Interdigitate Partner(咬み合う二人)

ここはもう夜の帳が降り始めた事務所…
カタンっ
「小鳥さんお疲れ様です」
小鳥「プロデューサーさんありがとうございます」
コーヒーを入れたカップを2つ持ってプロデューサーがやってきた。
小鳥「…温かい…」
そのコーヒーを一口飲む小鳥。
「もう夜が早くなってきましたね」
小鳥「そうね。プロデューサーさんゴメンなさい、待っててもらっちゃうなんて」
「いいんですよ。俺はアイドルが来なきゃ雑務くらいしか仕事ありませんし」
小鳥「フフフ、そうですね。世間で言う休日の方が忙しいですから」
「でもどうしたんです?急にこんな仕事を溜めてしまうなんて…」
小鳥「それは…年末に有給が欲しいって社長にお願いしたら…」
「あー…そういうことでしたか」
小鳥「自業自得と言えばそれまでなのよね」
「でもあのイベントは一度は見てみたいですけど…辛いですよね?」
小鳥「慣れればどうってことありませんよ。一度一緒に行ってみます?」
「遠慮しておきます…」
小鳥「そういえばさっきから色んな仕事の書類を見てますけど、年末年始の仕事増えてきましたね」
「この前の伊織と真の収録はクリスマスでしたし、あと千早と真美のは今度正月番組の打ち合わせだったなあ」
小鳥「もうそんな時期なんですね…」
「すっかり街もイルミネーションが綺麗になりましたし」
小鳥「こんな時期は一人身だった頃は…虚しかった気がします」
「もう…俺がいるんだからいいじゃないですか」
小鳥「はい…」
「まさかこんな仕事に就くとも思ってなかったですけど、そこでこんな出会いがあるなんてもっと思いませんでしたよ」
小鳥「私だって…若い男の人が来るなんて思いもしなかったわ、それでさらにこんな風になるだなんて…」
「でもこれが一番良かった気がします」
小鳥「一番?」
「だって、アイドルの誰かと関係を持つなんて…できませんよ」
小鳥「そうね。きっと他の子が嫉妬しちゃいますね」
「だけど、それも関係なく俺は選んだ…あれ?俺からじゃなかったですよね」
小鳥「そういえばすっかり忘れちゃってましたけど、私からでしたね」
「あの時はドキッとしたなあ…」
小鳥「でも私をあの時受け入れなくても良かったのよ」
「いや、でもあの真剣な目に嘘は無いって思ったんです」
小鳥「こんなお姉さんでも…良かったの?」
「愛に…年齢なんて関係無いじゃないですか」
小鳥「嬉しい…やっぱり貴方で良かった…」
「…ってこんなことしている場合じゃありませんでしたね」
小鳥「ああっ!そうだったわ!」
横にはまだ書類が山のように積まれている。
小鳥「あ、プロデューサーさん。来ている仕事見ます?処理した物を渡していくんで」
「そうですね、今のうちに見ておきます」
小鳥「じゃあまず…」
ドンっ
大きな束が一つプロデューサーに渡された。
「こ、こんなにまだあるんですか?」
小鳥「はい。今月から来月、再来月のもあるかなと」
「うへぇ…分かりました」
 
時刻は移りて20時頃…
小鳥「ふう…今日はこのくらいでいいかしら」
「このくらいって…こんなにこなしたんですか!?」
右横にあったはずの未処理だった書類の山がいつの間にか1/3くらいと化していた。
小鳥「休みを思えば…これくらい問題無いわ」
「これを律子が見たら何を思うでしょうね」
小鳥「そうね…でも律子さんも見慣れた光景だと思うわ」
「だけどこのスピードは凄いですよ」
小鳥「じゃあそろそろ帰りますか?今日は…どうします?」
「小鳥さん疲れたでしょう?俺の家に行きますか」
小鳥「んー…そうした方がいいわね、きっと。じゃあ帰る準備してきます」
「それなら俺は車を表に回してくるんで鍵閉めとかお願いします」
小鳥「分かったわ、行ってらっしゃいプロデューサーさん」
………
ここはプロデューサーのマンション。
小鳥「ふー…こたつはやっぱり日本の宝ですね」
「最近は急に寒くなってきましたからね…あ、もうすぐ出来あがるんでゆっくりしててください」
小鳥「手伝わなくても大丈夫ですか?」
「そんな小鳥さんに手伝ってもらうほどでもないですって。今持って行きますね」
食卓にプロデューサーが作った料理が並べられていった。
「これで全部だなっと」
プロデューサーは小鳥の右側の辺に座った。
小鳥「これ全部作ったんですか?」
「昨日買って冷蔵庫に入れといた惣菜もありますけど」
小鳥「栄養バランスちゃんと取れてるんですね、感心感心」
「この商売、倒れられませんからね」
小鳥「確かに特にプロデューサーさんは仕事がパニックになっちゃいますからね」
「これからの時期は特に立てこんじゃいますし」
小鳥「もし大変だったらいつでも私に言ってくださいね」
「頼りにしてます、小鳥さん」
チュッ
そっと小鳥の右頬へと口付けた。
小鳥「もう…早く冷めないうちに食べましょ」
「そうですね」
P・小鳥『いただきます』
 
食べ終わって…
小鳥「それじゃあ洗いものは私がやるわね」
「え、いいですよ。今日は俺が全部やりますって」
小鳥「いいの。プロデューサーさんはお風呂に入ってきてください」
「いいんですか?」
小鳥「お風呂でその…待っててください」
「分かりましたよ、小鳥さんがそう言うなら向こうで待ってます」
小鳥「洗剤はいつもの場所ですよね?」
「はい。スポンジも同じところに入ってますから」
小鳥「だけどもう少しだけ温まって…本当にコタツってマモノね」
「入ったら最後、離れたくなくなっちゃうんですよね」
小鳥「でもこうするよりお風呂の方が温まるわ。よし、行動開始しましょ」
「そうですね。じゃあ小鳥さんの分の寝巻も準備して持って行きますから、アレは自分で持ってきてくださいね」
小鳥「分かったわ。10分くらいで行くから待ってて」
何やらお風呂ではお湯以上に温まったようですが、それはまた別の話ということで…
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あとがき
どもっ、飛神宮子です。
小鳥さんSS、今年はあともう1本ですかね。
今年こそはクリスマスを書け書けと小鳥さんにせっつかれているので。
今年ももう残すところ1カ月。やり残したこと…ありませんか?
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2010・11・30TUE
飛神宮子
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