We Polish a Growth Gemstone(成長の珠を磨く)

♪〜
響の携帯電話にメールの着信を告げる音が鳴り響いた。
「お、プロデューサーからだな」
響はそのメールを見た瞬間、事務所へと一目散に駆け出していった…
………
そして事務所に入るなり…
「律子はいるかー?」
律子「あら、どうしたの?響」
「あー、良かった…自分にも来たんだ」
律子「…その表情は…アレね?」
「うん…」
律子「どれどれ?ヒントはどんな感じかしら」
「それがだけどさー」
(1)かしまし
(2)とうき
(3)古ノルド語
響はヒントとなるメールを律子へと見せた。
律子「な、何なのよ今回のヒントは…」
「もう最後なんてどんな言葉なのか全然分からなかったぞ」
律子「でも何か異様ね。ここまでやってくるってことは、ヒントが作りにくかったってことかしら」
「そ、そうなのか」
律子「ええ。今まで結構分かりやすいヒントが多かったのよ…あと一つね、実は誤算があったのよ」
「誤算?」
律子「響は二つのうちのどちらかと予想していたんだけど…実はハズレたのよ」
「それってどことどこなんだ?」
律子「神奈川か静岡って予想だったんだけど…どっちも違う気がするのよ」
「そうなのか?」
律子「その二つならもう少し分かりやすいヒントが出そうだもの。でもまあ神奈川は雪歩と予想しているから消えてたけどね」
「そっか。それにしてもこのかしましって…何か聞いたことある気がするんだけど」
律子「それはきっとアニメね。ちょっと昔にそういうタイトルのアニメがあったらしいわ」
「なるほど、でもそんな単純なヒントじゃなさそうだよな」
律子「そうね、あのプロデューサーのことだからこれは捻ってきそうだわ」
「それからこのとうきはどの意味なんだろう?」
律子「平仮名の場合はだいたい漢字に変換すればいいけど、候補多いのよね」
「そしてこの最後だよ、分かるわけがないさー!」
律子「ちょっと調べてみるわ」
律子はパソコンで最後の言葉を調べ始めた。そこに…
ガチャっ
雪歩「おはようございますぅ」
「おはよう、雪歩」
律子「雪歩、おはよう」
雪歩「律子さん、響ちゃんおはようございますぅ。どうしたんですか?難しい顔してますけど」
律子「あ、例のヤツよ。響の誕生日もう来たから」
雪歩「それでどこか分かったんですか?」
律子「それが今回難問でねぇ…ちょっと調べたんだけど、このWikiのどこかにヒントがあるってことだけど…」
雪歩「古ノルド語…ですか?」
律子「ええ。この文章読んでも手がかりがさっぱりね」
「自分にもちょっと読ませて欲しいぞ」
雪歩「あ、私も読んでみたいです」
律子「いいわよ、雪歩は椅子持ってきて」
 
文章を読み耽る響と雪歩…
律子「二人ともどうかしら?」
「うーん、ヨーロッパなのにどこかの県ってことだよなー…」
雪歩「ルーン文字とか言われても分からないです」
律子「それで気になる言葉とか文章とか無かった?」
雪歩「あ、ちょっと個人的なことで関係ないけど気になったのが…」
律子「どれかしら?」
雪歩「この『アイスランドやノルウェーでは多くのサガや詩がラテン文字で書かれた。』って。自分の参考になるかなって」
律子「今度調べてみるわね…ん?今どこの文章のこと言ったの?」
雪歩「この文章です」
雪歩は画面を指差した。律子はそれで何かを思いついたようで…
律子「………もしかして…」
とある言葉を入力して変換した。
律子「やっぱり…答えはちゃんとここにあったじゃない。雪歩、ナイスアシストよ!」
雪歩「えっ?!えっ?!」
雪歩は何のことか分からずにオロオロし始めた。
律子「響、答えは佐賀県よ。と言うことは『とうき』は…あのことね」
「う、うん分かったぞ。ピヨ子の所へ行ってくるぞっ」
 
