時は新緑の季節… |
やよい | 「うあー、こんな服を着るんですか?」 |
P | 「ああ、今日は二人で一日署長だからな」 |
律子 | 「でも少し緊張するわね、やよい」 |
P | 「お、律子でも緊張するのか」 |
律子 | 「それは私だって人間よ、緊張しないわけないじゃない」 |
P | 「それでもアイドルとして舞台とかは出慣れているだろ」 |
やよい | 「でもでも、こういう場所じゃ緊張しちゃいます」 |
律子 | 「そうよね、女性警察官なんて衣装でも着たことなんか無いし」 |
P | 「でもな、こういうことをやらせて貰えるのは、人気アイドルになった証拠だぞ」 |
律子 | 「…そうね、本当にありがたいわ」 |
P | 「じゃあちょっと俺は打ち合わせに行ってくるから、準備整えておいてくれ」 |
律子・やよい | 「「は〜い」」 |
カチャッ バタンッ |
と、プロデューサーは一端席を外した。 |
律子 | 「それにしても一日警察署長ねえ…」 |
やよい | 「うー…どんなことをすればいいんでしょう?」 |
律子 | 「それは今、プロデューサーが打ち合わせしてくるから」 |
やよい | 「あ、そうでしたね」 |
律子 | 「でもこんなことで警察署に来るなんてね」 |
やよい | 「はい、びっくりです。警察署に来たのはあの時以来ですー」 |
律子 | 「あの時以来って…やよいは来たことがあるの?」 |
やよい | 「えっと…はい」 |
律子 | 「んー…何があったの?話したくなかったらいいけど…」 |
やよい | 「弟が迷子になったときにお世話になって…」 |
律子 | 「なるほど…そういうことね」 |
やよい | 「その時はお父さんもお母さんも行けなくって、代わりに私とプロデューサーで…」 |
律子 | 「でも、良かったわ…変なこととかじゃなくって」 |
やよい | 「だから、その時お世話になった分だけ今日は頑張ろうかなあって」 |
律子 | 「そうね、その意気よやよい」 |
カチャッ |
やよい | 「おかえりなさい、プロデューサー」 |
律子 | 「おかえり、プロデューサー」 |
P | 「お、準備は大丈夫か?」 |
やよい | 「はいっ、それで今日はどんなことをするんですか?」 |
P | 「ああ、それについてだけど…」 |
……… |
P | 「こんな感じになる予定だけど、何か質問は?」 |
律子 | 「プロデューサー、この実演って何かしら?」 |
P | 「そのことなんだけど幼稚園に作ったセットの中で、泥棒役を捕まえるんだって」 |
やよい | 「ええー、そんなこと私たちだけで大丈夫なんですか?」 |
P | 「いややよい、これはお遊戯みたいなもんだしさ」 |
律子 | 「でもねえ…」 |
P | 「それに幼稚園で見せるものだから、そんなに気を張らなくてもいいぞ」 |
律子 | 「で、その犯人役は誰なのよ」 |
P | 「それがな…」 |
黙って自身を指さすプロデューサー。 |
やよい | 「ええっ!?プロデューサーですかっ!?」 |
P | 「ああ、いい人材が居なくてさ」 |
律子 | 「はあ…何でそういうことになるかなあ…」 |
やよい | 「でもでも、変な人じゃなくて良かったですー」 |
律子 | 「まあそれもそうね…ってプロデューサーはそれで良かったの?」 |
P | 「しょうがないさ、これも仕事だと思ってやるしかないだろ」 |
律子 | 「決まっちゃった物はしょうがないわねもう」 |
やよい | 「プロデューサーを逮捕する…うー、何だか燃えてきました!」 |
律子 | 「ええっ!?やよい…」 |
P | 「まあほどほどにしてくれよな」 |
やよい | 「は〜い」 |
……… |
律子・やよい | 「「みんな〜、これからもちゃんと気をつけるんだよー」」 |
園児 | 『は〜い!!』 |
律子・やよい | 「「ばいば〜い!」」 |
幼稚園での仕事を終えて、袖へと下がった二人とプロデューサー。 |
P | 「ふう終わったか、いてててて…」 |
やよい | 「だ、大丈夫ですか?プロデューサー」 |
P | 「ああ、大丈夫だやよい」 |
律子 | 「プロデューサーがあんなに暴れるからですよ、まったく」 |
P | 「でもまさか律子の警棒が鳩尾に直に入るとは…っつっ!」 |
律子 | 「ゴメンってば、まさかあんな風になるなんて思わなかったのよ」 |
P | 「まあウケも良かったから、いいんだけど」 |
やよい | 「プロデューサー、向こうで誰かが呼んでますよ」 |
P | 「分かった。ちょっと行ってくるから、二人とも休憩場所に居てくれ」 |
律子・やよい | 「「はい」」 |
……… |
P | 「今日はどうだった?二人とも」 |
やよい | 「とっても楽しかったですー」 |
律子 | 「ちょっと疲れたけど、良い体験が出来たわね」 |
P | 「二人とも警察官姿は格好良かったぞ」 |
やよい | 「えへへー、ありがとうです」 |
律子 | 「そう言われるのも悪くは無いわね」 |
P | 「二人にだったら逮捕されても良いかなって思ったくらいだぞ」 |
律子 | 「それならお望み通り逮捕するわよ、あんな衣装着せて歌わせるなんてセクハラじゃない」 |
P | 「…ゴメンなさい」 |
律子 | 「謝るってことは自覚があったのね」 |
P | 「そ、それは…」 |
やよい | 「うわー、律子さん凄いです。それって『かんれーどーもん』でしたっけ?」 |
律子 | 「やよい、もしかして『誘導尋問』って言いたいの?」 |
やよい | 「あ、それです!そうでした」 |
P | 「いや、でもアレはアレで好評だったじゃないか」 |
律子 | 「でも私たちは恥ずかしかったんだから」 |
やよい | 「本当ですよ、プロデューサー。もうメッです」 |
P | 「分かった…これからは自重するから」 |
律子 | 「まあ今日の警察官の衣装みたいのだったら、良いかもしれないわね」 |
P | 「うーん、でも汎用性が無いとなかなか採用は難しいからなあ」 |
律子 | 「そうよね、予算の問題も色々あるし」 |
P | 「ま、でも検討してみるさ」 |
やよい | 「本当ですかっ!?」 |
P | 「ああ。何せあの宇宙服衣装まで作っちゃったんだからさ」 |
律子 | 「…あれはねえ…社長も何考えてるんだか…」 |
夕方の事務所、充実した一日を振り返っていた三人であった… |