ここはある日のお昼頃の事務所… |
小鳥 | 「律子さん最後までご苦労さま、気をつけて帰ってね」 |
律子 | 「はい、小鳥さんもおつかれさまでした」 |
小鳥 | 「いいのよ、私はライブに出ることのない事務員だもの。こういうところで働かなくちゃ」 |
律子 | 「でも昨日は進行してたんですから、小鳥さんだって765プロの一員ですって」 |
小鳥 | 「ありがとう律子さん」 |
律子 | 「それじゃあ、お先に失礼しますね」 |
小鳥 | 「ええ、今日はゆっくりと疲れを取って、また来週も期待してるわ」 |
バタンッ |
律子が事務所から出て部屋には一つ静寂が流れた。 |
小鳥 | 「ふう…後はプロデューサーさんが送り組を送って帰ってくるまで…色々整理しましょ」 |
事務所には昨日のライブでファンの人から貰った物で、事務所で確認する物が山となっていた。 |
小鳥 | 「やっぱり今回出なかった子のも結構あるわね」 |
今回のライブに都合が合わなかった千早や貴音、あずさや伊織の所にもたくさん仕分けられていく。 |
小鳥 | 「これもみんな人気アイドルになったって証拠よね…」 |
……… |
小鳥 | 「ふう、これで一段落っと。あとは封書の確認だけかしら」 |
大量にあった贈り物もテーブルの各所へと分けられていった。 |
小鳥 | 「あと2回のライブでまだまだ集まりそうね…」 |
そこに… |
ガチャッ |
P | 「ただいま戻りましたー」 |
小鳥 | 「あ、プロデューサーさんお帰りなさい」 |
P | 「ただいま、もう小鳥さんだけでしたか」 |
小鳥 | 「ええ。律子さんはもう帰られたわ」 |
P | 「うわあ、しかし今回もプレゼントが多いですね」 |
小鳥 | 「これもプロデューサーさんが皆さんをトップアイドルに育て上げた証拠ですよ」 |
P | 「えっと…それは俺の力じゃないですよ」 |
小鳥 | 「そんなことないわ。導いたのは他ならぬプロデューサーさんなんですから」 |
P | 「…ありがとうございます、小鳥さん」 |
小鳥 | 「それにしてもこれで1回分ですか…」 |
P | 「東京の時よりは少ないとはいえ、今回もかなりの量になりましたね」 |
小鳥 | 「まだまだこれからこれもありますよ」 |
小鳥は机の上に載っている封書の山を見せた。 |
P | 「まだ確認作業してないんですよね?」 |
小鳥 | 「ええ、荷物の方だけ終わったばっかりです」 |
P | 「それなら、一緒にやりましょうか」 |
小鳥 | 「じゃあ飲み物持ってきますね」 |
P | 「あ、はい」 |
……… |
小鳥 | 「……うん、これはOKね」 |
P | 「……まあこのくらいなら大丈夫か」 |
ファンから各アイドルに来た手紙が次々と分けられていく。 |
P | 「えっと……これはちょっとダメだな…住所は…あるな」 |
小鳥 | 「これも……大丈夫ね、じゃあ雪月花のとこにっと」 |
P | 「しかし人気のバロメーターとは言いますけど、読む方が大変なくらい凄いですね」 |
小鳥 | 「ファンの方によっては、各会場で贈られてる方もいるみたいですけど」 |
P | 「そうなんですか?」 |
小鳥 | 「はい。例えばこの方はこのタイプの封筒で、大体2枚なんです。あと必ず住所を書いてきてますよ」 |
P | 「ああ、そういえばこの便箋は前に東京の時もチェックした気がします」 |
小鳥 | 「そんな感じで、ファンの方々もアイドルのみんなに憶えて貰いたいんじゃないかしら」 |
P | 「なるほど…印象って内容だけじゃなくてそういう所からも残りますからね」 |
小鳥 | 「あ、この手紙は…美希ちゃん一途の方だわ」 |
P | 「むしろ小鳥さんの方が憶えちゃってるんですね」 |
小鳥 | 「確かに…長くやってたら自然とそうなっちゃったのかしら…」 |
P | 「えっと次は…小鳥さん、これ小鳥さんへのファンレターですよ」 |
小鳥 | 「ええっ!?わ、私ですかっ!?」 |
P | 「はい、ここにちゃんと『音無小鳥様へ』ってありますよ」 |
小鳥 | 「ちょっと見せてください…」 |
小鳥はその手紙を受け取って熟読し始めた。 |
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小鳥 | 「なるほど…」 |
P | 「どうだったんですか?」 |
小鳥 | 「前のライブにも来られて、私の進行ぶりが素敵だってことみたい」 |
P | 「そういうことでしたか」 |
小鳥 | 「どうしたらなれるかとか…これって返信した方がいいんですかね?」 |
P | 「それは小鳥さんの判断に任せます」 |
小鳥 | 「分かりました…うーん…」 |
P | 「でもだいぶ終わりましたね」 |
小鳥 | 「あともうこの何通かになりますか」 |
P | 「あ、お茶もう一杯入れてきますよ」 |
小鳥 | 「お願いします」 |
プロデューサーは小鳥と自分の湯呑みを持って給湯室へと向かった。 |
小鳥 | 「んー…でもこれは…」 |
小鳥は机の中から何やら取りだした。 |
小鳥 | 「声だけなのに…私に憧れてくれる人っていてくれるのね…」 |
その取りだした封筒に住所を書き始めた。 |
小鳥 | 「この名前からして女の子よね、それならむしろ…」 |
封筒と同じ模様の便箋に小鳥の字による文章が刻まれていく… |
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P | 「小鳥さん?小鳥さーん」 |
小鳥 | 「よし、これでいいわね」 |
P | 「うわあっ!」 |
小鳥 | 「え?あ、プロデューサーさんどうしたんですか?そんな驚いて」 |
P | 「驚いてって、凄くお手紙を書くのに集中してましたね」 |
小鳥 | 「え?え?」 |
P | 「こっちが選別終わって呼んでいたのに、ずっと気が付かないくらいで」 |
小鳥 | 「あ…す、すみません」 |
P | 「さっきのお手紙の子へのお手紙ですか?」 |
小鳥 | 「ええ。事務所からそう遠くない女の子みたいだから、もしだったら…って」 |
P | 「まさかうちの事務所から…デビューさせてみたいってことですか?」 |
小鳥 | 「まだどんな子かは分かりませんけど、こういう世界に興味があるのかしらって思って」 |
P | 「なるほど…そう考えればそういうことになるんですね」 |
小鳥 | 「フフフ、きっとこのお手紙が来たら驚くかも」 |
P | 「ちょっと楽しみになってきましたよ」 |
小鳥 | 「これで怖気づくくらいなら、こんなお手紙は書かないって思いますから」 |
P | 「事務所の新人オーディションももう近いですからね」 |
小鳥 | 「来てくれると嬉しいわ。でもこの子なら、事務員としても考えてもいいかも」 |
P | 「そこは社長に言わなくちゃですけどね」 |
小鳥 | 「でも手紙からも優しいって感じがするもの、きっと大丈夫よ」 |
小鳥は贈るその手紙を丁寧に封筒へと入れ、気持ちを込めてその封を閉じた… |