ある日の事務所でのこと… |
あずさ | 「ふんふん…今の流行はそうなのね〜」 |
ソファーに座って何やら雑誌を読んでいる女性が一人。 |
あずさ | 「じゃあ私も少しあの部分変えてみようかしら」 |
そこに… |
雪歩 | 「あずささん、何を読んでるんですか?」 |
コトッ |
雪歩が急須と茶碗をテーブルに置いて隣に座ったようだ。 |
あずさ | 「あら雪歩ちゃん、この記事なんだけど〜」 |
雪歩 | 「えっと…『モテる髪型大全集』…ですか?」 |
あずさ | 「そうよ。んー、雪歩ちゃんから見て今の私はどうかしら?」 |
雪歩 | 「今のロングヘアーは素敵だと思います」 |
あずさ | 「そうかしら?」 |
雪歩 | 「私はこんなに伸ばしてもたぶん似合わないですぅ」 |
あずさ | 「確かに雪歩ちゃんはそのカットがよくお似合いだわ」 |
雪歩 | 「あ、ありがとうございます」 |
あずさ | 「でもそうねぇ…髪って切ってすぐ生えるものでもないから〜」 |
雪歩 | 「そうですよね。だから髪型を変えるって、凄く勇気が入りますね」 |
あずさ | 「そうね、試せるわけでもないから難しいし」 |
雪歩 | 「あっ!そうだ…」 |
何やら雪歩が思いついたようだ。 |
雪歩 | 「あずささん。ちょっと時間ありますか?」 |
あずさ | 「時間?ええ、今日は特に仕事も無いから、事務所でゆっくりする予定だったの」 |
雪歩 | 「それなら…」 |
……… |
雪歩が連れてきた場所、そこは衣裳部屋であった。 |
あずさ | 「まずはこのネットで全部包むのね」 |
雪歩 | 「はい。今の髪は守ってもらわないとですから」 |
あずさの髪が徐々に纏められてネットの中に収まっていく。 |
あずさ | 「あとは…はい、これで大丈夫よ」 |
雪歩 | 「それでこのカツラをかぶってください」 |
あずさ | 「これは…私の髪型の…こんなのがどうしてあるのかしら?」 |
雪歩 | 「前に聞いたんです。人気が凄い時期に影武者用に全員が何個かずつ作ったって聞いてます」 |
あずさ | 「そういうことなのね〜」 |
雪歩 | 「もし髪型を変えるならもう必要ないですよね」 |
あずさ | 「そうなるわね〜」 |
雪歩 | 「だったらこれで切ってみたらどうかなって思ったんです」 |
あずさ | 「なるほど〜、さすがは雪歩ちゃんね」 |
雪歩 | 「そ、そんなことないですよぉ…」 |
少し照れて赤くなった雪歩。 |
あずさ | 「でもどこで切ろうかしら?」 |
雪歩 | 「あずささんの美容院ってどこなんですか?」 |
あずさ | 「事務所からだと3駅向こうの駅の近くよ〜」 |
雪歩 | 「今から行ってみます?」 |
あずさ | 「私は大丈夫だけど、雪歩ちゃんは大丈夫なの?」 |
雪歩 | 「はい、今日はお仕事が急にキャンセルになっちゃってヒマになっちゃったんです」 |
あずさ | 「んー、誰かにも見てもらいたいから…雪歩ちゃん、付き添いお願いできるかしら?」 |
雪歩 | 「ぜひお願いします!あずささんの行ってるお店も気になりますから」 |
あずさ | 「ちょっと待って、ちょっと今日出来るか予約の電話を入れてみるわ」 |
|
あずさ | 「はい〜、じゃあ今日の13時からお願いします〜」 |
Pi♪ |
あずさ | 「大丈夫だって。じゃあ13時に着くように12時半には出ましょ」 |
雪歩 | 「そうですね。お昼ご飯は…」 |
あずさ | 「そうねえ…事務所には今誰がいるのかしら?」 |
雪歩 | 「確か律子さんと亜美ちゃんと伊織ちゃんと小鳥さんとプロデューサーだったかなあ」 |
あずさ | 「それなら何かピザでも取っちゃうってどうかしら?」 |
雪歩 | 「うーん、私たちの独断で決めちゃっていいんでしょうか?」 |
あずさ | 「それは向こうで相談しましょ」 |
雪歩 | 「そうですね」 |
……… |
所変わってここはあずさの行きつけの美容院。 |
美容師 | 「また変わった用件だね、三浦さん」 |
既に散髪用の椅子に座っているあずさ。 |
あずさ | 「ええ。伸ばしっぱなしっていうのも、そろそろどうかしらって思って〜」 |
美容師 | 「まあでもたぶん三浦さんなら、どんな髪型でも似合うと思うけどねえ」 |
あずさ | 「とりあえずまずはこの髪型みたく短くしてみてください」 |
美容師 | 「分かったわ。えっと、カツラはいくつあるんだい?」 |
あずさ | 「雪歩ちゃん、いくつ持ってきたかしら〜?」 |
雪歩 | 「そのあずささんが付けている物を入れて3つですよぉ」 |
美容師 | 「お、あの子が萩原さんかい?」 |
あずさ | 「はい。事務所の可愛い後輩です〜」 |
美容師 | 「まずはあの子くらい短くしてみようか」 |
あずさ | 「お願いします〜」 |
|
数十分後… |
美容師 | 「こんなもんかしら。どう?三浦さん」 |
あずさ | 「これが私…ですか?」 |
そこには真並みに髪を短くしたあずさの姿があった。 |
美容師 | 「なかなか短いのも似合ってるじゃない」 |
あずさ | 「雪歩ちゃーん、これどうかしら?」 |
雪歩 | 「あずささん、全然イメージが違いますぅ」 |
あずさ | 「そうね、これだけ切るとさすがに変わるわね」 |
雪歩 | 「何だか今まで違って少し子供っぽい感じがします」 |
美容師 | 「ちょっとあの子よりは短くしちゃったけど、こっちの方が似合ってるわ」 |
あずさ | 「んー、でも他の髪型も試してみようかしら〜」 |
美容師 | 「分かったわ、あと2つ作ってみるわ。んー、セミロングとアレンジヘアーで作るわね」 |
あずさ | 「お願いします〜」 |
……… |
それから一週間後… |
あずさ | 「おはようございます〜」 |
小鳥 | 「おはようございま…え?え?どうしたんですか!?あずささん」 |
雪歩 | 「おはようござ…あずささん!?」 |
その場にいた小鳥と雪歩は目をパチクリした。 |
あずさ | 「あら〜おはようございます、音無さん、雪歩ちゃん」 |
小鳥 | 「ど、ど、な、何で髪が短くなってるんですかー!?」 |
事務所に入ってきたのはショートヘアにしたあずさだった。 |
あずさ | 「これ?この前試してみたので一番評判が良かったのにしてみたんです〜」 |
小鳥 | 「評判って…ああっ!先週事務所に戻ってきたときにみんなで選んだ…」 |
雪歩 | 「本当にしちゃったんですかぁ!?!?」 |
そこに… |
P | 「どうしたんですかこと…ええっ!?あずささん、急に何してるんですか!?」 |
あずさ | 「おはようございます〜プロデューサーさん」 |
P | 「ど、どうして急に髪なんか…」 |
あずさ | 「むー、似合わないですか?」 |
P | 「いや、そういうわけじゃ…」 |
あずさ | 「今日から私も心機一転してみようかって…思ったんです」 |
P | 「あずささん…」 |
そのあずさの瞳には今までと違う世界が移りこみ始めていたという… |