4月のある日… |
春香 | 「んーっ!着いた着いたー!」 |
智香 | 「春香さんお疲れさまですっ!」 |
空港から出てきた春香とポニーテールの女の子。 |
春香 | 「何だか日本の端まで来たって感じだなあ」 |
智香 | 「まだまだ先がありますよ。アタシの事務所にも沖縄の子がいますから」 |
春香 | 「沖縄だったら、私の事務所にもいるんだけどね。でもここは橋とか繋がってる一番端っこですから」 |
智香 | 「そうですね。私もアイドルになってからはこうして地元に戻ることも少ないです」 |
春香 | 「今日は案内よろしくお願いします、智香さん」 |
智香 | 「はいっ!春香さん」 |
春香 | 「まずは何をするんですか?」 |
智香 | 「まずは…って何をするんでしょう?」 |
春香 | 「へ?智香さん、何か打ち合わせとかは…」 |
智香 | 「スタッフからは、アタシの家に招待して一泊することしか聞いてないんです」 |
春香 | 「そこまで…は?」 |
智香 | 「何も、特に何も言われてないかなって」 |
春香 | 「うーん…じゃあどうします?」 |
智香 | 「この分だとスタッフの人もアタシの家以外にアポとか取ってない…ですよね?」 |
カメラが上下に動く。 |
智香 | 「それじゃあ…アタシがこっちにいた頃の行きつけのお店に行きましょ」 |
春香 | 「本当にこの番組、フリーダムだなあ…」 |
……… |
ここはとある商店。 |
智香 | 「ここですここです。おばちゃん元気かなー?」 |
ガラガラガラ |
ガラス戸を開けて中に入る智香。 |
智香 | 「あー、久しぶりだぁこの空気!」 |
店のおばちゃん | 「あら?あらぁ!智香ちゃん、ないごてもう」 |
智香 | 「おばちゃん久しぶりー!何ヶ月ぶりだっけ?」 |
店のおばちゃん | 「アンタがお盆の里帰りしてからやったから8ヶ月ぶりやいな」 |
智香 | 「もうそんな経ったっけかー。そういえば正月はここ寄らなかったもんね」 |
店のおばちゃん | 「でもまーたみんごみんごなったねー」 |
智香 | 「そんなことないよー、もうおばちゃん口が上手いんだからー」 |
店のおばちゃん | 「そんで今日はないごて来った?」 |
智香 | 「今日は旅番組でアタシの地元に来ることになってね。それで何だかここに来たくなったんだ」 |
店のおばちゃん | 「あらぁー、先にそれを言うてばさあ」 |
智香 | 「あーおばちゃん。スコールある?」 |
店のおばちゃん | 「スコール?そこに冷えてるのがへってるよ」 |
智香 | 「じゃあこれ2本ね。はい…ってやっぱり値上がりしてるんだね」 |
店のおばちゃん | 「やっぱり前の値段じゃ無理だわね」 |
智香 | 「分かってるよ、はいおばちゃん」 |
店のおばちゃん | 「どうもねー」 |
智香 | 「はい、春香さん」 |
春香 | 「あ、ありがとう智香さん」 |
智香 | 「じゃあおばちゃん、元気でねー」 |
店のおばちゃん | 「はいー、また来てなー」 |
ガラガラガラ |
二人は店の外へと出た。 |
智香 | 「春香さんはこれ飲んだことあります?」 |
春香 | 「うーん、向こうの方でも売ってる?」 |
智香 | 「最近は向こうでも売ってますけど、こっちと味が少し違う感じがします」 |
春香 | 「そっかあ」 |
智香 | 「じゃあ飲みましょ」 |
プシュ プシュ |
春香 | 「やっぱりこれを学校帰りとかに飲んでいたの?」 |
智香 | 「はい!チアの練習とかで疲れたときは………あれ?」 |
春香 | 「どうしたの?智香さん」 |
智香 | 「ちょっとこれ持っててください…○○せんせー!!」 |
智香は飲み物を春香に渡して、とある人のもとへと走り出した。 |
前の学校の先生 | 「お、おお!若林か!」 |
智香 | 「先生、元気でした?」 |
どうやら先生だった人のようだ。 |
前の学校の先生 | 「元気しとるよー。若林もよくテレビとかで見るようになったなー」 |
智香 | 「えへへ、そっかなあ。でもどうしたんですか?学校はまだ始まってないですよね?」 |
前の学校の先生 | 「先生には学校が始まる前に準備とかもあるんだよ」 |
智香 | 「あー、そうですよね………」 |
……… |
そしてその夜… |
春香 | 「今日は智香さんの色んな一面が見えちゃったかなあ」 |
智香 | 「懐かしい先生とかにも会えましたし、今日は良かったですっ」 |
春香 | 「あの後も大変だったね」 |
智香 | 「久しぶりにアタシの応援が見たいとか…あれ、本当に仕込みじゃなかったのかな?」 |
春香 | 「どうかなあ?」 |
智香 | 「でもすみません、春香さんまで巻き込んじゃって」 |
春香 | 「それくらい気にしなくたっていいってば。私だってほら、ダンスは不得意じゃないし」 |
智香 | 「チアのダンスって初めて…には見えなかったですよ?」 |
春香 | 「だけどやっぱり智香さんの動きには適わなかったよ」 |
智香 | 「最後のあれは大丈夫でした?」 |
春香 | 「まだちょっと痛むかなぁ…あたた…」 |
智香 | 「アタシの受け止め方も悪かったんで…本当にすみませんでした…」 |
春香 | 「智香さんが謝らなくてもいいって、私がやるって言っちゃったんだし」 |
智香 | 「でも…」 |
春香 | 「私も智香さんを巻き込んじゃったんだから、謝らなきゃダメなのはむしろ私の方だよ。ゴメンね」 |
智香 | 「そんな…」 |
春香 | 「だからもういいの、この話は終わりにしよ」 |
智香 | 「そうですね。それにしても段々観る人も増えてきちゃって…」 |
春香 | 「春だしあの時期だとやっぱり部活やっている人は来てたんだろうね」 |
智香 | 「近所の人まで来ちゃって、最後はちょっとしたライブみたいになっちゃって」 |
春香 | 「歌うのも好きだから、私は良かったんだけど…智香さんは?」 |
智香 | 「アタシはどちらかといえばまだダンスの方が得意でしたから…」 |
春香 | 「それでもちゃんと歌えてたみたいだったけど…どうして?」 |
智香 | 「アップテンポな曲はやっぱり好きですから!」 |
春香 | 「じゃあ私の曲も聞いてくれてたってこと?」 |
智香 | 「はい!春香さんの曲は聞いていると元気になれますから」 |
春香 | 「う…そう言われると照れちゃう…」 |
智香 | 「だからたまに口ずさむこともあったりしてたんです」 |
春香 | 「そっか…ありがと、智香さん…タタタ」 |
智香 | 「大丈夫ですか?」 |
春香 | 「早く寝て治した方がいいかも…それじゃあ寝よっか」 |
智香 | 「そうですね。おやすみなさい、春香さん」 |
春香 | 「おやすみなさい、智香さん」 |
その部屋の布団にはいつもとは違う、もう一つの『香り』がハーモニーを奏でていた… |
HAPPY BIRTHDAY!! Haruka AMAMI.