ここはある日の765プロ事務所… |
Trrrrr… Trrrrr… |
小鳥 | 「はいもしもし、765プロダクションの音無です」 |
??? | 『………』 |
小鳥 | 「もしもし?もしもし?」 |
??? | 『………』 |
小鳥 | 「ん…?無言電話かしら…」 |
小鳥が電話を切ろうとしたその時… |
??? | 『…も、もしもし…』 |
ようやく一人の少女の声が聞こえた。声が埋もれていて聞こえてなかったようである。 |
小鳥 | 「あ、えっと…どちら様でしょうか?」 |
絵理 | 『あの…876プロダクションの水谷です』 |
小鳥 | 「876プロダクションの水谷様…あ、絵理ちゃんかしら?」 |
絵理 | 『そうです…?』 |
小鳥 | 「えっと…何かあったのかしら?」 |
絵理 | 『今からそちらにお伺いして…いいかって?』 |
小鳥 | 「どうしたの?」 |
絵理 | 『誰かに追われてる気がして?近くに765プロがあったから…』 |
小鳥 | 「分かったわ、すぐに来て良いから待ってるわ」 |
……… |
数分後… |
DING DONG♪ |
事務所の呼び鈴が鳴った。 |
小鳥 | 「はい、どちらさまでしょうか?」 |
絵理 | 「水谷です…」 |
小鳥 | 「絵理ちゃんね、早く入って」 |
ガチャッ バタンッ カチャッ |
小鳥は絵理を中に入れてすぐに鍵を閉めた。 |
絵理 | 「こんにちは…音無さん」 |
小鳥 | 「こんにちは絵理ちゃん、それでさっき言ってた追っ手はどう?」 |
絵理 | 「何とか撒けた気がする…でも気配はある?」 |
小鳥 | 「うーん、よく分からないわね…でも安心して、ここは安全だから」 |
絵理 | 「ありがとう…ございます」 |
小鳥 | 「まずはここで事務所に連絡を取って。私はちょっと外の様子を見るから」 |
絵理 | 「はい…」 |
絵理は携帯電話を取り出して事務所に連絡を取り始めた。その間に小鳥が事務所の窓から入口を眺めると… |
小鳥 | 「ファンかしら、見慣れない人ね…」 |
ポツリポツリ不審な動きをしている人が見られた。そこに… |
絵理 | 「音無さん…電話を代わって欲しいと…」 |
小鳥 | 「分かったわ。もしもし、765プロダクション事務の音無と申します」 |
まなみ | 『もしもし、876プロマネージャーの岡本です。そちらにうちの水谷がいるんですね?』 |
小鳥 | 「はい。少し何だか震えている感じがしますが…」 |
まなみ | 『すみませんが、本人に窓から追っ手がいるかを確認させてください』 |
小鳥 | 「分かりました。あの、絵理ちゃん。ここからさっきの気配の人は分かる?」 |
絵理 | 「え…?…あっ…いた…あの人かあの人…?」 |
小鳥 | 「もしもし、居たみたいです。どうしましょう?」 |
まなみ | 『そちらの事務所のデジカメで撮影して、ちょっとこっちに送ってもらえますか?』 |
小鳥 | 「分かりました。絵理ちゃん、あそこにあるデジカメですぐ写してもらえるかしら?」 |
絵理 | 「はい…」 |
まなみ | 『もしかしたら、以前うちの水谷に迷惑を掛けて警察に処分された人かもしれませんので』 |
ピッ ピッ |
かなりの解像度で撮影された。 |
小鳥 | 「今撮影しましたので、これからお送りします」 |
まなみ | 『はい。あの、水谷は迎えに行くまで匿っておいて戴けますか』 |
小鳥 | 「了解しました。本人にはそう伝えておきます。ではまた」 |
Pi♪ |
小鳥 | 「絵理ちゃん、そのデジカメのデータを876に送るから貸してもらえる?」 |
絵理 | 「どうぞ…」 |
小鳥 | 「接続して…876プロの岡本さんのアドレスは…あったわ。これでいいわね?絵理ちゃん」 |
絵理 | 「それです…音無さん」 |
小鳥 | 「あとは本文とタイトルっと…よし、これで添付して…うん、送れたわ」 |
絵理 | 「ありがとうございます…」 |
小鳥 | 「絵理ちゃん、とりあえず迎えが来るまではここで待機しててって」 |
絵理 | 「分かりました…すみません?」 |
小鳥 | 「いいのよ。とりあえず、そっちのソファーに行っていて」 |
絵理 | 「はい…」 |
小鳥は絵理を応接用のソファーへと誘導した。 |
小鳥 | 「何か飲む?絵理ちゃん」 |
絵理 | 「それなら紅茶を…お願いします」 |
小鳥 | 「分かったわ、今持ってくるわね」 |
|
小鳥もソファーの向かい側に座って話を聞いた。 |
小鳥 | 「秘密は伝えるべきもの以外はちゃんと厳守するわ」 |
絵理 | 「ありがとうございます…」 |
小鳥 | 「それで、どこでその人が付いてきているのに気が付いたの?」 |
絵理 | 「電車に乗っている時に、隣の車両にいたんです…」 |
小鳥 | 「ここの近くの駅で降りたら一緒に降りたのね?」 |
絵理 | 「はい…その時またこっちを見てた気がして…?」 |
小鳥 | 「うーん、怪しいわね…それでここの近くに来た時に電話を掛けたと」 |
絵理 | 「頼れる方が他に居ない気がしたから?」 |
小鳥 | 「こういう時は頼ってもらっていいわよ」 |
絵理 | 「迷惑でした…?」 |
小鳥 | 「そんなことないわ。こういう時は安全第一、頼ってもらった方がいいわ」 |
絵理 | 「本当に…」 |
すくっ とてててて ぽふっ |
絵理は立ち上がると小鳥の隣に座りなおした。そして… |
絵理 | 「こ、怖かったんです…」 |
ぎゅうっ |
小鳥の胸へと抱きついた。ここまで普通に振舞ってはいたものの、小刻みに震えているほど怖かったらしい。 |
小鳥 | 「絵理ちゃん…」 |
絵理 | 「どうしたらいいか…気も動転していて…ここなら誰かいるかって思った…」 |
小鳥 | 「大丈夫よ、もう心配しなくても私が就いてるんだから」 |
ぽんっぽんっ |
そんな絵理の背中をそっと叩いてあげた小鳥。 |
絵理 | 「ありがとう…ございます…」 |
小鳥 | 「こんなことしかできないかもだけど、いつでも765プロを頼って貰って構わないから」 |
絵理 | 「はい…」 |
小鳥 | 「まずはここで落ち着いて。しばらくこうしてて構わないわ」 |
絵理 | 「温かい…音無さん…」 |
絵理は迎えが来るまで小鳥の温もりに心も身体も委ねた。そんな絵理を小鳥は優しく抱きしめてあげていた… |