とある春と夏の間の日のこと… |
P | 「頑張って…小鳥…あと少しだから!」 |
小鳥 | 「ええ!あなた!私頑張るわ!」 |
看護師 | 『頭出て来ました!あと少し頑張って!』 |
小鳥 | 「ええ!んっ!んーーーっ!」 |
……… |
ここは場所が変わって産後の病室。 |
春香たちを含めて芸能関係者が来る可能性があるため、個室にしてもらっていた。 |
小鳥の休んでいるベッドの横にはすやすやと眠っている赤ちゃんの姿があった。 |
あずさ | 「音無さん、みんな待ち望んでましたわ。出産、おめでとうございます」 |
亜美 | 「ピヨちゃんおめでとねー、うちの病院はどうだった?」 |
小鳥 | 「ありがとうございます、あずささん。亜美ちゃんもありがとう、色々助かったわ」 |
春香 | 「小鳥さん、何だか嬉しくってケーキ作ってきちゃいました!後で食べてください」 |
千早 | 「可愛い…ですね音無さん」 |
小鳥 | 「ありがとう後で戴くわ春香ちゃん。千早ちゃんも、さっきは子守唄ありがとうね」 |
真 | 「うわあ、女の子ですか?」 |
響 | 「赤ちゃんってやっぱり可愛くて、うー…この可愛さは反則さ」 |
小鳥 | 「ええ、女の子よ真ちゃん。きっと愛おしいからよ、響ちゃん」 |
雪歩 | 「小鳥さん、出産の時痛くなかったですか…?」 |
貴音 | 「小鳥嬢のお身体も変わりなくて良かったです…」 |
小鳥 | 「みんな歌ってるじゃない、女なら耐えられるのよ雪歩ちゃん。心配してくれてありがとう、貴音ちゃん」 |
美希 | 「これが小鳥の赤ちゃん?何だか美味しそうなの」 |
伊織 | 「私たちにもこんな頃があったのね、フフ…かーわいいわ…って私こんなキャラじゃないわ!」 |
小鳥 | 「こらこら、美希ちゃん食べようとしないの。伊織ちゃんもフフフ…何だかメロメロね」 |
律子 | 「フフフ、でもプロデューサーに似ないといいですね」 |
やよい | 「でもでも、この鼻ってプロデューサーに似てますよね」 |
小鳥 | 「もう律子さん、そんなこと言わないの。そうねやよいちゃん、鼻は○○さんっぽいかしらね」 |
そこで小鳥がふと気が付いた。 |
小鳥 | 「あら?真美ちゃんは?」 |
亜美 | 「真美は今日お仕事で来れないって。真美だけオフに出来なかったんだ」 |
小鳥 | 「あ、○○さんが言ってた仕事ってそれなのね」 |
亜美 | 「だから特別に後でここに入れてもらうって」 |
小鳥 | 「そうなの…分かったわ」 |
律子 | 「みんな、そろそろ迷惑になるかもしれないから事務所に帰るわよ」 |
真 | 「えー、まだ見てたかったなあ」 |
小鳥 | 「また見たい人は後日個人的に来て。あと何日かはここにいるから、詳しくは○○さんに聞いて」 |
全員 | 『はーい!』 |
律子 | 「小鳥さん、じゃあそろそろおいとましますね」 |
やよい | 「また今度来ますー」 |
律子 | 「ほら美希、そこで船漕いでないで帰るわよ!」 |
美希 | 「うあー、律子…さん、首根っこ引っ張らないでぇ…」 |
バタンッ |
病室にまた静寂が戻った。 |
小鳥 | 「やっぱり私…幸せなのね…」 |
小鳥はそう感じながら少しの間の眠りに就いた。 |
……… |
夕方になって… |
コンコン |
ノックする音が病室に響いた。 |
小鳥 | 「はーい、どうぞー」 |
ガラガラガラ |
引き戸を開けて中に入ってきたのは… |