小鳥のデスクへと移動した春香。
小鳥「あら?響ちゃん、どうしたの?」
「ピヨ子…さっきプロデューサーから来たメールの答えなんだけど…」
小鳥「プロデューサーさん?あ、久しぶりだったから…今日なのね」
「うんっ」
小鳥「それで答えは?」
「答えは佐賀…か?」
小鳥「………」
小鳥は無言になって…
カチャカチャ ガチャンッ
机の鍵が掛かっている引き出しを開けてそこから一枚の封筒を取り出した。
小鳥「はい、響ちゃん」
その封筒が春香へと渡された。
小鳥「プロデューサーさん、待ってるわ。明日行ってらっしゃい」
「…うんっ!行って来るぞ」
小鳥「ちょっと待ってね」
PiPiPi♪…
小鳥はとある場所へと電話をかけ始めた。
Trrrrrr…Trrrrrr…
小鳥「もしもし、765プロダクション事務の音無です……はい……では土曜に羽田空港第2ターミナル前に正午でお願いします」
カチャンッ
小鳥は受話器を戻した。
小鳥「土曜の11時半に羽田空港に着くくらいで行くから、ちゃんと準備しておいてね」
「持ち物はあの紙に書いてあった通りで良いのか?」
小鳥「ええ。楽しんできて、響ちゃん。あ、ペットはどうするの?」
「大きいの以外は預かって貰うつもりだけど、イヌ美だけはどうしようかな?」
小鳥「前日までに行き先確保しておいてね。ペットホテルは…1/4は実費ね」
「うー…やっぱり全額は無理か?」
小鳥「これでも半額は番組から出してもらうんだから、それだけで良かったじゃない」
「ま、まあそっかな…」
………
当日の羽田空港第2ターミナル…
小鳥「脇山さんですね、私は765プロ事務の音無です」
珠美「はいっ、956プロダクション所属の脇山珠美ですっ!」
そこには若干茶色髪の少女が一人、響の到着を待っていた。
小鳥「今日はうちの我那覇をよろしくお願いします」
「よろしくお願いしますだぞ、脇山さん」
珠美「そんな堅苦しくされなくても良いです、我那覇さん」
「えっと…失礼かもだけど脇山さんは何歳なんだ?」
珠美「珠美ですか?珠美は16歳です」
「えっ…自分と同い年なのか?!」
珠美「ということは我那覇さんも同じ16歳ですか?」
「そうだぞ。同い年で自分より身長低いって新鮮さー」
珠美「う…身長のことは…」
小鳥「響ちゃん、それくらいにしましょ。確かにうちの事務所で見ても、響ちゃんより低いのはやよいちゃんだけだけど」
「自分も身長はちょっとしたコンプレックスだからさー、同じような人とってちょっと嬉しいかもさー」
珠美「珠美も安心しました。番組に出たりすると、いつもこれが嫌だったりしましたから」
「よし、じゃあよろしくさー、珠美」
珠美「こちらこそ、響さん」
小鳥「それでは脇山さん、2日間よろしくお願いします。響ちゃん、行ってらっしゃい」
「行ってくるぞ、ピヨ子」
 
佐賀に向かう飛行機、二人は隣同士で座っていた。
「やっぱりコンプレックスになるよなー」
珠美「そうですね。この身長だとなかなか戦いにくいところもあったりしますし」
「そういえば姿勢いいな。何かやってるのか?」
珠美「珠美は剣道をやっています。姿勢は良くなりましたが、しかし身長は…」
「体質っていうのもあるからなー。自分もそうなのかもしれないし」
珠美「それでも響さんは出ているところが出ていて…羨ましくもあります」
「そうか?変だって言われたりもするぞ」
珠美「珠美はまだこれから成長することはあるのでしょうか?」
「大丈夫さー。女の子は20歳過ぎまで成長し続けるって聞いたことあるぞ」
珠美「それならば、まだ諦めてはいけないですね」
「あと近くに目標があるといいらしいって聞いたさ」
珠美「目標とは…」
「ダイエットとかで、目標に近付くサイズの物を飾っとくとか置いとくといいとかいうやつさー」
珠美「なるほど…確かに上達も近くに目標の物があると良いですね」
「だからまずはワンサイズ大きいのとかを考えてみるといいかもな…って自分もやってみるかなー」
珠美「でも今はできませんし、今回の仕事を終えてからになりますか」
「そうさ。まずはこの仕事ちゃんとやらないとな、頑張るさー珠美」
珠美「はい、響さん」
そんな二人の目はどことなく未来へと向いた目をしていたという…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あとがき
飛神宮子です。
2013年誕生日SSシリーズ、響は佐賀です。
一緒に行くことになったアイドルは、佐賀出身で脇山珠美ちゃんです。
ヒントですが(1)はそのまま鹿島市、(2)は陶器(唐津・伊万里・有田と有名どころが多いので)、(3)は文中のままです。
HAPPY BIRTHDAY!! Hibiki GANAHA.
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
2013・10・10THU
飛神宮子
短編小説に戻る