6月のある日… |
真尋 | 「着いたーっ!」 |
律子 | 「着いたわね、北川さん」 |
駅からのバスを降りた二人。 |
真尋 | 「もー…真尋でいいですよ、秋月さん」 |
律子 | 「そういう北川さんも、私のことは律子でいいわよ」 |
真尋 | 「あ、そうだった。律子さんは、四国は初めてですか?」 |
律子 | 「何回か来た事はあるけど、こうやってじっくりなのは初めてかもしれないわ」 |
真尋 | 「そうなんですか、やっぱり全国ツアーとかでですか?」 |
律子 | 「やよいとの全盛期は結構色々回っていたから、でもすぐ次のところだったりしたもの」 |
真尋 | 「でも確かあれ以来ですね、律子さんと一緒にお仕事って」 |
律子 | 「…真尋さんとお仕事ってあったかしら?」 |
真尋 | 「ほら、あの水着と体操着の…」 |
律子 | 「ああ!あの時上条さんと一緒だったもう一人って真尋さんだったわね」 |
真尋 | 「たぶんそれ以来だったかなって」 |
律子 | 「そうね…あれももうかなり前になっちゃうわ」 |
真尋 | 「はるにゃんとは最近またお仕事してましたよね」 |
律子 | 「もうあの子のメガネへの情熱は…さすがの私でも少し引いたわ」 |
真尋 | 「私も出たかったなあ、あのCM」 |
律子 | 「そういえば真尋さんにはオファーは来なかったの?」 |
真尋 | 「ちょうど部活動の大会と被っちゃって、私にはそっちも大切だったから…」 |
律子 | 「それはしょうがないわ。高校生のうちは学校も大切にした方が絶対にいいわよ」 |
真尋 | 「おかげでまあまあな成績が取れました。副部長として、見劣りする成績じゃまずかったですし」 |
律子 | 「それはそうよね…」 |
真尋 | 「あ…っと、こっちの道だった」 |
律子 | 「ここまで来たということは、やっぱりお昼は…」 |
真尋 | 「もちろん食べていってください。地元はやっぱり一味も二味も違いますよっ」 |
律子 | 「食べ方は、もちろん教えてもらえるのよね?」 |
真尋 | 「しっかりレクチャーしますねっ」 |
律子 | 「ところであとどれくらいで着くのかしら?」 |
真尋 | 「あと次のブロックを右に曲がってすぐです」 |
律子 | 「もしかして馴染みだったりするの?」 |
真尋 | 「はい。こっちの学校に通っていた時は、帰りにお腹が空くとそこに寄って軽く食べてから帰ってました」 |
律子 | 「かなりの常連だったってことね」 |
真尋 | 「走ることももちろんですけど、やっぱり食べることも大好きですから」 |
律子 | 「確かプロフィール見たけど、真尋さんの趣味って…」 |
真尋 | 「えへへ、何かああやって書いちゃったらあれで良いって言われちゃったんで。それから直してないんです」 |
律子 | 「それも個性ってものかしら」 |
真尋 | 「あ、ここですここです」 |
律子 | 「え?ここ?」 |
真尋 | 「はい。こういう店構えの店も少なくないんです」 |
ガラガラガラガラ |
真尋は引き戸を開けた。 |
真尋 | 「あ、ちゃんとやってるみたいです。入りましょう」 |
律子 | 「え、ええ…」 |
真尋に続いて、律子も少し不安になりながらも中へと入っていった |
……… |
ガラガラガラガラ ピシャンッ |
店から出てきた二人。 |
律子 | 「ふう…本場のは本当に東京で食べるのとは違うわね」 |
真尋 | 「昔の味のままでした。やっぱり懐かしいです」 |
律子 | 「こういう昔から知っている味が知らない間に変わっちゃうと、ちょっとショックよね」 |
真尋 | 「はい。だから何だか安心しました」 |
律子 | 「これからも続けてほしいと言いたいみたいね」 |
真尋 | 「里帰りの時にはまた食べられたらなあって思ってます」 |
律子 | 「さて次はどこに案内してくれるの?」 |
真尋 | 「えっとですね………」 |
……… |
そしてここは真尋の実家… |
真尋 | 「あ、メガネはここに置いて下さい」 |
律子 | 「ありがとう、真尋さん」 |
ここは真尋の寝室。 |
真尋 | 「ふう、今日は疲れたーっ」 |
律子 | 「何だか色々と走り回った一日だったわね…」 |
真尋 | 「あ、やっぱりペース速かったですか?」 |
律子 | 「大丈夫よ。これくらいは慣れているもの」 |
真尋 | 「律子さんもいたからいつもよりハイテンションになっちゃって」 |
律子 | 「そうだと思ったわ。考えてみたら前よりもさらに行動力が上がっていたもの」 |
真尋 | 「あと地元ってこともあって…」 |
律子 | 「それもそうね、でも真尋さんのことも色々知れて良かったわ。」 |
真尋 | 「あ、布団大丈夫ですか?」 |
律子 | 「特に問題は無いかしらね。ちょっと…」 |
真尋 | 「え?ちょっと?」 |
律子 | 「いや、何でもないわ何でも」 |
真尋 | 「何でもなくはない…ですよね」 |
律子 | 「ちょっとだけね。やよいのこと」 |
真尋 | 「やよいさんって…律子さんのユニットの方ですよね?」 |
律子 | 「そうよ。お仕事で遠征の時はずっとホテルとか同じ部屋だったから…こういう一人って新鮮なの」 |
真尋 | 「だけどプロデューサーとかもしてますよね、律子さんって」 |
律子 | 「そっちはプロデューサーとしての仕事だから、一人って割り切れているのよ」 |
真尋 | 「そっかあ…やっぱりちょっと寂しいってことなんですね?」 |
律子 | 「ちょっとだけ違和感があるって感じかしら」 |
真尋 | 「律子さんとやよいさん、そんなくらいのデュオが私もできるかなあ…」 |
律子 | 「そこがプロデューサーの手腕なのよ。組ませてもらえる実力もそれは必要だけど…」 |
真尋 | 「どうしたらなれ…るのかなあ…」 |
律子 | 「プロデューサーにどう見初められるか…そこは運も絡むから。特に真尋さんみたいな大人数の事務所だとなおね」 |
真尋 | 「まずはやってみなくちゃ始まらないんですよね」 |
律子 | 「やらなくちゃ何もね」 |
真尋 | 「よしっ、東京に戻ったら頑張ろうっと」 |
律子 | 「応援してるわ。特に今のこの業界、メガネの子って貴重だもの」 |
真尋 | 「ありがとうございます、律子さん」 |
律子 | 「さあそろそろ寝ましょう、明日も早いのよね?」 |
真尋 | 「はい。晴れていたら久しぶりに地元をちょっと早朝ジョギングしようかなって」 |
律子 | 「私も付き合うわよ」 |
真尋 | 「え?いいんですか?」 |
律子 | 「これでもまだ一応現役のアイドルだもの。少しは鍛えないとね」 |
真尋 | 「じゃあ明日朝、一緒に走りましょう」 |
律子 | 「そうね。それじゃあおやすみなさい、真尋さん」 |
真尋 | 「おやすみなさい、律子さん」 |
日が変わる頃には真尋と律子の寝息の二重奏が奏でられていたという… |
HAPPY BIRTHDAY!! Ritsuko AKIZUKI.