折り返し掛けるわ」
千早『ええ、分かったわ』
カチャンッ
律子は電話を切った。
律子「どこ寄り道してるんだか、プロデューサーったら…」
カチャッ ピッピッピッ
律子は短縮ダイヤルでプロデューサーの携帯電話を呼び出した。
律子「………反応無しね…でも電波は…届いてるのね」
カチャカチャカチャ
律子はパソコン画面でプロデューサーのいる位置をGPSで確認した。
律子「えっと…えええっ!?」
律子はその画面を見て驚きを隠せない様子である。
律子「これは連絡入れないと…」
カチャッ ピッピッピッ
律子は短縮ダイヤルで今度は千早の携帯電話を呼び出した。
律子「もしもし千早?」
千早『律子?それで…プロデューサーは分かったの?』
律子「ええ、事務所の中にいるわ。それでどんな用事なの?」
千早『今日、次の新曲の楽譜を持ち帰って練習しようと思って…でもそれをプロデューサーが事務所に置いてきたらしくて…』
律子「それで…そういうことね」
千早『私の家がここから近いから、春香を送ってからここまでもう一度取りに戻ってくれるって…』
律子「なるほど。ちょっと今、首根っこ掴まえて連れてくるから。もう少しそこで待ってて」
千早『分かったわ』
カチャンッ
律子「さてと…ちょっと行ってきますか。小鳥さん、鍵を貸して下さい」
小鳥「どこの?」
律子「衣裳部屋の鍵をお願いします」
小鳥「衣裳部屋…衣装部屋…はい、これね」
小鳥は律子へと鍵を手渡した。
律子「ありがとうございます。しばらく借りますね」
小鳥「終わったらこっちに戻してね」
………
ここは765プロの衣裳部屋…
律子「光が出ているってことは中にいるのね…」
ガチャッ ガチャンッ
律子は手にしていた鍵で鍵を開けてドアを開けた。
律子「プロデューサー?」
「え?律子か…どうしたんだ?」
プロデューサーは突然の来訪者に驚いた様子である。
律子「どうしたもこうしたもないわ。その様子だと千早のこと忘れてるでしょ?」
「え…あ…そ、そうだった!で、でもどうして知ってるんだ?」
律子「さっき千早から電話が来たのよ。プロデューサーが戻ってこないって」
「そうか…電話は…あれ?どこだ?」
律子「プロデューサー、もしかして車の中に置きっぱなしにしてるんじゃないの?」
「そうかも…ちょっと行ってくる。あ、律子お願いがあるんだけど…」
律子「何かしら?」
「俺の机の上にある○○○社の薄青緑の封筒を取ってきてくれないか?中身は歌詞とか楽譜が入っているはずだ」
律子「しょうがないわね…分かったわ」
………
さてここは…
律子「それで…どうして私が一緒に行くわけよ」
「いや、何ていうか…成り行きだな」
律子「仕事がもうほとんど片付いていたからいいけど…」
「それなら付いてくるって言わなければ良かったじゃないか」
律子「まあ確かに…私もつい乗せられて車にも乗せられたわけだけど…」
「しかし俺も電話を忘れてたとは不覚だった」
律子「もう…緊急の連絡が入ったらどうするつもりなのよ」
「千早からの不在着信が10件あったのは何か見てて申し訳なかったさ」
律子「ほら、そんなこと言ってないで。着いたんだから早く千早に謝って連れてきたら?」
「そうだな、律子は車で待ってるんだな?」
律子「そうするわ。行ってらっしゃい」
 
律子「おかえり、プロデューサー、千早」
「はあ…」
千早「もう…プロデューサー…」
少し落ち込んでいるプロデューサーと少しお怒りモードの千早が一緒に車へと戻ってきた。
「本当にゴメンって」
千早「でも春香に言われたことに感けて、私のこと忘れてたんですよね?」
「それはそうだけど…」
千早「もう…私のことなんて…」
「そんなことないって、春香も千早も俺にとっては大切だよ」
千早「でも忘れていたっていうのは事実でしょう?」
「それはそれでだな…」
律子「もう、二人ともいいかげんにしなさい!」
千早・P「「り、律子!?」」
その剣幕に驚く二人。
律子「一番悪いのは確かにプロデューサーよ。携帯電話を忘れるなんて言語道断」
「う…それはそうだな…」
律子「千早、千早も同じことを何度も蒸し返さないの。何気に依存的なのは分かるけど…」
千早「ええ…」
律子「もうこうして終わったことなんだから、二人ともそれで終わりにして」
千早・P「「………」」
律子「車の中で言い争いを聞かされる身にもなってほしいわよもう…」
「ゴメンな…律子」
千早「ゴメンなさい…律子…」
律子「はい、この話はもうおしまい。さ、帰りましょ。千早はどこまで送ればいいの?」
千早「え?え、そうね。私は○○駅まででいいわ」
律子「じゃあ行きましょう、プロデューサー」
「あ、ああ。でもやっぱり今日は律子に来てもらって良かった」
律子「そう?」
「二人だけだったら、とんでもないことになってただろうからな」
律子「フフフ、こういうのは慣れっこですから…」
律子の瞳には二人のホッとした表情が写りこみ始めていた…
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あとがき
どもっ、飛神宮子です。
千早と律子。と言うよりは千早とP、律子とPのSSという感じですね。
携帯電話って忘れたりすると大変ですよね…特に持っていると思い込んでいると。
今の時代、ある意味携帯電話に縛られている…ということなのでしょうか。
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2012・03・31SAT
飛神宮子
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