One day Landscape in Halloween 03(あるハロウィンの風景その3)

ここはある日の…
絵理「『アーアーアーアーアー♪』」
千早「もう少し腹筋に…」
グッ
とある少女が別の少女の腹筋を押し込んだ。
絵理「んっ!」
千早「ほら、もうちょっとお腹からを意識して。もう一回…『アーアーアーアーアー♪』」
絵理「スゥッ…『アーアーアーアーアー♪』」
千早「半音上げるわよ。『アーアーアーアーアー♪』」
絵理「スッ…『アーアーアーアーアー♪』」
千早「今度は足ね。ちょっと重心を前にする感じで」
絵理「こうで…あっ…!」
千早「身体をちょっとだけでいいの」
絵理「これくらいで…いい…?」
千早「それは声を出せば分かるわ。行くわね、『アーアーアーアーアー♪』」
絵理「スーッ…『アーアーアーアーアー♪』」
千早「ほら、前と少し変わったでしょう?」
絵理「はい…」
千早「これだけやれば、大丈夫じゃないかしら」
絵理「ありがとうございます…千早さん…」
千早「ふう…こんな私で良かったのかしら?本当は本職の人に習った方が…」
絵理「それは怖いから…知っている人のほうがいい…?」
千早「水谷さん…それはちょっとどうかと思うわ」
絵理「でも千早さんのことは信頼しているから…」
千早「そう…ありがとう、水谷さん」
絵理「はい…」
千早「それにしてもどうして、水谷さんにこういう仕事が来たのかしら…」
絵理「社長が…よく分からないけど取ってきた?」
千早「でもこの仕事の話は聞いたこと無いの…どうしてうちの事務所には話が来なかったのかしら…」
絵理「わたしにはどうしてか…」
千早「そうね…ちょっと私の方でプロデューサーを問い質してみるから」
絵理「でも前より大分声は出るようになった…」
千早「ドラマで歌を歌う役…私も前にやったことがあるの」
絵理「えっと…四条さんと一緒だった…?」
千早「そう、それよ。でも大変よ、演技もしないとだもの」
絵理「そっちは涼さんに頼んで勉強中…」
千早「秋月さん?」
絵理「はい…ドラマはもうかなりやってるから」
千早「そういえば…もううちの事務所のみんなと何回かしていたわね」
絵理「でも歌はどうしても無理って…」
千早「それで私にだったのね」
絵理「でも千早さんに話が来てないのは…確かに変…?」
千早「その役の話が来た時に、何か言ってなかったかしら?」
絵理「何かって…」
千早「監督の名前とか、脚本の人の名前とか…」
絵理「確か…えっと…」
近くに置いておいたカバンを探る絵理。
絵理「台本…あった…」
中から台本と楽譜を取り出した。
絵理「監督が○○さんで…脚本は××さん…」
千早「そういうことね…その脚本の××さん、そっくりなくらいの人選をするので有名な人ね」
絵理「私がこの役の人にそっくり…?」
千早「逆にその人に合わせて脚本を書くっていう噂も聞いたことがあるわ」
絵理「どうして私…」
千早「それはいずれそれとなく聞いてみるといいかもしれないわね」
絵理「はい…恥ずかしいですけど…」
千早「さて…ってそういえば言うのを忘れていたわね。今日はこれから時間あるかしら?」
絵理「時間ですか…たぶん大丈夫…?」
千早「それならいいわ。ちょっと電話いいかしら」
絵理「どうぞ…千早さん」
Pi♪
千早は携帯電話でとある人を呼び出した。
千早「もしもし、プロデューサーですか?」
『もしもし、千早か』
千早「あの、今日のパーティーって人数増えても大丈夫ですか?」
『パーティーか?ああ、多少だったら問題無いぞ。何人だ?』
千早「水谷さんも今一緒なのですが、どうですか?」
『ああ、それなら問題無いぞ。もともと人数に入ってるからな』
千早「え…?」
『あれ?出る時にちょうど来てた日高さんに伝えておいたはずなんだけどな…』
千早「そうですか?ちょっと聞いてみます。水谷さん?」
絵理「千早さん、何ですか?」
千早「あの、日高さんからこの後の話は聞いてないかしら?」
絵理「何も、特に連絡は無い…」
絵理が携帯電話を見ると…
絵理「メール…愛ちゃんから」
千早「来てたのね?」
絵理「はい…確認してみます」
千早「もしもし、プロデューサー」
『来てたって?』
千早「はい、そうみたいです。それでこっちには何時ですか?」
『そうだな、ここからだと…ってこら美希、ちょっと電話中だって!』
千早「今は買出し中ですか?」
『そうなんだ、えっとここからだと20分くらいで着くとは思うけど』
千早「そうですか」
『何時くらいが都合がいいんだ?』
千早「そうですね…水谷さん、あとどれくらい練習したいのかしら?」
絵理「1曲はある程度まで仕上げたいから…30分くらいは欲しい…?」
千早「クールダウンも入れてだと…プロデューサー、あと50分くらい貰えますか?」
『了解。その時間に到着するように迎えに行くよ』
千早「ありがとうございます、着いたら連絡をください」
『うん』
Pi♪
千早「よしっ…水谷さんそれで練習したい曲は?」
絵理「こっちが少し難しくて…」
千早「これね…そうね、メロディラインが何だか変な感じがするわ。デモテープとかは?」
絵理「これに…ちょっと再生する準備…」
絵理はカバンからノートパソコンを取り出した。
パカッ カチャッ
絵理「確かこのファイル…」
♪〜
千早「…特徴さえ分かればという曲だったのね…さあやりましょ」
絵理「…はい」
絵理は確かな声で一つ、その呼びかけに応えた…
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あとがき
どもっ、飛神宮子です。
ハロウィンの風景その3は千早と絵理。
やはり歌といえば千早。876プロの人達も頼るべき存在といったところなのでしょう。
自分にそこまで…特に歌にはまだ自信のない絵理だからこそ余計に頼ってきたのでしょう。
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2012・10・31WED
飛神宮子
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