伊織 | 「どうして私がアレになるのよ!」 |
事務所へと誰かの怒声が響き渡る。 |
P | 「…バランスからしたら亜美と真美で両側を固めるのが当たり前だろ?」 |
伊織 | 「だからってあの恰好を私にさせるわけ?」 |
P | 「だったら他に案を出してくれよ伊織」 |
伊織 | 「う…そんなのアンタが考えなさいよ」 |
亜美 | 「いおりん、もう諦めなきゃダメだよー」 |
真美 | 「そうだよ。もう決まっちゃったんでしょ?兄ちゃん」 |
P | 「4月の春香と5月の3人がいるから決まったような仕事だしなあ」 |
伊織 | 「そりゃアンタ達はいいわよ。鎧兜に学者姿なんだから。春香だってちょっと昔の格好なだけでしょ?私なんかアレじゃない」 |
P | 「まあ仕方ないだろ。政府がこっちをみどりの日にしたんだからさ」 |
伊織 | 「…もう、分かったわよ」 |
P | 「しっかしゴールデンウィークの旅行キャンペーンに選ばれるとはなあ…」 |
亜美 | 「だよねー。でも亜美達はそんなの関係無く仕事だよねー」 |
P | 「そうだな。伊織は29日と4日にテレビ収録、真美は1日2日とグラビアのサイン会、亜美は3日にテレビと5日にラジオ生出演か」 |
伊織 | 「ま、アイドルとしては仕方ないわよ」 |
亜美 | 「そだねーいおりん」 |
真美 | 「あ、そだ兄ちゃん。真美はどっち?」 |
P | 「どっちがいいんだ?鎧兜と学者だけど」 |
真美 | 「どっちでもいいんっしょ?」 |
P | 「ああ。二人でどっちにするか決めてくれないか?」 |
亜美 | 「亜美は鎧兜がいいなー」 |
真美 | 「そんなら真美は学者姿でいいよ」 |
P | 「何だ、やけにあっさり決まったな」 |
真美 | 「だってこんなんでケンカしてもしょうがないじゃん」 |
伊織 | 「はあ…アンタらはいいわよね。まだ衣装が選べるなんて」 |
亜美 | 「気にしたら負けだと思うよー」 |
伊織 | 「ハイハイ、それで撮影来週よね?」 |
P | 「だな。まあ2日前までにアイディアが出なかったらそのままな」 |
伊織 | 「分かったわよ」 |
……… |
結局、撮影日までアイディアが出ることも無く… |
伊織 | 「プロデューサー、私の衣装は?」 |
P | 「伊織はスタジオで着てもらうことになってるから。暑くなるからそこにあるTシャツを着てくれ」 |
伊織 | 「そうなの?…って、アンタそっち向いてなさいよ」 |
P | 「あ、ご、ゴメンな」 |
伊織から目を逸らすプロデューサー。 |
伊織 | 「そういえば春香はどうしたのよ?一緒じゃなくていいの?」 |
P | 「ああ。春香は週が違うから別撮りで明日になった」 |
伊織 | 「今日って千早と生放送だったわね。あっちは律子が行ってるの?」 |
P | 「いいや、社長だったな。律子はやよいとラジオの生放送に行ったはずだから」 |
亜美 | 「なになに?何話してんのー?兄ちゃん」 |
真美 | 「兄ちゃん、真美達のことも確認してよー」 |
プロデューサーの側へと二人がやってきた。 |
P | 「お、二人とも着替えたな。亜美、重たくないか?」 |
亜美 | 「そんなに重たくないよ。でもちょっち動きにくいね」 |
P | 「まあそうだろうな。でも胸のワンポイントが可愛いぞ」 |
亜美 | 「ありがとー兄ちゃん」 |
真美 | 「兄ちゃん兄ちゃん、真美はー?」 |
P | 「真美にそういうロングコートって、何か新鮮だな」 |
真美 | 「そっかなー?」 |
P | 「コートの中はスーツにハイソックス…俺の好みの格好だ真美」 |
真美 | 「兄ちゃん、こんな感じが好みなんだ。エッチ…」 |
亜美 | 「やーい兄ちゃん、むっつりスケベー!」 |
P | 「でも二人ともいい感じだぞ」 |
真美 | 「ありがと…兄ちゃん」 |
伊織 | 「プロデューサー、下は持ってきたこの短パン?」 |
P | 「そうだ伊織。伊織のはそれで良かったよな?」 |
伊織 | 「ええ。あ、まだそっち向いておくのよ。着替えの途中なんだから」 |
P | 「分かってるって、できたら呼んでくれ」 |
亜美 | 「うわー、いおりん凄い下着だー」 |
真美 | 「本当だねー、でも可愛い感じもするー」 |
伊織 | 「ちょ、ちょっとアンタ達!恥ずかしいじゃないもう…」 |
亜美 | 「でも亜美達には到底選べない下着だなあ」 |
真美 | 「そだねー、いおりんに比べたらまだまだ真美達は子供って感じするよ」 |
伊織 | 「アンタ達もアイドルなんだからもう少し大人っぽくした方がいいんじゃない?」 |
亜美 | 「んー、真美どーする?」 |
真美 | 「お小遣いで何とかなるかなー?」 |
P | 「伊織、まだかー?」 |
伊織 | 「もういいわよ。あとは何をすればいいのかしら?」 |
P | 「あとは向こうに行ってメイクさんに髪をまとめてもらえば終わりだ」 |
伊織 | 「分かったわ、それでスタジオ入りはあとどれくらい?」 |
P | 「もうすぐだな。3人とも行くぞ」 |
……… |
そしてここは撮影スタジオ… |
伊織 | 「これに…入るのね」 |
樹の着ぐるみを見て少し躊躇している伊織。 |
P | 「そうだな。顔を出すところがあるから、そこから顔を出してくれ」 |
伊織 | 「本当に…ファンが見たら何言われるかしらねえ」 |
P | 「ま、これも仕事だと思って…な」 |
伊織 | 「分かってるわよ。本当に後で憶えてなさい」 |
何だかんだ言って伊織は着ぐるみへと入っていった。 |
伊織 | 「プロデューサー、本当にこれ暑いのね」 |
P | 「服をそれにしておいて良かっただろ?伊織」 |
伊織 | 「そうね。少し入っていただけで汗が出てくるわ」 |
P | 「それなら少し痩せるかもな」 |
伊織 | 「バ、バカァっ!太ってなんかないわよ!これでもずっと現状維持してるんだから」 |
真美 | 「兄ちゃん、そろそろ撮影だってー」 |
亜美 | 「兄ちゃん、これで刺しちゃうよー」 |
と、そこにメイクを終えた二人もやってきた。 |
P | 「痛い痛い痛い!亜美、人にそういうものを向けるなって。幾ら斬れないとは言っても尖ってるんだから」 |
亜美 | 「めんごめんご。それでどんな写真にするの?」 |
P | 「それはカメラマンと監督さんの指示に従ってくれないか?俺の独断で決められないからさ」 |
真美 | 「分かったー。でもとりあえず亜美はいおりんのそっち側だね」 |
亜美 | 「どーして?」 |
真美 | 「だって日付順っしょ?真美が3日で、いおりんが4日で、亜美が5日だもん」 |
伊織 | 「二人ともとりあえず動きなさいよ。こっちは暑いんだから」 |
三人 | 『はーい』 |
P | 「カメラさん、監督さんよろしくお願いします」 |
そして刷られたキャンペーンポスターは、3人の写真に春香も加わって面白おかしな絵柄になっていた。 |