それは間一髪だった。 |
P | 「社長!危なーい!」 |
カーーーン |
それはプロデューサーの拳が振り下ろされそうになった棒を弾いた音。さていったい何があったんだろうか? |
……… |
ここはとある島。 |
全員参加の世紀のイベントを大成功させた765プロ。 |
社長の粋な計らいでアイドルの家族を含めた全員を、伊織の親族が所有する島へと招待したのだ。 |
当然のことながら渡航は伊織の会社にお願いして秘密厳守で行なわれたようである。 |
芸能記者には感付かれてすらいない。実は善永さんにもプロデューサーが何かと引き換えに頼み込んだようである。 |
ただ… |
小鳥 | 「うう…どうして私だけ留守番なんですかあ…」 |
と会社で小鳥が嘆いていたのはまた別の話である。 |
1週間と短いながらも、楽しいバカンスタイムが始まりを告げた。 |
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亜美 | 「海だ海だー!」 |
真美 | 「みんな早く泳ごうよー!」 |
亜美と真美は青い海に白い砂浜を見てはしゃぎまくっている。 |
P | 「こらー!亜美も真美もちゃんと準備運動しろー!」 |
雪歩 | 「あうう…」 |
P | 「どうした?雪歩」 |
雪歩 | 「みんなスタイル良くて…穴掘って埋まっておきますぅ…」 |
ザックザックザックザックザックザック |
砂浜へ穴を掘り始めた雪歩。まさかこれがあの大ごとの起因になるとは… |
P | 「おーい雪歩ー、そのくらいで止めて出て来ーい」 |
大の大人でも頭を残して埋まるくらいの穴が出来上がってしまった。 |
雪歩 | 「よいしょっと」 |
雪歩が穴から出てきた。 |
P | 「ほらこんなに砂がついてるぞ」 |
パッパッ |
雪歩 | 「プロデューサー、すみません…」 |
P | 「雪歩も気にすること無いじゃないか綺麗だぞ」 |
雪歩 | 「そ、そうですか?」 |
P | 「ああ、自信を持て」 |
雪歩 | 「…はい」 |
P | 「そうだ…あまり身体は焼かないようにな。ただでさえ雪歩は肌が白い方なんだから」 |
雪歩 | 「分かりました。真ちゃーん!」 |
雪歩も立ち直って、真がいる海の方へと駆け出した。と、そこに… |
亜美 | 「兄ちゃん兄ちゃん、この穴なーにー?」 |
P | 「亜美か。この穴はさっき雪歩が掘ったやつだぞ」 |
亜美 | 「この穴使ってもいい?」 |
P | 「使っていいって…何に使うんだ?」 |
亜美 | 「落とし穴ー。だってこんなに大きくて落としがいがありそうだし」 |
P | 「おいおい…」 |
亜美 | 「んじゃ、使っちゃうねー」 |
何やら手際よく仕掛け始めた亜美。まさかこれにハマる人があの人だとは… |
|
その後… |
ズゾゾゾゾゾ |
社長 | 「な、何だねこれは!」 |
P | 「社、社長!?」 |
社長 | 「き、君かね!こんなことをしたのは!」 |
P | 「いいえ、それをやったのは…」 |
亜美 | 「わー!社長がハマったー!埋めちゃえー!」 |
と、社長がハマった穴を埋め始めた亜美。 |
真 | 「何やってんの?あ、社長かあ…亜美、ボクも手伝おっか?」 |
亜美 | 「まこちん、手伝ってー」 |
社長 | 「こ、こら!亜美君!菊地君!」 |
あずさ | 「あらあら〜、社長さんがどんどんと埋まっていってるわ〜」 |
亜美 | 「あずさお姉ちゃんもやんないー?」 |
あずさ | 「そうね〜、ちょっとくらいならぁ…えいっ!えいっ!」 |
社長 | 「ちょ、ちょっとあずさ君まで!君!三人を止めなさい!」 |
P | 「でもせっかくですし…お遊びじゃないですか社長」 |
社長 | 「…君までそう言うとは…」 |
社長の身体はもうほぼ埋まって顔だけの状態になってしまった。 |
パンパンっ |
真が締めに周りの砂を固めた。 |
真 | 「こんなんでいい?亜美」 |
亜美 | 「いいよー!あんがとね、まこちん、あずさお姉ちゃん」 |
P | 「よし。あずささんも来たことだし、そろそろスイカ割りでもするか」 |
あずさ | 「ええ?!どうして私のことを?」 |
P | 「これはあずささんが適任なんです。真、海に居るみんなを呼んできて」 |
真 | 「分っかりましたー」 |
P | 「亜美は浜辺にいるみんなを集めて」 |
亜美 | 「りょーかいっ!」 |
P | 「あずささんは小屋で休んでいる方をお願いできますか?」 |
あずさ | 「はい〜」 |
|
あずさ | 「あらあら、スイカはどちらでしょう〜」 |
亜美 | 「あずさお姉ちゃん右ー!」 |
やよい | 「あずささん左、左ー!」 |
あずさ | 「こっちかしら〜?」 |
目隠ししているあずさ。そしてその向かっている方向にはスイカと… |
社長 | 「な、なぜこんなところに置いてあるのだね!」 |
先ほど埋められた社長(頭だけ)が。 |
真美 | 「あずさお姉ちゃん、そのまま真っすぐー!」 |
あずさ | 「こっちの方ね〜」 |
徐々にあずさとスイカや社長への距離が近付いてくる。 |
社長 | 「あずさ君こっちに向かってないかね?」 |
春香 | 「あずささん、そこー!」 |
その声に振りおろそうとした瞬間… |
びゅうんっ |
あずさ | 「きゃあっ!」 |
不意に強い風が吹いてあずさの身体がよろめいてしまったが、そのままの勢いで振り下ろされる棒… |
P | 「社長!危なーい!」 |
カーーーン |
プロデューサーはすんでのところで、社長の方に振り下ろされていた棒を弾いた。 |
社長 | 「君…助かった」 |
P | 「さすがに社長に怪我されたら取り返しがつかないじゃないですか」 |
社長 | 「…感謝するぞ。私は良いから、あずさ君の方に付いてやってくれ」 |
P | 「分かりました。あずささん、大丈夫ですか」 |
あずさ | 「は、はい…でも私は何を…?」 |
P | 「棒の方向が変わって社長の方に向いちゃったんですよ」 |
あずさ | 「まあ!そうだったんですか〜」 |
P | 「でも大丈夫でしたから。スイカ、目隠し取って良いんでもう割っちゃってください」 |
あずさ | 「え?あ、はい〜」 |
パカッ |
ようやくスイカは真っ二つに割れた。 |
P | 「さて、割れたことですし食べましょうか」 |
あずさ | 「でも〜この人数で大丈夫でしょうか〜?」 |
P | 「あ、もう別のも切ってあるんで大丈夫ですよ」 |
あずさ | 「そうだったんですか〜」 |
社長 | 「君たち、それはいいから早く私を助けなさい…」 |
そんなこんなで色々あったが、楽しい旅はこれからも続くのであった… |
ただプロデューサーだけは、小鳥をどうあやそうか気が気でなかったらしい… |