9月のある日のこと… |
P | 「んー…美希が納得するかな?」 |
プロデューサーは数枚の書類を眺めながら一人呟いていた。 |
P | 「ま、今の美希なら真剣に取り組んでくれるかな?」 |
美希 | 「プロデューサーさん、おはようなの」 |
P | 「来たか、おはよう美希」 |
美希 | 「どうしたの?何だか朝から難しそうな顔してるね」 |
P | 「ちょうど美希のイベントを考えてたところでな」 |
美希 | 「どんな感じなの?」 |
P | 「まだ仮なんだけどこんなのだ。隣の椅子座っていいから、美希」 |
美希 | 「ありがとうなの」 |
座った美希へと書類を渡すプロデューサー。 |
P | 「まずはそれを一通り読んでくれ、話はそれからだから」 |
美希 | 「こんなことやっても大丈夫なのかな?」 |
P | 「美希のおにぎり好きは世間に知れ渡ってるからな、そっちの農協さんから話が来たくらいだ」 |
美希 | 「そうなんだ。でもこういうのやれるって、ミキも人気出てきたってことかな?」 |
P | 「そうだよ、だから色んな仕事が入ってくるようになったからな」 |
美希 | 「それはとても嬉しいの。んー…でもこれってあのライブの翌日になるんだよね?」 |
P | 「そうだな。だから大変そうな気もするんだけど」 |
美希 | 「でも面白そうだなって思うよ。美希も食べてみたいもん」 |
P | 「でも結構疲れるぞ、手で刈ることになるからさ」 |
美希 | 「ファンのみんなとやるんだよね?それならいいって思うよ」 |
P | 「よし、それじゃあ社長に正式に通してみるから」 |
美希 | 「プロデューサーさん、絶対通してね」 |
P | 「分かってるさ、必ず通すからな」 |
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イベント当日… |
美希 | 「今日は集まってくれてありがとうなのっ!」 |
参加者 | 『ワーーーーーー!!!』 |
ここは某県某市のとある収穫間近の田んぼの近く。 |
美希 | 「まずは今日刈り取る田んぼの説明を○○さんにしてもらうから、みんなちゃんと聞いてねー」 |
○○ | 「ただいま星井さんから紹介にあずかりました○○です…」 |
そう、美希と一緒に稲刈りをしておにぎりを食べようというイベントなのだ。 |
○○ | 「…それではマイクの方を星井さんへお返しします」 |
美希 | 「はいなの。それでは次に今日のスケジュールをJAの△△さんお願いしまーす」 |
△△ | 「はい、では今日のスケジュールをご説明致します…」 |
実は美希も何だか待ち切れなさそうにそわそわしていた。 |
△△ | 「以上で説明を終わります」 |
美希 | 「刈り取りの前に、注意事項の説明をミキとプロデューサーさんでするよ」 |
P | 「はい、では今回のイベントの注意事項です」 |
美希 | 「まず、刃物を扱うから安全には気を付けてね」 |
P | 「くれぐれも怪我だけは無いようにお願いします」 |
美希 | 「次に、後でたっぷり交流の時間は取ってあるから、刈り取りの間はちょっと我慢してね」 |
P | 「写真撮影等もその時間にお願いします。作業中の撮影はご遠慮ください」 |
美希 | 「あと、自分の分が早く終わったら周りの人のことも手伝ってあげて」 |
P | 「早く終わればその分だけ交流の時間は伸ばしますので、よろしくお願いします」 |
美希 | 「それじゃあ係員の人の説明をちゃーんと聞いて、美味しいお米を刈り取ってねー」 |
参加者 | 『はーーーい!!!』 |
美希の一言に威勢よく返事する参加者達。みんなここの市民である。 |
このイベントは市のCFMと地域の広報誌でしか宣伝していない。 |
それでも、今では割と知られている星井美希が来るとあって枠は割とすぐに埋まったようだ。 |
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美希 | 「みんなー、お疲れさまーっ!」 |
2時間後、刈り取りがようやく終了した。 |
美希 | 「それじゃあ今から脱穀して美味しいご飯を炊こうねっ」 |
参加者の顔には気持ち良さそうな汗と笑顔が溢れている。 |
……… |
ご飯も無事に炊け… |
P | 「美希、握力は大丈夫か?」 |
美希 | 「まだまだ大丈夫なの。とりあえずは100個で良いんだよね?」 |
P | 「ああ。ほら、美希が大好きなアレも用意してあるぞ」 |
美希 | 「うわあ、美味しそうなタラコなのっ!」 |
P | 「タラコに鮭に梅干しと昆布に筋子の5種類あるからな」 |
それぞれの参加者も、各々の集いの前に置かれた釜からご飯を取りだして思い思いに握り始めている。 |
美希 | 「プロデューサーさんも手伝ってくれるんだよね?」 |
P | 「ああ、もちろんだ。よし…って何すればいいんだ?」 |
美希 | 「美希が握るから、海苔だけ巻いて欲しいな」 |
P | 「分かった。それじゃさっそく頼むぞ」 |
美希 | 「はいなのっ」 |
慣れた手付きで握り始めた美希。 |
……… |
イベントも無事に終わり、帰りの車の中… |
P | 「あんなに食べたのに、まだよく入るな美希」 |
美希 | 「だってまたあれから動いたんだもん」 |
美希の手の中にはお土産用に握ったおにぎりがあった。 |
P | 「ところで今日のイベントはどうだった?」 |
美希 | 「んー、疲れたけど美味しかったの」 |
P | 「そうか、それならこのイベントをしたかいがあったよ」 |
美希 | 「でも何だか昨日とは違う感じだったかも」 |
P | 「そうか?」 |
美希 | 「昨日のライブに来た人はミキの熱狂的なファンって感じだったけど、今日のイベントは違うって思ったよ」 |
P | 「ああ、そうだな。そこはちょっと配慮したんだ」 |
美希 | 「そうだったんだ、あむっ」 |
P | 「そういうファンばっかりだと美希が気疲れする気がして、募集もかなり限定したからさ」 |
美希 | 「ハニーのそういうとこ大好きなの」 |
P | 「どういたしまして。あ…」 |
美希 | 「ん?何かあったの?」 |
P | 「ほら、頬っぺたにご飯粒付いてるぞ」 |
美希 | 「え?どこ?どこなの?」 |
P | 「今取ってやるから動くなよ」 |
ツンっ パクっ |
信号で車を止めたプロデューサーは、美希の頬に付いたご飯粒を取って自分の口へと運んでしまった。 |
P | 「美希の味が付いたご飯、美味しかったぞ」 |
美希 | 「ハニー…それはちょっと…なの」 |
P | 「いや、そ、そう言われると照れるな」 |
美希 | 「でも今日はありがとうなの、ハニー」 |
チュッ |
美希はそんなプロデューサーの頬へとそっとキスをした。 |
P | 「美希…」 |
信号が変わり、2人を載せた車はまた街の方へと走り始めていった… |