12月のある日… |
プシュー |
楓 | 「さ、着きました雪歩ちゃん」 |
雪歩 | 「はぁ…やっぱりこの時期は寒いですぅ…」 |
とある駅へと降り立ったアイドルが二人。 |
楓 | 「ええ、でもすぐに温かくなるから大丈夫でしょう」 |
雪歩 | 「ここが楓さんの故郷なんですね」 |
楓 | 「いえ、違うんです」 |
雪歩 | 「へ?」 |
楓 | 「ここは雪歩ちゃんと行きたかった場所なの」 |
雪歩 | 「私と…ですか?」 |
楓 | 「きっと雪歩ちゃんも気に入るはずです」 |
雪歩 | 「ここって…名前は聞いたことがあるんだけどなぁ…」 |
楓 | 「フフッ、まずは自分の好きな場所で良いって言われたから…」 |
雪歩 | 「うーん…」 |
楓 | 「ささ、まずは駅から出ましょ。それから現地に着いたらってことで…ね」 |
雪歩 | 「そうですね、行きましょう楓さん」 |
それから駅を出るまでもなく、看板などで気付いた雪歩だったという。 |
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かぽーん |
楓 | 「ふぅ…やっぱり温泉はいいわね…」 |
雪歩 | 「気持ちいいですぅ…」 |
ここはとある日帰り入浴施設。 |
楓 | 「雪歩ちゃん、確か温泉が好きって聞いたのだけど、どうだったかしら?」 |
雪歩 | 「はいっ、穴を掘るのが好きなのでそれでこっちも好きになっちゃって…」 |
楓 | 「でも温泉はすぱらしいです」 |
雪歩 | 「そうですね…って、あれ?」 |
楓 | 「どうしたの?雪歩ちゃん」 |
雪歩 | 「今の楓さんが言ったのって…」 |
楓 | 「フフッ、分かってもらえたのかしら」 |
雪歩 | 「こんな自然と出てくるんですね、楓さんのダジャレって」 |
楓 | 「そうね、つい出てきちゃうの」 |
雪歩 | 「きっとうちの千早ちゃんが一緒にいたら大変だなぁ」 |
楓 | 「千早ちゃん?」 |
雪歩 | 「はい。何でか笑いの沸点がちょっと低くって…だからもし見かけても声は掛けないでくださいね」 |
楓 | 「フフッ、分かりました」 |
雪歩 | 「それにしてもやっぱりこの時期だと気持ちいいですね」 |
楓 | 「ここは一杯…行きたいところだけど、今日は雪歩ちゃんがいるから夜までおあずけするつもり」 |
雪歩 | 「そんな…私を気にしなくてもいいですよ楓さん」 |
楓 | 「あら、そう?」 |
雪歩 | 「はい、雪見酒…私は見ているだけでもいいですぅ」 |
楓 | 「それなら…あら、どうしましょう。撮影されているし…」 |
AD | 『それなら、用意しましょうか?高垣さん』 |
カメラの近くにいたADが楓に声を掛けた。 |
楓 | 「よろしいんですか?」 |
その楓の眼は既に輝いていた。 |
AD | 『そう言うかと思いまして、本来はいけないのですが温泉の方から特別に許可を頂いて用意していただきました』 |
渡されたお盆の上には徳利と猪口が一つあった。 |
楓 | 「本当は温泉とアルコールは一緒だとダメなんですよ、雪歩ちゃん」 |
雪歩 | 「それは前に聞いたことがある気がします」 |
楓 | 「でも今回は心遣いということで…頂きましょう」 |
雪歩 | 「えっと…じゃあ私が注ぎますね」 |
楓 | 「え?いいのかしら」 |
雪歩 | 「はい、これくらいならどうぞ」 |
とくとくとく… |
楓の持つ猪口へと徳利からお酒が注がれていく。 |
楓 | 「雪歩ちゃん、そのへんで…」 |
くいっ |
猪口を口元で傾ける楓。 |
楓 | 「ぷはっ…美味し………」 |
……… |
そしてここは楓の実家… |
楓 | 「今日は楽しかったわ」 |
雪歩 | 「私もです、楓さん」 |
楓 | 「こんな可愛くて美人にお酌して貰えるなんて、私も幸せ者ね」 |
雪歩 | 「そんな、私なんてそんなじゃないですよぉ…」 |
雪歩の頭は隣り合わせにしていた布団の掛け布団をすっかり被ってしまった。 |
楓 | 「こーら、そんな風に隠れないの、雪歩ちゃん」 |
雪歩 | 「す、すみませんですぅ…」 |
楓 | 「でもどうだったかしら?こんなお姉さんとじゃつまらなかった?」 |
雪歩 | 「そんなことないです。私の事務所だと楓さんほどのお姉さんは事務員の人しかいないですから」 |
楓 | 「雪歩ちゃんのところは若い子が多いのね」 |
雪歩 | 「だから、こういう大人の人と旅行ってとっても新鮮でした」 |
楓 | 「フフッ、ありがとう」 |
雪歩 | 「でも…やっぱりお酒飲み過ぎですよぉ」 |
楓 | 「ついつい進んじゃったの」 |
雪歩 | 「途中で何だか私そっちのけになっちゃって…うう…」 |
楓 | 「あら…何かまた私悪いことしちゃったかもしれないわね…」 |
雪歩 | 「いえ、私も今回は強く出られなかったからですよぉ…」 |
楓 | 「でも明日は自重するから、きっと大丈夫よ」 |
雪歩 | 「きっと?」 |
楓 | 「ただお酒が出たら…やっぱり身体はたぶん断れないの」 |
雪歩 | 「そうですよね…」 |
楓 | 「だから行く場所は梅酒の場所くらいにするつもりよ」 |
雪歩 | 「やっぱり飲むんじゃないですかぁ…」 |
楓 | 「フフフ、明日は困らせることはしないから…ね」 |
雪歩 | 「楓さんそれだけはお願いします」 |
楓 | 「それにしてもちょっと寒いわね」 |
雪歩 | 「和歌山でも夜はやっぱり冷えるんですね」 |
楓 | 「ええ。冬はどこでも一緒じゃないかしら」 |
雪歩 | 「最後に温かいお茶を飲んだのに、ちょっとだけ寒いですぅ」 |
楓 | 「そうね…あら、ここに…」 |
ススススス |
楓は雪歩の布団の方へと潜り込んでいった。 |
楓 | 「温かな抱き枕があったわ」 |
雪歩 | 「私は抱き枕じゃないですよぉ…楓さぁん…」 |
楓 | 「フフフ、動く抱き枕なのね」 |
雪歩 | 「うぅ…まだ酔ってるんですかぁ?」 |
楓 | 「さあ、どうでしょう?」 |
そのまま雪歩は朝まで楓の抱き枕にされ続けていたとかいないとか… |
HAPPY BIRTHDAY!! Yukiho HAGIWARA.