ここはある日の事務所… |
春香 | 「おはようございまーす!」 |
律子 | 「おはよう春香」 |
春香 | 「律子さん、おはようございます。あれ?プロデューサーさんは?」 |
律子 | 「プロデューサーは会議室よ。春香のこと待ってるみたいだわよ」 |
春香 | 「え?え…あーっ!じ、時間見間違えてたっ!」 |
律子 | 「早く行ってらっしゃい…はあ、やれやれ…」 |
春香 | 「わ、分かりましたっ。ちょ、ちょっと行ってきます!」 |
……… |
ここはその会議室。そこには… |
P | 「さあて、どうしてなのかな?春香ちゃん」 |
春香 | 「す、すみません…時計を見間違えてて…」 |
P | 「事務所での打ち合わせだったし、春香の場合電車だからこっちから電話掛けなかったとはいえ…」 |
春香 | 「な、何だかおかしいとは思ってたんですけど…」 |
P | 「それで1時間まるまる間違えたと…まあいい、ちゃんと反省するように」 |
春香 | 「はい…」 |
P | 「それで今日来てもらったのは、春香に毎回頼んでいるアレだ」 |
春香 | 「新しい衣装が出来たんですね」 |
P | 「そういうことだ。撮影はダンスレッスン場な」 |
春香 | 「それで衣装はどこですか?」 |
P | 「律子にロッカールームに届けてもらってるから、そこで着替えてくれ」 |
春香 | 「分かりました。じゃあ行って…ふわあっ!」 |
コケっ |
何も無い所で転べるのがこの春香。 |
ドンガラガッシャーン |
春香 | 「あいたたたた…」 |
P | 「だ、大丈夫か春香」 |
春香 | 「大丈夫ですけど、あっ!」 |
P | 「どうした?」 |
春香 | 「あの…今回の衣装って丈はどれくらいですか?」 |
P | 「いつものやつと、特別衣装は膝上のスカートだけどどうした?」 |
春香 | 「それが…」 |
と、プロデューサーに脚を見せる春香。 |
P | 「あちゃー…どうしようか」 |
春香の脚には今の転倒で付いた青あざがあった。 |
春香 | 「この位置だと無理ですよね?」 |
P | 「ああ、ちょっと入っちゃうかもな」 |
春香 | 「どうしたらいいですか?もう、こんな時になんて…」 |
すっかり落ち込んでいる春香。 |
P | 「でもなあ…衣装が届いたのは、春香と伊織と真美とやよいとあずささんと律子のだしなあ…」 |
春香 | 「そうですか…でも、みんな今日はオフだったですよね」 |
P | 「ああ…ん?」 |
春香 | 「え?…あっ!」 |
P | 「律子って来てたよな」 |
春香 | 「はい。さっき挨拶してこっちに来ましたから」 |
P | 「…頼んでみるか」 |
春香 | 「…お願いします」 |
……… |
律子 | 「な、何ですかいきなり!」 |
事務室に戻ってくるなり突然のプロデューサーの土下座に驚く律子。 |
P | 「お願いだ!……………」 |
律子に事情を説明したプロデューサー。 |
律子 | 「はあ…それで私が代理をしろと」 |
P | 「どうだ?」 |
律子 | 「もう…そんな土下座なんてしなくたって、そういうことならやるわよ」 |
P | 「いいのか?律子」 |
律子 | 「だってしょうがないじゃない。でももう、春香のドジは国宝級ね」 |
春香 | 「すみません律子さん…」 |
律子 | 「春香、別に怒ってなんかないわよ。早くやっちゃいましょ」 |
P | 「そ、そうだな。お願いな、律子」 |
……… |
そのロッカールーム… |
春香 | 「うう…本当にすみません、律子さん」 |
律子 | 「いいのよ。たまには一番に袖を通してみたかったから」 |
春香 | 「でも…」 |
律子 | 「いいの。まったく、そんなに落ち込んでるなんて春香らしくないわよ」 |
春香 | 「…えっ?」 |
律子 | 「春香はいつだって頑張り屋さんなんだから、それくらいでくよくよしないの」 |
春香 | 「…はいっ、でも律子さんって本当に事務員らしからぬスタイルですよね」 |
律子 | 「は、春香っ!」 |
春香 | 「小鳥さんもスタイルいいし、はあ…羨ましいなー」 |
律子 | 「そ、そんなことないわよ」 |
春香 | 「何もしなくてそれだから羨ましいんです」 |
律子 | 「もう…」 |
むにゅっ |
律子は春香のどこかを摘まんだようだ。 |
春香 | 「ひゃあんっ!」 |
律子 | 「春香、また太ったわね」 |
春香 | 「い、いきなり触るなんて…びっくりですよぉ…って、ええっ!?」 |
律子 | 「いくら食欲の秋だからって、間食とか夜食とかし過ぎでしょ?」 |
春香 | 「そうかも…最近は果物も美味しくなってきちゃったし…」 |
律子 | 「アイドルなんだから、少しはその辺自重しなさいよ」 |
春香 | 「はい…」 |
律子 | 「衣装作り直しするの面倒だし、そんなに予算無いんだから」 |
春香 | 「きょ、今日の大丈夫かな…」 |
律子 | 「そのくらいならたぶん何とかね。でもプロデューサーにお願いしておくわ」 |
春香 | 「な、何をですか?律子さんの目、怖いですよ…」 |
律子 | 「しばらくダンスレッスン漬けにしてもらうから。テレビ出演はお預けかもしれないわね」 |
春香 | 「そ、そんなあ…うう…何とかならないですか?」 |
律子 | 「自己責任じゃない。そこの体重計持ってきてあげるから、しっかりその目で確認しなさいね」 |
春香 | 「た、体重計だけは勘弁して…」 |
律子 | 「ダーメ。あ、プロデューサーの目の前でちゃんと量ってもらおうかしら」 |
春香 | 「プ、プロデューサーだけはーっ!お願いですーっ!」 |
律子 | 「ダメよ。折角だから春香の現状を見てもらわないと」 |
春香 | 「うう…律子さんの鬼ー!悪魔ー!」 |
律子 | 「いいわよ春香にそう言われても、後で怒られるのは春香の方なのよ」 |
と、そこに… |
コンコン |
P | 『おーい、二人ともまだかー?』 |
ドアの向こうから二人を呼ぶ声が。 |
律子 | 「もう少しで準備できるんでー、そっちの準備はもう大丈夫ですか?」 |
P | 『ああ。ビデオカメラもカメラもセット済みだぞー』 |
律子 | 「ほら行くわよ、春香」 |
春香 | 「そ、そんな笑顔で行かないでくださいよぉ…」 |
と言う律子の腕には既に体重計がしっかり収められていたという… |