Genuine Happiness(本当の幸せ)

ここはある日の夜…
春香「小鳥さん、今日はありがとうございましたっ」
小鳥「いいのよ、私も気晴らしになったもの」
春香「でもやっぱり小鳥さん、歌が上手いですよね」
小鳥「ありがとう、春香ちゃん」
春香「急なライブとかでも軽々歌っちゃえる事務員さんなんていませんよー」
小鳥「そうかしらね…フフフ」
春香「でも前にナイトバーでしたっけ?そこで聞かせてもらった時の歌声も綺麗でしたよ」
小鳥「あれが私の一つのライフワークだから…ね」
………
さてここはその日の朝…
春香「おはようございまーす!」
一人の少女が元気に入ってきた。
小鳥「おはよう、春香ちゃん」
春香「おはようございます、小鳥さん」
小鳥「今日の春香ちゃんは…え?今日ってオフじゃなかったかしら?」
予定の書かれているホワイトボードを見る小鳥。
春香「え…?」
春香の目もそちらに向かう。
春香「小鳥さん、ここにちゃんとあるじゃないですかー」
小鳥「え?どこ?」
春香「ほらここですよ、ここ」
春香の指差した先を見た小鳥。
小鳥「これ?」
そこにはプロデューサーや律子、小鳥の字ではない文字で何やら書かれていた。
春香「はい!」
小鳥「これって昨日書いてあったかしら?」
春香「たぶん小鳥さんが帰った後ですよ。それにこれ、私が書いちゃいました」
小鳥「なるほど…でも今日はプロデューサーさんもいないし…どうするの?」
春香「そこなんですけど…」
………
さてここは…
春香「あ、あ、あー…」
小鳥「ところで春香ちゃん」
春香「どうしたんですか?小鳥さん」
小鳥「どうして私がこんなところに連れてこられたの?」
春香「誰かに聞いてもらうのが一番良いってプロデューサーさんが言ってて…」
小鳥「それで…あ、もしかして昨日プロデューサーさんが言ってたのってこれのことだったのね」
春香「へ?」
小鳥「プロデューサーさんに言われてたの。明日は春香ちゃんのこと頼みますって」
春香「それならきっとそうですよー」
小鳥「じゃあまずは春香ちゃんの実力を見せてもらおうかしら」
春香「はいっ、どの曲がいいですか?」
ここはカラオケボックスである。
小鳥「そうね…これとこれと…ライブだとこれも合わせていける?」
春香「んー…はい、やってみます」
 
まず3曲歌い終えて…
春香「どう…でしたか?」
小鳥「んー…私が言っていい立場じゃないとは思うけれど…」
春香「いいですよ、小鳥さんなら私も納得します」
小鳥「何かしら…心の篭め方の方向性が少しズレてるんじゃないかしら」
グサッ
春香は心の中で何かが刺さる音を感じていた。
春香「うう…」
小鳥「もうちょっと厳しいこと言うと…」
春香「え…?」
小鳥「ただ明るく歌っているだけに聞こえちゃってるの」
グサグサッ
春香の心の中には徐々にそれが増えていく…
春香「そうですか…」
小鳥「最近どうしたの?歌声を聴いてるとだけど…何か迷いがあるわね」
グサグサグサッ
確信を突かれてついに…
ガクッ
膝から崩れ落ちた。
小鳥「は、春香ちゃん大丈夫?」
春香「だ、大丈夫です…小鳥さんに言われたことがあまりに図星だったから、力が出なくなっちゃって…」
小鳥「一度落ち着いて、座った方がいいわね」
春香「はい…」
春香はステージから降りて小鳥の向かいの椅子に座った。
小鳥「でもどうしたの?図星ってことは…」
春香「はい…ちょっと最近…」
小鳥「やっぱり…そうだったのね」
春香「最近…何だか千早ちゃんに離されちゃってる気がして…」
小鳥「離されてるって…」
春香「千早ちゃんって元から歌の実力は私より数段上なのはもう仕方ないって思ってたんです」
小鳥「………」
春香「それに追い付きたい、追い付こうって思ったんです。でも…」
小鳥「でも…自分が上手くなっても千早ちゃんはその先を行ってしまっている、そういうことね?」
春香「はい…だから最近、無理しちゃってるのかも…なんです」
小鳥「んー…そうね。春香ちゃん、そこまで無理してる自分って本当の自分?」
春香「えっ…?」
きょとんとした表情の春香。
小鳥「今までの自分を押し潰してまで無理しちゃったら、それは本当の自分じゃないわ」
春香「………」
小鳥「実力の違い、それは先天的なものもあるからどうしようもない場合もあるわ」
春香「そう…ですね」
小鳥「それで無理をするよりも、本当の自分を出していくことの方が大切よ、きっと」
春香「………はいっ」
春香はその小鳥の言葉に、何か思いを篭めて返事をした。
小鳥「さて、じゃあ私も何か歌っていい?春香ちゃん」
春香「はい!久し振りに小鳥さんの歌声を聴きたいです!」
小鳥「今日は特別に、あの曲に加えてみんなの曲で何曲か行くわよ」
春香「うわあ、小鳥さんの声で聴けるって楽しみです」
小鳥「それじゃあ…これと…それと…春香ちゃんリクエストはある?」
春香「あ、そうですね…じゃあこれって大丈夫ですか?」
小鳥「もちろんよ、よし…」
小鳥は一呼吸置いた後に…
小鳥「まずはこの曲ね…『空』」
春香の眼の中には、小鳥の新たな一面が写り込み始めていた…
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あとがき
どもっ、飛神宮子です。
小鳥と春香。久々の組み合わせになりました。
春香も悩んでいたけど…何だか素直に伝えられなかった…ということでしょう。
問題だけじゃなく、答もちゃんと…それこそがサポート役の小鳥さんなのでしょう。
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2012・05・21MON
飛神宮子
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