真美 | 「ピヨちゃん、おめでとー」 |
花籠を持ってやってきた真美であった。 |
小鳥 | 「真美ちゃんありがとう。この時間ってことはお仕事終わりね」 |
真美 | 「本当はみんなと一緒に来れれば良かったんだけど…」 |
小鳥 | 「お仕事なら仕方ないわ。それでこのお花はどうしたの?」 |
真美 | 「ピヨちゃんが少し部屋が寂しいって言ってたから、持ってきたよん」 |
小鳥 | 「真美ちゃん、憶えていてくれてたのね…」 |
真美 | 「うん。だって何かみんなして忘れてそうだったんだもん」 |
小鳥 | 「やっぱり…真美ちゃんは…」 |
ぎゅうっ |
小鳥は隣に座っていた真美を抱きしめた。 |
真美 | 「ピ、ピヨちゃん…」 |
小鳥 | 「お姉さん嬉しい…こんな思いやりのある子は大好き…」 |
真美 | 「えっと…何だか照れちゃうよ」 |
小鳥 | 「フフフ…そんなところも可愛いんだから」 |
真美の顔は少し紅く染まっていた。その段階でようやく真美は解放された。 |
小鳥 | 「あ、そういえば○○さんは?」 |
真美 | 「一旦事務所に行くって。今日の仕事の報告と明日の段取りしてからくるって言ってたよ」 |
小鳥 | 「私が休んでいる間、○○さんに負担掛けちゃってるのよね…」 |
真美 | 「でも律っちゃんも他のみんなも協力してるから大丈夫だよん」 |
小鳥 | 「私が…」 |
その時、何やら隣のベッドで赤ちゃんのグズり始めた声がした。 |
小鳥 | 「あら…そろそろお腹が空いたのかしら」 |
真美 | 「あ、え、えっと…」 |
小鳥 | 「真美ちゃん、どうしたの?」 |
真美 | 「お乳あげてるとこ、真美が見ててもいいの?」 |
小鳥 | 「…興味はある?」 |
真美 | 「…うん、ちょっとね」 |
小鳥 | 「それなら見てもいいわ、そんなに恥ずかしいわけでもないから」 |
ペロンっ ぎゅむっ |
小鳥は左胸を出して赤ちゃんを右腕に抱えてその唇を左の乳首へと近付けた。 |
ちゅうちゅう… |
赤ちゃんはお腹が空いていたのもあってか、その合図に勢いよく吸い始めた。 |
真美 | 「うわぁ、こんな風に吸うんだぁ」 |
小鳥 | 「真美ちゃんも赤ちゃんの頃はこんな風に飲んでたのよ」 |
真美 | 「憶えてないなーって当たり前だよね、物心ついてないんだもん」 |
小鳥 | 「フフフ…そうね」 |
真美 | 「…ねえ、ピヨちゃん」 |
小鳥 | 「何かしら?真美ちゃん」 |
真美 | 「今、ピヨちゃんって幸せ?」 |
小鳥 | 「………幸せよ。大好きな○○さん、大切にしたいこの子がそばにいて、楽しい仲間が近くにいてくれてるんだもの」 |
真美 | 「真美たちのことは…好き?」 |
小鳥 | 「もちろんよ。誰一人欠けても嬉しいなんて思わない、それはみんな好きだからよ」 |
真美 | 「良かったぁ…何かこの赤ちゃんにちょっと嫉妬しちゃったのかも」 |
小鳥 | 「真美ちゃん…そう思うのも当たり前よ。愛情が取られちゃう感じがしたのね?」 |
真美 | 「うん…でも仕方ないよね。だって確かにこの赤ちゃんは、ピヨちゃんと血が繋がってるんだもん」 |
小鳥 | 「でも真美ちゃん、大切にしたい物はいくらあってもいいの。みんなのこともこれからも大切にするわよ」 |
真美 | 「ピヨちゃん…ありがと…」 |
ぎゅっ |
真美は授乳している小鳥を後ろから優しく抱きしめた。そんな病室からは初夏の夜の帳が見え始めていた… |