Handmade Waiting Time(手作りの待ち時間)

ここはある日の給湯室…
小鳥「これで良し…っと」
バタンっ
何やら冷蔵庫へと仕舞ったようだ。
あずさ「フフフ、ありがとうございます〜音無さん」
小鳥「いえ、私もプロデューサーさんに渡すつもりでしたから」
あずさ「そうですよね〜、音無さんとプロデューサーさんはそうですものね」
小鳥「え、あ、そうですけど…もー、それは言わないって約束じゃないですかぁ」
あずさ「フフっ、やっぱり赤くなっちゃうんですね」
小鳥「それはそうです。だって…」
あずさ「…ごちそうさまです、音無さん」
小鳥「う…で、でもどうして私と一緒に作ろうなんて思ったんですか?」
あずさ「いっぱい作らなくちゃいけなかったんで、人手が欲しかったんです〜」
小鳥「明日…何かありましたっけ?」
あずさ「明日、お仕事で…」
小鳥「明日のあずささんのお仕事…」
あずさ「はい、明日が今度出す新曲のキャンペーンなんです」
小鳥「あー、そうでしたね」
あずさ「それで抽選に当たった人に配ることになってまして〜」
小鳥「アイドルって大変ですね…」
あずさ「フフフ、でも楽しいですよ」
小鳥「私は…いいかなって」
あずさ「んー…私はまだ音無さんでもいけるとは思いますよ」
小鳥「そんな…あずささん」
あずさ「あれだけ歌えて、人を魅了できるんですから。そんな事務員なんていません」
小鳥「でも…私にはあのスタイルが一番なんです…」
あずさ「そう…ですか?」
小鳥「私は…裏側から皆さんを支えるのが…好きですから」
あずさ「だから…プロデューサーさんのことも良く見ていたんですね」
小鳥「そうですね…」
あずさ「私たちを助けてくれるひとを支えてくれる人…なんですね」
小鳥「そう言われると少し恥ずかしいかも…」
あずさ「…少し悔しかったりしますけど」
小鳥「やっぱりあずささんも…好きだったんですね」
あずさ「そうじゃないと言ったら…嘘になります」
小鳥「私も心苦しいと思ったことがあるんです」
あずさ「そうなんですか〜?」
小鳥「はい。きっとみんなが好きな人を…こういう形で独り占めしていいのかなって思います」
あずさ「音無さん…」
小鳥「だって、こうしちゃったらみんなのやる気を削いじゃうんじゃないかって」
あずさ「でも…これできっと…良かったんです」
小鳥「そうですか?」
あずさ「もし誰かのものになってしまったら…音無さんに貰われる以上に…みんなやる気が無くなってしまいます」
小鳥「………」
あずさ「他の誰のものでもなく、支えてくれるもう一人の音無さんだから…みんな納得できたんです」
小鳥「喜んで…いいんですよね?」
あずさ「もちろんですよ〜」
小鳥「その言葉を聞いて…安心しました」
あずさ「フフフ、意外と心配性なんですね」
小鳥「それは…もう、この事務所に入ってからずっと…ですから」
あずさ「思えば私が入ってからも長いですね〜」
小鳥「もうどれくらい経ちましたっけ?」
あずさ「さあどうでしょう〜?」
小鳥「あずささんの夢は…未来を共にする人を見つけること…でしたよね?」
あずさ「はい〜」
小鳥「どうですか?」
あずさ「一番近くにいた人が音無さんに取られちゃいましたから〜」
小鳥「それからはまだ…ってことですか?」
あずさ「はい…。ファンの方から…見つかるかしら〜?」
小鳥「あずささんならきっと大丈夫です。だって…」
あずさ「どうしてかしら〜?」
小鳥「毎日あんなにファンレターが来てるんですよ」
あずさ「確かに来てますけど…でもどんな人か分からないから難しいわ〜」
小鳥「だからと言ってこの世界の人っていうのも…ちょっと分からないですね」
あずさ「はい…親しくなっていいのかというのもちょっと怖くって…」
小鳥「スキャンダルも怖いですからね」
あずさ「プロデューサーさんからもそれだけは避けてって言われちゃってます〜」
小鳥「地位も名誉も傷ついてしまいますから、本当に気を付けてくださいね」
あずさ「はい…分かってます」
小鳥「さて…っと。ちょっと様子見てみます?」
あずさ「はい〜」
パカッ
冷蔵庫のドアを開けて中を覗き見る二人。
あずさ「もうあと30分ってところかしら〜?」
小鳥「そうですね。1時間くらい冷やせば大丈夫だって書いてますから」
あずさ「時間がかかるのね〜」
小鳥「ゆっくり待ちましょう、向こうのソファーで休憩します?」
あずさ「んー…そうしたいけど…」
小鳥「けど?」
あずさ「頭の茶色いネズミさんが狙ってる気がして〜」
小鳥「頭の茶色い…ああっ!亜美ちゃんと真美ちゃんがそういえば…」
あずさ「何を作ってるかはもうバレちゃってるみたいなのよ〜」
小鳥「ああ、それだと見てないとダメかしら…」
あずさ「だからできるまではどうしてもいないと…」
小鳥「そうですね、1時間くらいなら律子さんもいいって言ってくれてますし」
そこに…
ガチャっ
「小鳥さん、あずささん、あのドアの貼紙は…」
小鳥「プロデューサーさん、どうしたんですか?」
「いやちょっとあの貼紙が気になって…」
小鳥「私はあずささんのお手伝いをしていただけで…」
あずさ「はい〜、音無さんに明日のイベントで配るチョコを手伝ってもらってたんです〜」
「ああ、どうりで立ち入り禁止って…」
小鳥「プロデューサーさん、一つ味見してみます?」
「え?いいんですか?」
小鳥「既に出来上がっているチョコが…はい、プロデューサーさん」
「そっか…これもチョコって言いましたっけ」
プロデューサーへとココアの入ったカップが渡された。
小鳥「本番のチョコは明日…渡しますからね」
「こ、小鳥さん、あずささんもいるんですから」
あずさ「フフフ、ごちそうさまです〜プロデューサーさん、小鳥さん」
そのあずさの言葉に二人はただただ顔を赤くするしか無かったという…
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あとがき
どもっ、飛神宮子です。
小鳥さん&あずささん、実にこの組み合わせは3度目ですね。
時期としてはちょうどやよい・美希・亜美/真美のうち2組が歌う曲の時期ですね
あずささんはこの二人に対しては若干小悪魔的な動き…になっちゃいますね、どうしても。
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2012・02・14TUE
飛神宮子
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